私は今、顔を洗ってからパソコンに向かっている。泣きすぎたからだ。辻村さんの物語は、不思議だ。ものすごく感動するシーンがずっと続くわけではないのに、全編通してうっすら涙目になってしまう。それは、「この子のこの気持ち、経験がある」と思う場面が物語中に散りばめられているからだ。それは子どもも大人も関係なく、触れたり奥まで入り込んだりすると壊れてしまいそうな柔らかい部分を刺激する。今回の作品もまさしくそうだった。 この夏の星を見る (角川文庫) (上)(下)巻セット KADOKAWA Amazon 『この夏の星を見る』あらすじ/辻村深月が描くコロナ禍の中高生 コロナ禍による休校や緊急事態宣言、これまで…