首相改憲へ加速 立民と合意こだわらず - 東京新聞(2017年10月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017102402000131.html
https://megalodon.jp/2017-1024-0940-01/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017102402000131.html

安倍晋三首相(自民党総裁)は二十三日、衆院選を受けて党本部で記者会見し、自民党衆院選公約の重点項目に掲げた改憲について、野党第一党となった立憲民主党との合意には必ずしもこだわらない考えを表明した。公明党野党第一党を含む合意形成を求めており、与党内で考え方の違いが浮き彫りになった。 (中根政人)
首相は改憲について、与野党に関係なく「合意形成に努める」と説明。立憲民主も含めて合意を図るのかとの質問に、「合意形成の努力は(野党)第一党であろうと、第二、第三、第四党であろうと行わなければならない。しかし、政治なので当然、みなさん全てに理解いただけるわけではない」と話した。立憲民主と最終的に合意に達しなくても、改憲発議に踏み切ることを想定した発言だ。
立憲民主は、安倍政権が成立させた安全保障関連法を違憲として、首相が主張する自衛隊を明記する改憲に反対している。公明党山口那津男代表は二十三日、国会内で「幅広い合意をつくり出すことが大切というのは従来から変わらない」と記者団に強調した。
会見で首相は、二〇二〇年の改憲施行という目標について「スケジュールありきではない」と強調。一方で「具体的な条文案について自民党内で検討を深め、党の案を国会の憲法審査会に提案したい」と、意見集約を急ぐ考えを示した。
選挙期間中の街頭演説で、改憲にほとんど言及しなかった理由について「限られた時間の中、街頭で述べることは地域の生活に密着した政策だ。憲法改正は(衆院選ではなく)国民投票の場で、具体的に説明する責任がある」と話した。
森友学園や加計(かけ)学園を巡る問題では、選挙期間中の党首討論会などで「丁寧に説明した」と強調。「これからも国会で質問があれば丁寧に答えたい」とも話した。

<有権者発>小選挙区 問題点は 得票率48%で3/4占有 - 東京新聞(2017年10月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017102402000127.html
https://megalodon.jp/2017-1024-0941-57/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201710/CK2017102402000127.html

今回の「有権者発」のテーマは、衆院選挙制度です。衆院選の結果を受けて「多くの有権者は安倍政権を支持していないのに、自民党が今回の衆院選で勝った。小選挙区制度に問題がある」との指摘を受けました。
本紙の集計で、自民党小選挙区での得票率(有効投票総数に占める自民党候補全員の得票総数)は約48%でした。それなのに、小選挙区議席占有率は約74%です。自民党には、小選挙区に投票した人の二人に一人しか入れていないのに、四分の三の議席を獲得した計算になります。
今回の投票率は戦後二番目に低い53・68%。有権者のうち半分近くの人は投票に行きませんでした。このため、全ての有権者のうち、何割の人が自民党に投票したのかをみる絶対得票率を計算すると約25%。自民党には有権者四人のうち一人しか投票しなかったことになります。
二〇一四年の衆院選でも、自民党は大勝しましたが、小選挙区で得票率は約48%、議席占有率は約75%でした。
〇九年に当時の民主党政権交代を実現した時の衆院選では、小選挙区の得票率は約47%、議席占有率は約74%と同じ傾向でした。
現行の小選挙区比例代表並立制が導入されたのは、一九九六年です。少ない得票で高い議席占有率を得られ、投票が議席に反映されない「死に票」が多いといった弊害が指摘されてきました。
国会には小政党を中心に選挙制度を見直すべきだとの意見もありますが、実現しそうにありません。有権者選挙制度の特徴を踏まえ、投票で意思表示する必要があります。 (城島建治)

今回衆院選最大1.98倍 弁護士グループが「一票の不平等」一斉提訴 - 東京新聞(2017年10月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102402000108.html
https://megalodon.jp/2017-1024-0940-57/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102402000108.html

