2009-11-19 究極の一人称物語体験「Call of Duty モダンウォーフェア2」

おひさしぶりです。
「コール・オブ・デューティ モダン・ウォーフェア2」(COD MW2)というゲームをクリアしました。
Xbox360版。
いわゆるFPSという、欧米で大人気の、兵隊さんになって鉄砲で敵をころしまくるゲームです。
実はこのゲーム、世界一売れたゲームソフトっていうか、映画を超える記録を作ったりして、とにかくすごいらしいです。
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/it/2665691/4931843
【11月19日 AFP】10日に海外で発売されたビデオゲーム「コールオブデューティ モダン・ウォーフェア2(Call of Duty: Modern Warfare 2、MW2)」が発売後5日で5億5000万ドル(約490億円)を売り上げ、エンターテインメント商品の売上記録を塗り替えた。「MW2」は、『ハリー・ポッターと謎のプリンス(Harry Potter and The Half-Blood Prince)』が記録した公開後5日間の映画興行収入の最高記録3億9400万ドル(約350億円)を超えたほか、ビデオゲームの発売後5日間の記録としては「グランドセフトオート4(Grand Theft Auto IV)」の5億ドル(約445億円)という記録も破った。
先週アクティビジョン・ブリザードは、初日に米国と英国だけで470万本を販売し、金額にしてエンターテインメント関連では史上最高となる3億1000万ドル(約280億円)を売り上げたと発表されていた。
でもまあ、日本じゃたいして売れないでしょう。12月10日発売ですが。
ななんと、私が住んでるセブ島でも(日本以外の)発売日の2日後ぐらいの11月12日には店頭に並んだんですね。
で、さっそく購入して、毎日1時間ぐらいずつやって1人用モードをクリア。
(オンライン対戦もすごく面白いらしいんですけど、ハマると時間なくなるのであえて一切やりません)
さて、「オレとコール・オブ・デューティ」という話をしますよ。
もともとは、私がXbox360を「エースコンバット6」をやるために買ったことから始まります。
他にもリアルな映像が楽しめるゲームをやりたかったので、何か探しました。
SFものとかモンスターと戦うのはあまり興味がないので、XBOXの人気シリーズ「HALO」「ギアーズ・オブ・ウォー」「ロストプラネット」とかは全部パス。
本当は「メタルギアソリッド4」がやりたかったんですけど、それはPS3だけだったので、その代用品として目をつけたのが、同じく戦争物だった前作「コール・オブ・デューティ4 モダン・ウォーフェア」だったのです。
ちょうど、ある方がmixiで絶賛していたんですよ。
で、購入。
FPSはPS2で「メダル・オブ・オナー」シリーズを少しだけやっていたぐらいで、基本的に苦手ですし、マウスでやるゲームだと思っていたので、クリアできるか心配だったんですが、やってみて、
そのストーリーテリング手法に衝撃を受けました。
FPSなので、てっきり敵を殺しまくってクリアするだけのゲームかと思ってたんですよ。
と、思ったら、素晴らしい演出力で、まさに「プレイする映画」という感じでした。
とにかく展開がドラマチック。
もう1面からすごいんですよ。
特殊部隊が、ヘリで敵の船に侵入。
敵の船を制圧したと思ったら、爆発して、早く脱出しないと船が沈没する! っていう映画でおなじみの展開。
走れ走れ! 脱出用ヘリにジャンプ! と、思ったらちょっと距離が足りなくて、落ちるー! と思ったら、
頼りになる上官が手を伸してくれて、間一髪で助かった!
(これ、デモムービーじゃなくて、全部プレイヤーが操作してます。でも画質悪いですね、この動画。白飛びしすぎ)
でもって、このゲームは、FPS(ファースト・パーソン・シューター=一人称視点シューティングゲーム)であることにすごくこだわっている。
視点が変わったり、カット割りがなされたりとかは(面またぎの演出以外)しない。
上述の1面は、実はアバンタイトルというやつで、その後で映画風のスタッフクレジットのオープニングシーンなんです。
それが、中東某国の大統領がテロリストにつかまって、中東の町中を車でひきまわされるというシーン。
ちょうどタイミング良く、走っていくテロリスト兵士やら、銃殺刑やら、強盗やら、走っていく軍用車両やら、飛んでいくヘリやらが見えるんですね。(視線操作も可能)
めっちゃリアルなんだけど、あくまでプレイヤーの一人称視点で目撃するようになってる。
そして、そのシークエンスの終わりで、大統領(=プレイヤー)はテロリストのリーダーに銃を突きつけられて、処刑されてしまうのです。
ワンカット長回しの「ER」を最初に見たとき以来の感動ですよ。
うっかり「クローバーフィールド」とか作っちゃった人は、このゲーム見て反省してほしいところですね。
(Youtubeだと小さくて街の様子はよくわかりませんなー。ハイビジョンテレビだとよく見えますよ)
で、そのテロリストリーダーをやっつけるのが目的になるのです。
前作なので、さらにネタバレいっちゃいますよ。
途中、回想シーンになってゴーストタウンになったチェルノブイリで戦ったりとか、湾岸戦争で有名になった、C-130という飛行機から地上の歩兵を無慈悲に殺しまくるシーンがあったり、まあいろいろ恐ろしいシーンがあるのですが。
やっぱり白眉は核爆発シーンなんですね。
これにいたる演出がすごい。
まずはヘリの機関砲手になって、ヘリの上から中東の街にいる敵をダダダダっとやっつけます。
そのうち、味方のヘリが打ち落とされます。そう、映画「ブラックホークダウン」状態!
