小野小町・衣通姫・常盤御前・静御前:古代日本の女性像とその連環の探求 多紀理 序論 日本の歴史において、女性の麗しさは、和歌や物語、軍記物にみやびやかに描かれ、世々の語りにそっと響き合う。小野小町、衣通姫、常盤御前、静御前は、いずれもその名が美の象徴として後世に刻まれる女性なり。彼女たちは、古代から中世にかけて異なる時代に生を享けたが、麗しさ、恋、かなしみという糸によってゆるやかに結ばれる。本稿は、これら四人の女性の生涯とその連環を、史料と文学的叙述を通じて探求する。とくに、彼女たちの麗しさが、いかに時代背景や文化的価値観に根ざし、互いにやわらかく響き合うかを明らかにする。 史料の制約により、…