天明4年(1784年)3月24日、江戸表御殿中長廊下にて佐野善左衛門が田沼山城守を討つ。赤穂以来の大騒動となる。委細は誰もが知るところではあるが、あらましをありのままを次に写しとり、記し置く。殿中においての刃傷のこと。泰山重からず(自分のことを理解する人に出会うことが大切)、君命おもし(主君の命令は重い)、一髪軽からず(髪の毛1本にも重い意味や価値がある)、一命かろし(命を捨てることを少しもいとわない)とは、大石内蔵助の遺言は真実であろうか。これに類するのは、佐野善左衛門が自分の命を投げ打ち、忠誠心から目的を成し遂げ、全ての人の憂いを拭い去り、まず乱れた世を直そうと、去年からあれこれ悩み、妻子…