で、その墜落したヘリに乗っていたおねーさん(女性兵士)を助けに行くんですね。
敵の銃撃をくぐり抜け、やっと助けてヘリに乗せて、ヘリが離陸。
助かった! と思ったら大爆発。
敵は核を使ったのです。
で、この演出はど派手。
でも本当にすごいと思ったのは、次の面「アフターマス」。
核爆発によって墜落したヘリの中で目が覚めた主人公は、必死の思いでヘリから這い出ます。(プレイヤーの操作)
そして、核爆発の直後の惨状を目の当たりにするのです。そう、一人称視点で。
そのままその主人公は息絶えます。
「アフターマス」は、ただ「核爆発後の風景を見て、息絶える」だけの「面」なのです!(キリッ)
そして面またぎ演出になって、「(主人公名) KIA」と出て、次の面へ。
KIAは、Killed in actionの略で、「戦死」という意味。
次の面では、もう一人の主人公が活躍します。
さっきの大統領に続き、またもやプレイヤーは一人称による死を体験させられるんですね。
演出によって。
「プレイヤーが死を一人称で体験するだけの面」ってのが2つもあるわけです。
これはすごい。
さて、その後に出たシリーズ作の「コール・オブ・デューティ ワールド・アット・ウォー」もやりました。
日本軍を殺しまくったりしますし、沖縄戦になって、米軍編エンディングは首里城を爆撃によって破壊! っていうシナリオのためでしょう、日本では発売されませんでした。
こちらも、CODシリーズの演出は健在で、大いに楽しめました。
ソ連軍編が燃えます。最後の演出が、ナチスの旗をおろして、ソ連の旗を上げろ、ってとこなんですが、ソ連の旗を上げようとすると、物陰に隠れていたドイツ兵が襲ってきて、殺される! っと思ったそのとき・・・・
みたいな。
英語ですが、Xbox360の輸入盤は日本の本体でできるようなので、ぜひ。
で、前置きが長くなりましたが、そんなシリーズの最新作、
「コール・オブ・デューティ モダンウォーフェア2」ですよ。
これも上述のように、一人称であることを最優先にして、プレイヤーに映画のような体験をさせ、目撃させるようにしています。
日本未発売なのでネタバレは避けますが、やっぱり前作のように、一人称であるからこそ、の演出があって心が震えました。
(まあ前作の方がインパクトありましたけどねー)
どうてことないネタバレをすると、ミサイル(ICBM?)が大気圏外(?)を飛ぶシーンがあるんですね。
そのとき、プレイヤーは宇宙飛行士としてそれを目撃します。(宇宙飛行士の出番はそこだけ。別に宇宙で戦いになるとかじゃないです)
あー、やっぱり一人称視点にこだわってるんだなーと感動。
わかってるぜ、こいつら。(←作ってる人)
あと、細かいことを言うと、前作のC-130とか今作の無人機プレデターとかの機械の目を通した無慈悲な一人称視点というのも、よい対比になっています。
前作より今回の方が、アクション映画っぽいかな。カーチェイス的なシーンが増えてますし。
今回、テロリストがロシアの空港で民間人を殺しまくるシーンが物議をかもしたりしています。
http://www.kotaku.jp/2009/11/mw2_foxnews.html
これ、主人公はCIAの工作員で、テロリスト集団に潜入してたら、空港テロに巻き込まれた、みたいな設定。
でも、主人公も民間人を殺しまくれます。
これは前作でいう核爆発のような、話題作りを狙ったんでしょうねー。
でもまあ、やっぱり一人称視点ということにこだわって敵のテロを描こうとすると、こうするしか仕方がないんですよね。
(まあ、テロ鎮圧部隊がプレイヤーでも成立するとは思いますけど)
他にも、米国人なら大ショックなシーンもあります。
アメリカに住んでたことあったら、もうちょっとショッキングさが増してただろうなあ。
私はアメリカ本土行ったことないので。
しかし前作の核爆発、今作の××での戦いと、出し惜しみしなさすぎ。
「3」はどうするんだ? さすがにネタが尽きるんでは?
