Lentも第6週を迎へてゐるが、本日紹介するのはAdventに歌はれるホ短調の聖歌。ヨハン・マッテゾンはこの調に就いて沈思的、悲しみ、痛みと述べてゐるが、この聖歌には相応しい調である。 この聖歌に歌はれてゐるのは、人類の大いなる罪への悔恨と、キリストが到来し人類を罪より解き放ち給うこと、即ち救ひへの希望とである。罪増す所恩寵もいや増せりと述べたのは聖パウロであつた。この聖歌を佳く歌ふ人は、人類にとつての上記二つの重大事を、正しく認識してゐる。私がこの聖歌を好む理由も、この歌が人類の最たる理智と賢明なる判断力とを示すものだからである。 それに詞の文語調も比類なく美くしい。斯様な美を惜し気もなく拋…