『日曜日たち』 夫や恋人に殴られた女性が、次第に「自分が悪いから殴られるのだ」と思い込むようになるという説は往々にして的を射ている。それは殴られているときの自分しか、見えなくなってしまうからだと乃里子は思う。 吉田修一『日曜日たち』 私たちは多くの場合、懲罰思想に毒されていて、自分が気に食わない人間を悪とみなし、悪は苦しめてもいいと当然のように思い込んでいる。 相手の一部分を見て、それが気に食わなかったら、相手全体を悪の塊のように見てしまう。そして悪は殴って傷つけて苦しめてもいいと思っている。 だからこそ、自分が殴られた時に「殴られたのは自分が悪いからだ」と思い込んでしまう。 無論オムロン、殴…