ところで、このシリーズのもうひとついいところは、仲間の兵士達がひじょうにプロっぽい動きをするところです。
難易度ベリーイージーにすると、私のような下手ゲーマーでも、ストレスなく進めます。
味方が敵をあらかたかたづけてくれたり、味方の後をついていけばいいので、迷いません。
とにかく私は、「ストレスなく映画の主人公になったような体験をしたいんだー」「やりなおしとか、やりこみをする時間はもったいないんだー」という感じなので、ひじょうにありがたい。
ま、とにかく物語体験メディアの現在、という意味ではもっともよくできたもののひとつであることは間違いないと思います。
お金かけてこういう超一級のゲームが作れる欧米って羨ましいですね。
前作が安くなったので、まずは前作からやってほしいです。(話も続いていますし)
PS3かXbox360を今後手に入れることがありましたら、試しにやってみてください。
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ちなみに、ゲームの「007/慰めの報酬」は、「COD4」のエンジンを利用しているとのことで、操作が同じで、COD4の続編シナリオな感覚で遊べます。
(左スティックを押し込んでダッシュとか気持ちいい)
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でも、「物陰に隠れる」という動作が追加されていて、そのときは三人称視点になって、映画そっくりのダニエル・クレイグが見れるようになっています。
この辺の判断、上手いなあ。
映画体験ゲームとして海外で大評判の「アンチャーテッド2」もこの後やります。楽しみー。
「メタルギアソリッド4」(いまさらですが)とか、ま、その辺の話はまた今度。
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2008-08-04 「バクマン。」「サルまん」「デスノート」「野望の王国」の奇妙な縁

『DEATH NOTE』コンビによる新連載がいよいよスタート! テーマはズバリ“漫画”
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080802-00000005-oric-ent
アニメ、実写版映画も大ヒットを記録した人気マンガ『DEATH NOTE』を手掛けた原作・大場つぐみ、作画・小畑健の最強コンビによる新作『バクマン。』が11日(月)発売の『週刊少年ジャンプ』(集英社)から連載されることが分かった。『DEATH NOTE』では、“善悪二元論”や“断罪”をテーマにした大場と小畑だが、新作では、ズバリ“漫画”をテーマに空前絶後の物語を展開していく。
(中略)
新作『バクマン。』では、“漫画”をテーマに二人の少年を中心に描かれるようで、予告には「さらけだせ全てを!! 暴ききれ!!“漫画”の可能性を!!」とも書かれており、デジタルメディアの隆盛と共に、業界再編の傾向のある漫画界を震撼させる作品となるに違いない。
た、たけくまさーん!!
と、朝から叫んでしまいましたよ。
惜しくも自主的な打ち切りとなった竹熊健太郎さんの「サルまん2.0」では、「デスノート」のパロディ「デスパッチン」をやっていたんですよね。(セブにいるので読めませんでしたが)
「サルまん」(初代の方)は言うまでもなく、マンガ家の二人がマンガのお約束を披露しながらヒット漫画を生み出すという野望を実現するべく奮闘する、ギャグ+メディアとしてのマンガ考察マンガ。
マンガの表現上のカラクリがいろいろわかる、全マンガ読み必読の作品です。
サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版 上巻 (BIG SPIRITS COMICS)
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「デスノート」自体、なんとなく「サルまん」が基本設定のパロディの元とした(上の書影のタイトルの後ろに入っている主人公の顔が劇画調なのはそのため)「野望の王国」の雰囲気が漂っていたし、奇妙な縁を感じます。
流れを図解すると、こんな感じでしょうか。
↓ ↓ バクマン。
「野望の王国」は、青年2人が世界支配のために冷酷に陰謀や暗殺などを駆使ししてのし上がっていくというような話の、大昔の劇画です。←ものすごく大ざっぱな説明。
ちなみに原作は「美味しんぼ」の雁屋哲です。山岡士郎も昔はワルだったのです。(違う)
デスノートという魔法のアイテムの有無や、野心家の人数が2人・1人という差はありますが、「野望の王国」と「デスノート」の構造は非常に似通っているのです。
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いま検索したら、過去にいずみのさんが「デスノート」と「野望の王国」の類似点を指摘していました。
というわけで、今後は「小畑健の絵柄でサルまんを描くのがウケる!」というのと「大場つぐみは漫画原作者界の重鎮になるであろう」ということが予想されそうです(されません)。
と、2年前に「バクマン。」の登場を予言(のように誤読できる)。慧眼恐るべし。
でもこの新連載、実際には私が勝手に期待している、少年二人が夜神月君のように冷酷にライバルを抹殺し、マンガ業界を支配していくという、「サルまんリアルバージョン」とはまったく違う内容かもしれないですが。
