1 性善説と性悪説 この言葉についてみだりに論じようとする人は、概ね知識が浅いというのが、私の経験上の印象だ。 性善説とは、「人間の本性は善である。」という考え方で、孔子の儒教路線を汲む、孟子が唱えた説。孟子以後は儒教の中心的思想となった。 これに対し、韓非子の師匠である思想家荀子が唱えた「人の性は悪なり、その善なるものは偽なり」という主張。なお、ここで言う悪とは、「弱い存在」という程度の意味であり、「悪=罪」という意味では無い。 さらに重要な事は、韓非子は師匠のこの思想をさらに発展させ、「善」などというものは、時代や環境によって変わるもので、その時代・環境に合った規則、すなわち「法」を定める…