二十二日投開票の衆院選は一票の価値が不平等で違憲だとして、弁護士グループが二十三日、二百八十九の全小選挙区での選挙無効を求め、全国十四の高裁・高裁支部に一斉提訴した。
今回の衆院選小選挙区定数を「〇増六減」し、十九都道府県の九十七選挙区で区割りを見直して実施した。最大格差は一・九八倍で、最高裁が「違憲状態」と判断した二〇一四年の前回選挙の二・一三倍から縮小。一九九四年の小選挙区制導入後、二倍を下回ったのは初めてとなった。
最高裁は、四十七都道府県に一議席を無条件で割り振る「一人別枠方式」を格差の要因として見直しを求めてきた。弁護士グループは「今回も実質的に維持された」と主張している。
総務省が公表した当日有権者数によると、国会議員一人当たりの有権者数が最も多かったのは東京13区(東京都足立区の一部)の四十七万二千四百二十三人で、最少は鳥取1区(鳥取市など)の二十三万八千七百七十一人だった。
二〇二〇年国勢調査の結果公表後、人口比を反映しやすい議席配分方法「アダムズ方式」の導入が予定されている。提訴後、記者会見した升永英俊弁護士は「選挙の結果、憲法改正の発議が可能となったが、違憲の選挙で選ばれた国会議員や総理大臣には発議する資格がない」と述べた。
衆院選一票の不平等訴訟> 議員1人当たりの有権者数が選挙区によって異なれば1票の価値に不平等が生じる。これは憲法が定めた法の下の平等に反するなどとして、選挙無効を求める訴訟。不平等が著しければ「違憲状態」、それを是正するのに必要な期間内に国会が対応しなければ「違憲」となる。最高裁は1972年と83年の選挙を違憲と判断。2009年、12年、14年と、過去3回連続で違憲状態と判断した。

疑惑、貧困…解決を 18歳「被災地を見て」 - 東京新聞(2017年10月23日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102302000326.html
https://megalodon.jp/2017-1024-0944-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102302000326.html

二十二日投開票の衆院選自民党が大勝し、安倍政権継続が決まった。「復興を重視してほしい」「子どもの貧困対策も進めて」。一票に思いを託した各地の十八歳たち。有権者として初の国政選挙への参加となったが、結果の受け止めはさまざまだ。
宮城県東松島市の高校三年立花実来(みく)さんは、東日本大震災津波で自宅が半壊する被害に遭った。自宅は再建したものの「商店街はシャッターが閉まったままのお店が多い。町に若い人が少ないのも課題」と話す。
古里に強い愛着があり「子どもを守れる保育士になって地元で働きたい」という立花さん。投票先は「復興が停滞せずに進むかどうかを重視して選んだ」と明かす。「被災地にはさまざまな環境の中で部活や学業を頑張っている学生がいると知ってほしい」と強調した。
「返済不要の奨学金の充実や貧困状態にある子どもの支援に取り組んでくれそうに感じた」。子どもの貧困対策に取り組む公益財団法人「あすのば」に参加する専門学校生の鹿川凱斗(かがわかいと)さんは各党の公約や政策を見比べて野党の主張に関心を持った。
理学療法士の夢を追い、沖縄県石垣島から福岡市の専門学校に進学。家庭の経済的な理由から進学費用は複数の奨学金を借りてまかない、将来の返済総額は計約八百万円に及ぶという。
若者と政治を結ぶ活動に取り組むNPO法人「僕らの一歩が日本を変える。」(東京)のメンバーで、私立大一年の河上鈴華さんは新潟県の出身。投票先選びには政策比較サイトを活用し、地元に戻った際の就職や子育てなど、将来の生活面を重視した。
「今回一票を投じたことで、十年後の現実を自分の責任として受け入れられると思う」と話した。

初の一票「じーんと感動」 演説聞き「心打たれた」 - 東京新聞(2017年10月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102402000114.html
https://megalodon.jp/2017-1024-0942-44/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102402000114.html

22日投開票された衆院選で初めての国政選挙に臨んだ18、19歳の5人がどう投票先を選ぶか、公示日から追ってきた。党首の街頭演説を聞いたり、選挙区の候補者全員のツイッターを確認したりして、考えを深めながら全員が投票した。 (柏崎智子、原尚子)
五人は中央大一年の富沢遥子(ようこ)さん(18)、堀暁生(こうき)さん(19)、風間紫緒(しお)さん(18)、専修大一年の林野乃子(ののこ)さん(19)、中央大学杉並高校三年の釘本(くぎもと)勇気さん(18)。