というか、タイトルからして、そんな内容じゃなさそう。
2008-04-28 「河童のクゥと夏休み」原恵一監督インタビュー

「河童のクゥと夏休み」、いよいよDVDが発売されるようですね。![河童のクゥと夏休み 【通常版】 [DVD] 河童のクゥと夏休み 【通常版】 [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/41oUHd9SOpL._SL160_.jpg)
2007年5月18日、映画公開前に原恵一監督インタビューさせていただいた原稿を発掘して掲載します。
新聞や雑誌などの媒体にインタビューの場をアレンジしてもらって取材に行くことが多かったのですが、このときはたまたまこの映画の宣伝担当の方が以前お世話になった方で、直接私にオファーがあり、インタビューの後、媒体に売り込むという形になりました。(抄録が毎日新聞社のサイトに掲載されました)
監督も時間をオーバーしてまでお話をしてくださり、興味深い話が多く、埋もれさせるのはひじょうにもったいないのでほぼノーカットで掲載します(もちろん編集はしてありますが)。
※ネタバレを割と含みます。
――「クゥ」は、監督が長年温められた企画とのことですが。
20年ぐらい前に、「エスパー魔美」のチーフディレクター(監督)をしていたとき、将来どういうことをやってけばいいだろうと考えていて。
オリジナルのアニメ作品が減っていて、マンガの原作ばかりになっていたんです。
人気マンガをアニメ産業がアニメ化するだけという風潮はどうかと思って、アニメ産業は何かをしないといけないと思ったんです。
子供向けのアニメを企画を探そうと、毎週のように自腹で何冊か児童文学を買っていました。
その中で、一番、アニメーションにする可能性を感じたのが、「河童のクゥと夏休み」の原作「かっぱ大さわぎ」「かっぱびっくり旅」(※2作品をまとめたものが「河童のクゥと夏休み」と改題して復刊されている)なんです。
- 作者: 木暮正夫,こぐれけんじろう
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江戸時代に生きていた子どもの河童がよみがえり、現代の家庭で生活する、という話に、ものすごく可能性があるなと思いました。
河童はみんな知っているもので、特定のキャラクターではないですし。
河童なら化石みたいになって、水につけてよみがえるというのは、ありそうな気がしたんです。
河童の出てくる作品をやるなら、原作以上のうまいお話を思いつかなかったので、これを原作としてやろうと決めました。
でも、実現にこぎつけるまでには、20年という時間がかかってしまったのですが……。
原作者の小暮さんは、今年(2007年)の1月に亡くなってしまいました。
生前お会いしたとき、「映画にするにあたって原作をアレンジしたいんですけど」と話したら、「どんなふうにしたいの?」とは聞かれなくて、「もう一度クゥが世に出るなら、うれしいのでお任せします」と言ってくださったんです。
映画は昨年末には完成していたのですが、映画をお見せする前に小暮さんが亡くなってしまって、本当にがっかりました。それが本当に悔いになっています。
20年前にクゥを最初に企画したときは「子供向けのものを」と思っていましたが、今では「クレヨンしんちゃん」をやって、子どもだけではなくて大人も見てほしいという気持ちが大きくなりました。
――親の世代といえば、監督の「しんちゃん」の映画では父親にフォーカスが当たり、「クゥ」では母親にフォーカスが当たっている気がします。
そういう意図があったわけではないですけれども、家族構成を考えると、一番長い時間クゥと接するのはお母さんだろうと。
康一くんは昼間は学校に行っているわけですから。
最初にお母さんがクゥを見たときに気持ちが悪くなるというシーンがありますが、やっぱり女の人はだいたい、は虫類系は嫌いじゃないですか。
でも最後には、お母さんはクゥに違う気持ちで接するようになる。
――康一くんが旅に出るのを見送るときに、母親は複雑な感情を見せて、父親がキョトンとしているシーンがありましたね。
試写を見た方の感想でも、そのシーンへの反応が思いのほか多くて、うれしいですね。
ふと思いついて入れたシーンなんですが、迷ったシーンなんですよ。
僕は独身で子どもがいないので想像で作った場面だから、この反応はリアルなんだろうかと不安はあったんです。
まったく意味が通じないシーンになってしまうんじゃないかと。
子どもが一人で旅立つときって、それをお母さんが涙出して見送るっていうところまで、気持ちが揺れるのかなって。
心配は心配なんでしょうけど、なぜ涙ぐむところまでなったか。僕は心配という感情だけではないと思ったんですよ。
子どもが「一人でここに行きたいんだ」って思ったというのは、成長なんです。
日々接しているうちに、子どもは徐々に変わっていくんだけど、それは大きな変化だと思うんですよ。
クゥがいたから、康一くんも成長してそういう気持ちになったわけです。
それに反対しつつも、康一くんを見送るときって、「子どもだと思っていたけど、日々成長しているんだなあ」と、考えるんじゃないかと思ったんですよ。
逆に言えば、子どもが自分の世界を持ち始めて、自分の考えで行動を始めることになる。「子どもが自分から離れていく」という、悲しいことでもあるんです。
それがあの涙なんです。劇場で見たお母さんが見て、「あの気持ちはわかる」って言ってくれるとうれしいですね。
――原作にはない、康一くんの妹を設定したのは?
