これまで平面的にしか見えていなかったものに奥行きが感じられるようになった時、感動する。今年初めてそういう小説を読んだ。 線は、僕を描く (講談社文庫) 作者:砥上裕將 講談社 Amazon 孤独にとらわれている青年が、ある一人の水墨画家に出会い、水墨画を通して人々や世界、美に出会う物語。 水墨画はやり直しがきかない一本勝負。二度と元に戻らない唯一無二の花の一瞬をとらえ、紙の上に命を吹き込む。主人公の鋭く繊細な観察眼を通して、登場人物たちの性格、身の回りにあふれる美、水墨画の魅力が伝わってくる。言葉巧みな表現で、まるで今まさに物語の中の水墨画の前にいるような感覚を覚える。 それまで水墨画を見ても…