■揺れた思い
比例代表の投票先は二つに割れ、二人が自民党、三人が立憲民主党を選んだ。
自民に入れた二人のうち、釘本さんは安定性や北朝鮮問題の対応などを評価し、公示前から一貫して支持。一方、林さんは中盤、希望の党を考えた。代表が女性であることと、「自民に権力を集中させすぎるのはよくない」と感じたからだが、友人や家族と話すうち基盤の弱さや実行力に不安が募った。
立憲民主に入れた三人は、いずれも公示日に聞いた枝野幸男代表の街頭演説が決定的だった。
風間さんは「奨学金など私たちにかかわることを一番に話し、心を打たれた。将来を進む若者に目を向けてくれてうれしかった」。堀さんは「希望に合流せず信念を貫いた」という結党の経緯に共感。公示前は希望に期待した富沢さんは、枝野代表の後に、小池百合子代表の演説を聞き「政策の実現性が乏しい」と感じた。
小選挙区の投票先は自民が二人、希望、共産党公明党が一人ずつ。林さん以外の四人は、比例で投票した政党の候補者が小選挙区にいなかった。
釘本さんの東京12区は公明、共産、諸派の戦い。「自民がいれば自民。希望がいれば選択肢として検討したのに。結局、自民と連立を組む公明の候補にしたが、選びようがない人はたくさんいたのでは」

■戦争は嫌だ
自民圧勝となった結果について尋ねると、戦争を警戒する意見が相次いだ。
林さんは「今まで武器を使わず平和にやってこられたのを、わざわざいじる必要ない。戦争は絶対嫌だ」と九条改憲に反対。今回は自民支持の釘本さんも「右傾化」が強まるのを心配し、「飛んできたミサイルを撃ち落とすまではいいが、敵基地の攻撃はだめ。専守防衛を守り、戦争の引き金は引かないで」と求める。
小選挙区で自民候補に入れた堀さんは「九条改憲が戦争につながるのかどうか、よく説明してほしい。もしそうなら国民投票では反対票を投じるし、次の国政選挙もよく考える」。

■投じる意味
投票率は前回より微増したものの、戦後二番目に低い53・68%だった。地方選挙も含めて初めての投票となった富沢さんは、「票を投じた時、日本国民の一人なんだと、じーんと感動した」と話す。
「たかが一票と考えて棄権する人がいるなら、それは違う。一票を投じるから、結果を自分のこととして受け止められる。何があっても欠かさず投票していると自慢できる大人になりたい」

(筆洗)「排除の論理」が失速の引き金 - 東京新聞(2017年10月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017102402000132.html
https://megalodon.jp/2017-1024-0938-46/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017102402000132.html

ソプラノの美声に恵まれた十一歳の英国の少年は聖歌隊の一員に選ばれた。ソプラノは花形で授業も一部免除され、エリザベス女王の前で、歌声を披露する名誉にも与(あずか)った。
悲劇は二年後である。指揮者が聖歌隊から排除した。理由は変声期。免除されたはずの授業を下の学年でやり直せと言われた。少年は荒れ狂った。ローリング・ストーンズキース・リチャーズの幼き日。学校、あらゆる権威を疑うようになったと書いている。
理において声の出ぬソプラノに用はない。それは分かる。されど情においては酷である。こっちの排除も分からぬわけではないのだ。希望の党民進党離党者に改憲などで一致しなければ公認しないという「排除の論理」が失速の引き金となった。
政党である以上、政策、主張の一致を見たい。当然である。それでも「排除する」に世間の情が反発したのは、か弱き者や少数意見が排除され、無視されやすい時代と無関係ではあるまいと想像する。
だれ一人排除しない。見捨てぬ。そういう心優しき政治を恋うておるのに「排除する」の一言に、希望の名にし負う包容力も温かさも感じられなかったのだろう。
排除されかかった人で結成した立憲民主党野党第一党になった。「おきざり」の痛みを分かってくれまいか。そんな期待と見る。世の中に不満を感じるとストーンズを聴きたくなるものだ。

(衆院選 自民大勝)「白紙委任」していない - 沖縄タイムズ(2017年10月24日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/160960
https://megalodon.jp/2017-1024-0936-55/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/160960