康一君の妹の瞳ちゃんという子は、クゥと一番対立する存在として出したんです。
何かというと反発するキャラがいた方がいいような気がしたんですよ。
おわかりのように、「しんちゃん」の一家と同じ構成なんです。
「しんちゃん」の場合は、しんちゃんが、それまでは自分は一人っ子でお父さんとお母さんが自分ばっかりを見ていたのに、妹のひまわりが生まれて、両親が小さな妹の方を見るようになる。
だから妹に嫉妬するという構図なんですけど、「クゥ」の場合は、瞳ちゃんがクゥを嫉妬するわけです。瞳ちゃんを出そうと思ったのは、そういうきっかけですね。
僕自身も妹はいますけど、その体験が元になっているわけじゃないんですけどね。
――「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」から「クゥ」まで5年間のブランクがありますが、その間は何をされていたのでしょうか。
頼まれてアニメ映画の脚本を書いたり、特撮映画のアイデアを提出したりしたことはあったんですが、いまのところ実現していません。
声をかけていただけるのはすごくありがたいのですが、当時はシンエイ動画に所属していたので、あまり勝手なことをするわけにもいかなかったんですよ。
「戦国」から「クゥ」まで、いつの間に5年経ったんだろうって、僕もびっくりしたんですけどね。5年間かけて「クゥ」を作ったわけじゃないんです。
まず、この企画が決まるまでものすごい歳月がかかったんです。「クゥ」が作れるようになるまで、ずいぶん紆余曲折がありました。
僕自身も、「しんちゃん」を作っていた頃にずっと「クゥ」のことを考えていたんです。「しんちゃん」が終わると、「クゥ」を進めないと、といつも思うんですが、すぐに次の「しんちゃん」を作らなければいけない、という繰り返しで。
「戦国」が終わったところで、はっきり「クゥ」にシフトしようと思ったんですね。「クゥ」に専念しようと思ったけど、必ず作れるという状況でもなかったんです。
「しんちゃん」を観てくださった方々が、「他に作りたいものはないか」と言ってくださったので、「しんちゃん」のおかげで、これを作れたという部分は大きいと思います。
ただ、「クゥ」の企画を見て、「それはいいねえ」と言ってくださった方はあまりいなかったですね。「原作はぜんぜん聞いたことない」「いまどき河童ですか?」みたいな感じで。
映画は大きなお金が必要なので、「いまこれだけ売れているマンガが原作です」みたいな保証が何もなかったわけですから、それは当然だと思うんですけどね。
最近聞いたんですけど、映画界には「河童の映画はヒットしない」という法則があるみたいなんです。(笑)
長い年月の中で、自分の中での「クゥ」の脚本は変化していきました。キャラクターが増えたり、原作のキャラクターが減ったり。
1本の映画としてするための作業で、いつの間にか変っていったんです。でも、原作からすべてが始まっているので、僕にとっては原作は絶対的なものなんです。
――原作にない大きな要素は?
