小僧が出て行ってから五分も経つと、ノアの洪水以前の木片のようなものを引張って出て来た。最近どこかから発掘され、しかも発掘の際、不必要に損傷を受けたような傷だらけのものである。(ジェローム・K・ジェローム『ボートの3人男』、丸谷才一訳) *** 丸谷才一の『文章読本』を読んだのはいつのことだったろう。たしか学生の頃だ。「ちょっと気取って書け」という一節があったのを今でも覚えている。 文章読本といえば谷崎潤一郎だが、こちらは覚えているのは「兵語体」のみである。「~であります」とかそういうの。合っているか自信はない。 谷崎といえばビニール紐で括られた『源氏物語』がたまたま手元にある。祖母宅で長年眠っ…