衆院選は自民、公明両党が3分の2の議席を得て、安倍政権の継続が決まった。
自民党が単独で国会運営を主導できる絶対安定多数を確保し、与党で憲法改正の発議に必要な議席を上回ったのは、大勝といっていい。
しかし背景をつぶさに見ていくと、安倍政権の評価に対するねじれが浮かぶ。
共同通信が実施した出口調査で、安倍晋三首相を「信頼している」の44・1%に対し、「信頼していない」は51・0%に上った。報道各社の世論調査でも、安倍内閣は不支持の方が高い傾向にあり、首相の政治姿勢には厳しい目が向けられている。
自民党内から「おごりや緩みだけでなく、だんだん飽きられてきた」(小泉進次郎筆頭副幹事長)、「政権が全面的に信任されたという評価は下しにくい」(石破茂元幹事長)との声が聞こえてくるのは、それを裏付けるものだ。
一方、今回の政権継続の審判は、野党自らが招いた「オウンゴール」の側面もある。
野党第1党だった民進党の分裂。小池百合子代表の「排除の論理」で失速した希望の党。バラバラで頼りない野党に政権は託せないという消極的な支持が与党に集まったのだ。
衆院選から一夜明けた23日、安倍首相は公明党山口那津男代表と会談し、憲法改正論議など連立政権が進める主要政策で合意した。 
選挙で安倍政治の全てが信任されたと思ったら大間違いだ。まして選挙中ほとんど語られなかった改憲を「白紙委任」などしていない。

■    ■

5年近くに及ぶ「安倍1強政治」が、衆院選の大きな争点だった。
憲法観や安全保障政策で自民党と違いが不鮮明な希望の党に対し、安倍政権との対立軸を鮮明にした立憲民主党が野党第1党に躍進した意義は大きい。
枝野幸男官房長官らがわずか20日前に旗揚げした党が、公示前の3倍以上の54議席を獲得し、政権批判票の受け皿として一定の役割を果たしたのだ。
希望の党への合流を巡り、小池代表の「排除」であぶり出された民進党出身のリベラル系議員を中心にしてできた党である。
信念を曲げずに立ち上がった枝野氏らの姿と、「政治は、政治家のためでも政党のためでもなく、国民のためにある」との訴えが有権者の心に響いたようだ。
立憲主義が壊されていくことへの危機感も大きかったのだろう。

■    ■

とはいえ立憲民主は1955年以降で最少勢力の野党第1党となる。異常な勢力構成である。 
1人の当選者以外の票が「死に票」になる小選挙区制度では、与野党が「1対1」で対決する構図を広げなければ、巨大与党には太刀打ちできない。
安倍1強のおごりを招いた責任の一端は、受け皿になりきれなかった野党にある。
民主主義を健全に機能させるためにも、安倍政権に対抗しうる勢力を築き上げなければならない。

自公3分の2 憲法論議 与野党超えて、丁寧に - 朝日新聞(2017年10月24日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13194459.html
http://archive.is/2017.10.24-003852/http://www.asahi.com/articles/DA3S13194459.html

衆院選で自民、公明両党が定数の「3分の2」を維持した。改憲の国会発議に必要な勢力を安倍首相は再び手にした。
本紙と東京大学による共同調査では、当選者の8割が改憲に賛成の姿勢だ。与野党を問わず改憲志向は強まっている。
一方で、各党の考え方の違いも見えてきた。
自民党は公約に自衛隊憲法明記を盛り込んだ。首相は、自衛隊違憲という論争がある状況に終止符を打ちたいと言う。「自民党内の賛成を得る段階ではないが、そういう観点から議論を進めていただきたい」と、9条改正に意欲を見せる。
希望の党小池百合子代表は「(政権を)サポートする時はしていく」というものの、自衛隊明記には「もともと政府は合憲と言ってきた」と否定的だ。
公明党山口那津男代表は9条改正は不要との立場だ。「野党第1党の理解を含めた合意形成を図るべきだ」と、与野党を超えた幅広い合意を求める。
その野党第1党となった立憲民主党は、違憲と位置づける安全保障関連法を前提とする9条改正には反対だ。
衆院だけではない。参院ではやはり9条改正に反対の民進党が、なお野党の最大勢力だ。
首相はきのうの記者会見で、国会発議について「すべて(の野党)に理解を頂けるわけではないが、合意形成の努力を払うのは当然だ」と語った。
「スケジュールありきではない」とも述べた。当然の姿勢だろう。
国会の憲法審査会で、超党派による真摯(しんし)で丁寧な議論を積み重ねる環境をつくれるかどうかが問われる。
時代の変化のなかで憲法を問い直す議論はあっていい。
だが、踏みはずしてはならない原則がある。
憲法は国民の人権を保障し、権力を制限する規範である。
改憲はそうした方向に沿って論じられるべきであり、どうしても他に手段がない場合に限って改めるべきものだ。
改憲にどの程度のエネルギーを費やすか。優先順位も厳しく吟味する必要がある。
何よりも大事なのは、主権者である国民がその改憲の必要性を理解し、同意することだ。
本紙の衆院選出口調査によると、9条への自衛隊明記については賛成、反対とも46%。民意は二分されている。
衆院選で示された自民党への支持は、必ずしも改憲への支持とは言えない。
憲法論議が国民を分断するようなことはあってはならない。