いじめに関するものですね。原作には描かれていないんですけれども。子どもの社会の残酷な部分も描きたいと思っていたんですよ。
今回は、僕の考えるリアルな子どもたち・大人たちにしたかったんです。
観た人が、「いまどきのお父さんお母さん、子どもだね」と思ってもらえるキャラクターにしたかったので、あえてああいう子どもたちにしました。
実際に子どもたちにインタビューとかをしたわけではなくて、自分の中のイメージで作り上げていったセリフなんですけれども。
最初は、康一君も、紗代子をいじめていたというか、みんなと同じことしかできなかったんです。
いじめを描くために菊池紗代子というキャラクターが必要なキャラクターだったんですね。
実は、菊池紗代子という名前には意味があって、つげ義春のマンガに「紅い花」という名作があるんですが、小学校高学年ぐらいの男の子と女の子が出てきて、女の子の名前がキクチサヨコというんです。
男の子がサヨコにちょっかいを出していて、最後は男の子がサヨコに優しいところを見せるという、いい作品なんです。
サヨコが初潮を迎えるというエピソードで、サヨコの方がどう見ても大人っぽいんです。たしか年齢も少し上なんじゃなかったかな? 女の子は大人っぽくて、男の子はガキで。
でも、意識しているからちょっかいを出す。男の子だから、優しくしたいのに乱暴してしまうとか。
「クゥ」でこのキャラクターのことを考えたときに、キクチサヨコのことが頭に浮かんだので、名前をもらったんです。
――オッサン(康一の飼い犬)も、いじめに関するキャラクターですね。
オッサンというキャラクターも、20年の構想期間に途中で生まれたキャラクターなんですけど、最初はああいう役回りのキャラクターではなかったんですよ。
このオッサンというキャラクターも、実は前の飼い主にいじめられていたとか、テレパシーでクゥと話せるというのを考えたのも絵コンテを描いている途中だったんです。
――東京タワーを家族で歩いて上るシーンがありますね。「オトナ帝国」でも、家族で(偽の)東京タワーを上るシーンがありますが……。
怪獣映画とかフィクションの世界でたびたび壊されたりするものが、実際にあるというのが興奮したんですよ。
大人になってからも、東京の建物の中で一番好きですね。形に惹かれるのかな。
でも、何年か前に、展望台の上にアンテナがついてしまったんですよ。ああ、なんてカッコ悪いって。あれは見るたびにガッカリしますよ。
「クゥ」であのシーンをやるということで、まずいなあ、「しんちゃん」でやってるしなあ、ビルにしようかと迷ったんですけど、「それが俺の作るものだよ」と開き直りました。やたら東京タワーにこだわるというね。
順番は実は逆で、「オトナ帝国」を作っているときにすでに「クゥ」のあのシーンのアイデアはあって、「クゥ」のアイデアを「オトナ帝国」に流用したんですよ。
昔は今みたいに高い建物があまりなかったので、東京タワーはもっと人気スポットだったんです。だから、エレベーターがお客さんをさばききれないと、階段を上らせてくれたんです。家族で上ったんですが、僕はものすごく怖かった思い出があるんです。金網で囲われているので安全なのに。僕があんまり怖がるので、親はあきれていましたね。
「オトナ帝国」の取材で何十年かぶりに行って、「クゥ」のときにまた改めて上りました。
六本木の街が出てきますが、取材で写真を撮りに行ったのは何年か前なので、現実には東京ミッドタウンでもう完成しているビルが、この映画の中ではまだ建築中なんです。
――康一くんの住んでいる町が原作とは違いますね。
原作では群馬県なんです。原作者の小暮さんが群馬の出身で――僕もなんですけど――、それで原作ではたぶん小暮さんの地元の、架空の町なんです。
原作の小暮さんは東京都の東久留米市に住んでいて、会いに行ったときに東久留米の街並みをなんとなく見て、なぜかいきなり「ここを舞台にしたらどうだろう」と思ったんです。
東久留米市は真ん中に川が2本流れていて、川も整備されていて、河童の話をやるのにふさわしい気がしたんです。河童は水に縁がある生き物なので。
でもやっぱり、後でそうじゃない方がよかったのかな気もしたんですよ。劇中でも実名で出てくる黒目川という川は、一時期はずいぶん汚かったそうなんですけど、市民の努力できれいな川になったそうなんですよ。川岸に遊歩道も整備して、いい感じの川になっているんです。
この話には「、昔は蛍が舞うようなきれいな川だったけど、今はぜんぜん違う川だ」というのがふさわしいんですけど、今の実際の黒目川というのは、意外ときれいなんです。それを考えると、ゴミがものすごく捨てられているとか、落差の激しい川の方が良かったりしたのかな……とも思ったんですけどね。
でも、実は昔に流れていた場所と場所が微妙に変わっているんです。だから、それを言っちゃうとこの物語はありえないということになってしまうんですけど。その辺は嘘をついているわけですけど。
