《私は静かな部屋でこれを読んでいるあなたにあげる。私は電車でこれを読んでいるあなたにあげる。私は川のほとりでこれを読んでいるあなたにあげる。この海をひとりで抱えることはもうできない。だからあなたに、海をあげる。》 上間陽子著『海をあげる』(筑摩書房)は、沖縄での日々の暮らしをつづったノンフィクションだ。これはその終わりの文章。本のあとがきで上間は「この本を読んでくださる方に、私は私の絶望を託しました。だからあとに残ったのはただの海、どこまでも広がる青い海です」と記している。上間の私たち本土に住む人々への問いかけに、どう答えればいいのだろうか。 沖縄県で生まれた上間は現在、琉球大学教育学研究科の…