おでん、大根サラダ。
2012年・今年の10冊
もう一年経ったのか?と戸惑うような年の瀬である。
2012年に刊行された書籍のうち、自分で読んで感銘を受けたものをあげる。
ただし、今日が大晦日だということはわかっているのだが、なんだか一年の終わりという気がしないので、感想は簡単にする。
1.鎮魂と再生
- 作者: 赤坂憲雄,荒蝦夷
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2012/03/19
- メディア: 単行本
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いろいろなことを考えさせられたが、うかつな言葉で感想を述べるのはためらわれる。
2.犠牲のシステム
- 作者: 高橋哲哉
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/01/17
- メディア: 新書
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3.動物に魂はあるのか
- 作者: 金森修
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/08/25
- メディア: 新書
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動物に魂はあるのか? デカルトに端を発した動物機械論をめぐるフランスでの論争を中心に、古代ギリシアのアリストテレスから、現代で動物開放論を唱えるシンガーまで、動物と人間の境界、機械と生命の境界をめぐる西洋思想史の系譜をコンパクトにまとめたのが本書。淡々としながらもときにはユーモラスな語り口で、私たちがふだん意識していない問題圏へと案内してくれる。
4.詩歌と戦争
詩歌と戦争 白秋と民衆、総力戦への「道」 (NHKブックス)
- 作者: 中野敏男
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2012/05/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者は、白秋の文学活動の全盛期にあたる関東大震災前後の文化状況を「一般に心優しい叙情詩が求められるような精神状況が生まれて」いたとし、「そこに実はすでに内包されていた愛国主義が震災後という事態の中で亢進し、戦争の時代への進展とともに詩人たちをこぞって戦争翼賛へと導いていったのではないか」と想定する。本書は膨大な資料を分析しながら、優しさや癒し、懐かしさなどの心情を歌いあげる童謡の中にナショナリズムの核が胚胎していたことを突きとめる。やがて、白秋だけでなく佐藤春夫、萩原朔太郎、高村村光太郎ら日本近代の代表的な詩人たちが総動員体制に合流していくプロセスを描き出す。単に文学者たちの思想からではなく、童謡や民衆歌謡の流行といった社会動向にも注目して戦時中の国民精神総動員を可能にした背景を描いた力作。
5.自律への教育
- 作者: Th.W.アドルノ,原千史,小田智敏,柿木伸之
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/12/09
- メディア: 単行本
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最初の講演「過去の総括とは何を意味するのか」は、日本でも90年代からゼロ年代にかけて議論が白熱した歴史教育とナショナリズムについての見解が示されているが、「ドイツ」を「日本」と置き換えてもほとんどそのまま通じるほどだ。第二の講演「哲学と教師」も実学重視の傾向から生じる「教養」の軽視への批判であって、これは教養を「雑学」と貶めている現代の日本にもそのまま通じる話である。第3章では対談形式で「テレビと教育」を論じる。当時はテレビ放送が普及したばかりで今昔の感があるが、教育は新しいメディアにどう対応すべきかという普遍的な視点は古びていない。第4章「教職を支配するタブー」は再びアドルノの講演。ここでは、なぜ教師は社会から攻撃されるのかという、まさに現代日本の教育界が直面している問題が扱われている。精神分析にも造詣の深い社会学者でもあるアドルノの大衆社会分析が光る一編。
本書の後半、アドルノの講演「アウシュヴィッツ以後の教育」とそれに続く三つの対談はナチズムの復活に抵抗するという関心によって貫かれており、ひとつながりのものとして読むことができる。アドルノは「これだから哲学者はと、お叱りを受けるかもしれませんが」と断りながら、当時の西ドイツで支配的だった「絆」や「順応」を強調する教育学や英米流の競争主義を批判しつつ、メディア・リテラシー教育の手法を用いて自律する個人を育てる教育を提唱する。本当に半世紀前の発言なのかと目を疑うほどだ。
6.日本ファシズム論争
日本ファシズム論争 ---大戦前夜の思想家たち (河出ブックス)
- 作者: 福家崇洋
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/06/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書はヨーロッパ生まれのファシズムを戦前の日本がどのように受容していったか、その歴史をたどる。最初にとりあげるのは、今でこそヒトラーにくらべて影が薄いムッソリーニだが、1920年代の日本ではムッソリーニ・ブームが起きたという。政治評論でさかんに取り上げられたばかりでなく、子ども向けの偉人伝が出版されたり宝塚歌劇に登場したりと大人気だったらしい。著者はこの人気の背景に議会政治やデモクラシーに対する違和感があり、それがファシズムに対する共感になっていったのではないかと推測している。
ドイツのヒトラー率いるナチズムについても奇妙なエピソードが紹介されている。1930年代にドン・ガトと名乗る人物がナチ党機関誌通信員の肩書きで来日し、日本の雑誌に寄稿したり政治団体と交流したりして、一時はナチスのスポークスマンのような扱いを受けた。ところが彼は「ナチ党の特派員でもなんでもない」正体不明の人物だったのである。どこか軽薄な印象を受ける出来事だが、流行の熱に浮かされる直前の社会とはこのようなものかも知れない。
7.悪の哲学
- 作者: 中島隆博
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/05/01
- メディア: 単行本
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8.民主主義の革命
民主主義の革命―ヘゲモニーとポスト・マルクス主義 (ちくま学芸文庫)
- 作者: エルネストラクラウ,シャンタルムフ,Ernesto Laclau,Chantal Mouffe,西永亮,千葉眞
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/11/01
- メディア: 文庫
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9.物語消費論改
- 作者: 大塚英志
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2012/12/10
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10.死霊解脱物語聞書
- 作者: 小二田誠二
- 出版社/メーカー: 白澤社
- 発売日: 2012/06/01
- メディア: 単行本
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みなさん、よいお年を。