原作では山の中の川なんですが、「こんなうちの近所に」という方が意外性があるし、昔と今の対比が利くんですよ。意外とシンエイ動画から近いというのもあったんですが。
西武池袋線沿線に住んでいたんですが、東久留米のひばりが丘という街に上京して初めて住んだんです。東久留米に以前行ったこともあったんです。当時はもっと田舎だったんです。久しぶりに行ったらだいぶ違って驚きました。
「クゥ」を形にしたいと思い始めてから、遠野には何度か個人的に行っています。初めて行ったのは16〜17年前ですね。初めて行ったときと、「クゥ」のために行ったときは、ちょっと様子が変わっていますけどね。映画に出てくる「河童を見つけたら1000万円」とか、河童を見つけるためのライブカメラとかは実際にあるんです。
――沖縄が出てくるわけですが。
あれは原作にもぜんぜんない部分ですけれども。これを思いついたのもけっこう昔のことなんです。
今でこそ、沖縄は特別な、癒しの、魂に訴えかけるような場所になっていますよね。
当時、このアイデアを思いついて、いい着地点を見つかったと思ったんですけれども。
クゥを救うのは沖縄の妖怪、沖縄という場所なんだ、というのは意外で、納得ができると思ったんです。
その後、徐々に沖縄がブームになったんですね。僕はそれをハラハラしながら見ていたんですよ。沖縄がかたちを変えていってしまう。
キジムナーというのは、河童の仲間なんですけど、妖怪というよりは実体のない妖精のような存在でもあるみたいなんです。
それを知ったときに、「これだ!」と思ったんですよ。
その頃に、「パラダイスビュー」「ウンタマギルー」という映画を見て。
僕は会社を休んで、東南アジアをバックパッカー旅行をしたりしていたんですけど、「パラダイスビュー」を見て、「日本にも東南アジアがあるんだ!」って、かなり衝撃を受けたんです。
当時、あまり知られていなかったんですよ。だんだん、本土の人たちが沖縄に興味を持ち出して、どんどん沖縄が「本土で傷ついた心も沖縄に行けば癒される」みたいな物語がどんどん増えてきて、「俺が先にそれがやりたかったのに……」と思って。(笑)
――キジムナーといえば、ガレッジセールのゴリさんが声をあててますね。キャスティングはどのぐらい監督の希望が反映されているのですか?
ほとんどですね。タレントさんが多いので話題作りのために思われるかもしれませんが、それも多少ありつつ、役としてハマる人ということで。キャスティングは僕に全部任せてもらえたんですよ。なかなか決められなかったですよ。
――アニメの声優さんをメインキャストには使っていないのは狙いが?
普段アニメの声優さんと仕事をしていると、ある程度予想がつく範囲のものになるわけですよ。今回は冒険がしたかったんです。
声優さんの独特の芝居というのがあって、どうしてもオーバーになりがちなんですよ。
割と型にはまったことをやる人が多くて、それは役者さんが悪いということではなくて、アニメ作品はそういうものを求める作品が多いので、自然にそうなっていったと思うんです。
「クゥ」には、もう少し生々しい声が欲しいなと思ったんです。
だから、子どもたちもオーディションをして、役に近いイメージの子を探しました。
クゥの声の子役は10歳、アフレコをやっているときは小学4年生だったと思います。康一と紗代子の役の子は当時中1、瞳役が7歳だったかな?
――劇中の康一くんたちは小学生というより中学生ぐらいの体型の気もします。
資料とかがあるわけじゃなくて、「いまどきの5年生はこんな感じかな」と描いていくわけですけど、普通のアニメより多少大人っぽくしたかったんですよ。
でも、実際に学校に取材に行って5年生の子どもたちを見ると、「あれ、このキャラクターはちょっと大人っぽいな」と、ちょっとまずいかなと思ったりはしましたが、結局変更はしなかったんです。5年生6年生の子どもたちって、体の大きさとかものすごくバラバラなんですね。だから、そんなにも嘘じゃないだろうなと。
あらすじとかには「5年生」と書かれることがあるかもしれません。たしかに、最初は5年生という年齢設定をしていたんですけど、劇中には一切言及するのはやめたんですよ。
――妹の瞳役は、表情豊かで、かなり顔が崩れたりしますね。
あんなもんじゃないですかね。小さい子というのは。気に入らないことがあったりするとふくれたりするでしょう。そっちの方があリアルだろうなと。
(クゥを)大嫌いから大好きになる、というのは、ものすごい変化なわけですよ。監督というのはそういうのに挑戦しないといけない。最初から大好きで、最後も大好きというのでは、何の起伏もないじゃないですか。映画の時間内でその変化を描くのは大変なんですけどね。
――クゥのお父さんが冒頭で龍の話をしていて、東京タワーのシーンでその龍が出てきます。
