はじめに この論考の課題は、日本仏教についてひとつの見方を提供することで、仏教についての理解を深めるとともに、巷に散見される仏教用語や仏教の知識について補足する点にある(有態に言えば、私の手控えである)。とはいえ、仏教教義の正しい解釈ということに主眼があるのではなく[1]、あくまでも「社会史」「社会思想史」として(宗教)社会学的な観点から、日本のなかで仏教がどのような社会背景をもとに思想的に分化・発展してきたのかということに主眼が置かれている。それゆえ、本章における記述は、特定の宗派に対して予断をもって書かれたものではなく、さまざまな文献から得られた知識をひとつのモデルとしてまとめ(理念型)、…