(余録)江戸の人の習いごと熱は生半可でなく… - 毎日新聞(2017年10月24日)

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171024/ddm/001/070/156000c
http://archive.is/2017.10.24-003655/https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171024/ddm/001/070/156000c

江戸の人の習いごと熱は生半可(なまはんか)でなく、珍妙な師匠もたくさんいたそうな。なかには「秀句(しゅうく)指南」というのもあった。俳句や川柳を教えるのではない。「秀句」とはシャレ、はっきり言ってダジャレのことだ。
「ありがたいねえ」と言われたら「蟻(あり)が鯛(たい)なら芋虫(いもむし)ゃ鯨(くじら)」と返せ。「猫に小判」には「下戸(げこ)に御飯」と言え……。こんなことを人に教えて商売になったというから、江戸というのはすごいところである(杉浦日向子(すぎうら・ひなこ)著「一日江戸人」)
落語の「あくび指南」はこの風潮を皮肉った噺(はなし)で、その枕には「けんか指南」も出てくる。こちらはけんか上手で聞こえ、自ら指南した塾生もいる東京都知事。その乾坤一擲(けんこんいってき)、あわよくば天下取りと仕掛けた大げんかの大誤算である。
もちろん小池百合子(こいけ・ゆりこ)氏の希望の党である。自民党を向こうに回して一挙に民進党をのみ込んだ手並みが世を驚かせたが、リベラル派相手の「排除します」の“拙句”で勝負運はすぐに去った。結果は、左右のけんか相手の勝利であった。
もともと内閣支持率が不支持率を下回るなかでの衆院選である。このような状況で与党が勝利したのは、今の選挙制度になって初めてという。野党を分裂させ、与党に漁夫の利をもたらしたけんか上手に必要なのは秀句指南だったか。
2大政党制や多党制など、政党間の関係を政党システムというが、政党政治には民意を的確に映す政党システムが欠かせない。見境ないけんかで壊れたシステムを立て直す政治的な賢慮が問われる野党各党だ。

衆院選 9条へ自衛隊明記、賛成5割 当選議員アンケ - 毎日新聞(2017年10月24日)

https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171024/k00/00m/010/149000c
http://archive.is/2017.10.24-003437/https://mainichi.jp/senkyo/articles/20171024/k00/00m/010/149000c


毎日新聞は23日、衆院選の全候補者を対象に実施したアンケートを基に、当選者分を再集計した。安倍晋三首相が提案した憲法9条への自衛隊明記に賛成する当選者は全体の54%と半数を超えたが、改憲の発議に必要な衆院の3分の2(310人)には届いていない。自民党以外の各党では賛成が5割以下にとどまる。9条改正に「反対」は全体の24%。一方、大規模災害などの緊急事態に国会議員の任期を延長する緊急事態条項は、「賛成」が全体の68%で3分の2を超えた。
憲法改正自体には、2014年衆院選とほぼ同じ82%が賛成。反対は13%にとどまった。自衛隊明記は自民の75%が賛成だが、12年の改憲草案で示した「国防軍の明記」も14%いる。公明党は36%が「改正反対」、32%が無回答。自衛隊明記に賛成は21%だった。
希望の党自衛隊明記に賛成47%、反対39%と割れた。小池百合子代表の求心力が急低下しており、党内論議は波乱含み。日本維新の会は無回答が73%と、今後の議論を見定める空気が漂う。立憲民主党は9条改正に反対が98%で、政権との対決姿勢を強める。共産、社民両党も全員反対した。
緊急事態条項には自民の94%、公明の61%が賛成。希望は賛成43%・反対47%で割れており、立憲は91%、維新も82%が反対だ。共産、社民は全員が反対。参院の合区解消は全体の61%が賛成だが、自民以外には広がりを欠く。公明の82%と立憲の84%、維新も91%が反対した。【村尾哲】