あの龍は、神様なんですね。龍神ですけど。この映画で神様を出したいと思ったんですよ。命とか、神様とか、あいまいでかたちのないものを入れたいと思っていたんです。
神様が地上に姿を現したら、人はどう思うんだろう。怖がる人もいるだろうし、クゥにとってはそれが救いだったりもするわけです。
人間が望んでも来ないけど、河童が心から望めば龍は来るんじゃないかと思ったんです。
クゥのお父さんが呼んでくれた、ということに一応はしているんですけどね。
僕は、河童を、妖怪というよりも少数民族みたいな意識で考えていましたね。人間の歴史の中で、迫害されて消えていった民族っていっぱいいるわけじゃないですか。
ネイティブアメリカンの人たちに僕は興味を持っていて、だぶらせているところはあります。
人間がどんどん増えて、河童が暮らしていた土地を好きなようにどんどんいじくり始める。河童は生きられなくなる。
ネイティブアメリカンの信仰や死生観を違和感なく読めるんですよ。
僕は河童に実際に会ったことはないので、河童の気持ちを知る手がかりが欲しかったんです。
アメリカの記録小説で「イシ」(シオドーラ・クローバー著、岩波書店)という作品があるんです。
元の暮らしを守っていた、アメリカ最後のネイティブアメリカンの記録なんです。
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どんどん仲間が殺されたり死んでいって、とうとう一人ぼっちになってしまうんです。どうにもならなくなって、最後は白人のいるところに現れるんです。
殺されると思って出てきたんですが、人類学の教授か何かが面倒をみるという記録なんです。
都会に住まわされて、何もかも珍しい。でも、ネイティブアメリカンらしい行動をとる。山の中に行ったらすごく生き生きとして、自分の弓矢で狩りをしたり、川で泳いだり……。
「イシ」は、参考としてはかなりキーだったかな。
後で知ったんですけど、それを書いたのが、「ゲド戦記」を書いたル=グウィンのお母さんだそうなんです。イシの面倒を見たのは、その旦那さんだそうなんです。
――命の表現とは?
肉体は滅ぶけれども、命は不滅であってほしいという僕の願望があるんですよ。それを魂と呼んでもいいんでしょうけど。
死んだらそれまでというんじゃ面白くないじゃないですか。死んだら死後の世界があった方が面白いし。
クゥのお父さんは死んでいるけれども、なんとなく死んでいないように描いているんですよ。クゥが話しかけて、それに答えてくれたりしてほしい、という僕の願望があって。
でも、幽霊のお父さんが直接語りかけてくるみたいな演出にはしたくなかったんです。なんとなくお父さんの存在を臭わせるぐらいにしたかったんです。
――けっこう残酷な表現がありますよね。冒頭のクゥのお父さんの死や、東京タワーでカラスが死んだり。
そこはあえてしましたね。作っていく過程で、やっぱり問題になったりはしたんですよ。で、もっと残酷だったのを短くしたりはしているんです。
一切なくしてほしいと言っていた人もいたんですが、僕はあえて残したんです。いじめもそうだけど、残酷な部分も残したかったんですね。
――公開が目前ですね。
子どもにも見てほしいし、自分と同世代の大人にも見てほしいし。満足のいくものができたと思っています。
絵コンテが終わった段階で、3時間分あって、だいぶ削りました。
日常的なたわいのないシーンがもっとたくさんあったんですが、削りました。そういうものも丹念に描きたかったんですけどね。
2時間以内に収めてほしい、という意見ももちろんあったんですけど、「これ以上短くできません。勘弁してください」というところまで削りました。
長いと言われるかもしれませんが、「俺にとっては足りないんだよ」って感じで。(笑)
原作から映画化まで、ちょうど1世代分ぐらい時間が経っているので、劇場に子どもをつれて見に来たお父さん、お母さんが子どもの頃に原作を読んだことを思い出したりしたら、最高ですけどね。
――次回作は?
20年間関わってきたものが終わって、実はものすごい喪失感を感じています。
「次に何か」と言われても、「そんなにすぐに立ち直れるわけないだろ!」という感じです。(笑)
他にも並行して温めている企画があるとかいうわけではなくて、本当にこれ1本だったので。
これからもアニメーションを作っていこうとは思いますけど、そんなにすぐには次の企画は考えられないですね。
フリーにはなったので、お声がかかればいろいろやっていきたいですね。実写にも興味はあります。でも、意欲はあってもそうそう作れるもんじゃないというのはわかっています。
ある程度ボリュームのある物語を作りたいので、映画を作っていきたいですね。
▼7月23日追記:
参考リンク:アニオタが非オタの彼女にアニメ世界を軽く紹介するための10本
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