序文・本多正純の悲劇 堀口尚次 宇都宮城釣天井事件は、江戸時代の元和8年、下野国宇都宮藩主で江戸幕府年寄の本多正純が、宇都宮城に釣天井を仕掛けて第2代将軍徳川秀忠の暗殺を謀ったなどの嫌疑をかけられ、本多家は改易、正純は流罪となった事件である。 元和2年、家康と本多正信が相次いで没すると、正純は2万石を加増されて下野小山藩5万3000石となり、秀忠付の年寄〈後の老中〉にまで列せられた。しかし、正純は先代からの宿老であることをたのみに権勢を誇り、やがて秀忠や秀忠側近から怨まれるようになる。元和5年10月、福島正紀の改易後、正純は亡き家康の遺命であるとして、奥平忠昌を下野宇都宮藩10万石から下総古河…