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In Jazz

2112-09-03 初めに。

ここは私ことテリー・ライスが主に漫画や音楽やアニメや小説、映画などの感想を好きに語るブログです。

あくまで個人の感想である事にご留意よろしくお願いします。

サイト名のIn Jazzとは音楽ジャンルのジャズではなく、

俗語の意として「熱狂」とか「たわごと」の意です。

好きなことを語れたらいいなあという思いを込めて。

更新はかなりの不定期になってますが気が向いたら、書く方向になると思います。

それとtwitterでもつぶやいてます。なんだかこっちがメインっぽくなってますが。

テリー・ライス(@terry_rice88)さん | Twitter


※2012/8/16追記。

amazonに自分の好きなものを集めたインストアページを作りました。

ちょくちょく追加していきますので気軽にご覧いただければと思います。

In Jazz Serect shop - Books

2050-05-16 アニメ感想置き場。

アニメ感想置き場

| 22:43

※6/23 最下段のカテゴリに劇場版パトレイバー1&2と新海誠作品の感想リンクを追加。

この記事はアニメの感想リンク先まとめページです

随時更新いたしますのでよろしくお願いします。

続きを読むをクリックで。

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2017-02-01

音楽鑑賞履歴(2017年1月)

| 23:45

月一恒例の音楽鑑賞履歴。音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。

29枚と新年の幕開けとしては幸先の良いスタート。

なのですが、新規購入分は指で数えるくらいしか聞いてません。

聞きたい傾向がジャズに偏ったせいもあり、聞く気になれなかったというのもあるのですが。

というわけで、今回はジャズUKロックがメインとなっています。

2月はもうちょっと傾向を変えていきたいなあと思うなどしてます。

では、以下から感想です。

1月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:29枚
聴いた時間:203分

Round About MidnightRound About Midnight
・55,56年録音盤。ハードバップを確立させたと言われる作品。マイルスの特徴的なミュートトランペットが鳴り響くのも印象に深い。演奏メンバーはジャズファンなら知らない人がいないほど有名どころの揃った布陣になっており、その中には若き日のジョン・コルトレーンもいた事からも歴史的な一枚だ
もちろんマイルスコルトレーンばかりが目立つのではなく、チェンバースもいればレッド・ガーランドフィリージョーもいるから、悪くなるはずがなく名手たちの競演が聞ける。ファストもミドルもスローも軽妙にスウィングし、これぞコンボジャズという演奏が聴ける。ただひたすらにクールな音。
全体にはミドルテンポがメインでじっくり曲とアドリブを聞かせる曲が多い中、マイルスコルトレーンがまさしく絡み合うようにブロウする2や熱っぽさを感じる9、7が映えるだろうか。刀で切り込むように存在感を放つマイルスのプレイがやはり鮮烈でどの曲においても強力だ。未だなお色褪せない名作。
聴いた日:01月01日 アーティスト:Miles Davis
Hank Mobley QuintetHank Mobley Quintet
・57年録音盤。面子がほぼジャズメッセンジャーズという布陣の作品。全曲モブレーのオリジナルとあって、熱気が渦巻く、というよりはリラックスした雰囲気で大らかにブロウするハードバップといった印象。タグ・ワトキンスのベースランニングに導かれて、カラッとしたプレイがスウィングする。
響いてくる音から感じられるイメージはとても開放感のあるものだ。変に密室的な雰囲気はなく、野外や街中でサックスの音が伸びやかに鳴り響いてくるような騒がしくも朗らかな陽気さを感じられるのはモブレーならではのものだろう。目を引く派手さはないが、じっくりと楽しめる一枚。
聴いた日:01月02日 アーティスト:Hank Mobley
Scene ChangesScene Changes
・58年録音盤。ジャズ史上に燦然と輝くジャズピアノの名作にしてバド・パウエルの代表作の一つ。彼の代名詞といっていい1の鮮烈な印象はいまだ多くの者を惹きつける引力を持っているが以降の曲のどこまでもダークでブルージーなメロディをイメージの赴くままに流麗に奏でる様には思わず溜め息が出る
代表曲の1にしても氷山の一角に過ぎず、時に縦横無尽に、時にリリカルに美しく、奏でられるピアノの旋律一つ一つが天才の煌めきのようにすら感じられる。演奏に合わせて、ふと聞こえてくるバドの鼻歌や唸り声などは非常に興が乗っている雰囲気も伺え、実に楽しげだ。
ライナーノーツによるとこの時期のバドは好不調の波が激しく、この盤の録音の後、翌59年にはパリへと渡仏、64年に帰国した後、亡くなるまで変わらなかったようだが、そういう点でも絶好調の姿を記録した貴重な一枚でもある。余談だが中学の頃、聞いてジャズにのめり込んだ思い出深い作品でもある。
聴いた日:01月03日 アーティスト:Bud Powell
Cool StruttinCool Struttin
・58年録音盤。ブルーノートの代表的なジャケットをひとつ選べと言われると必ず選ばれるだろう作品。ただジャケットのキャッチーなスタイリッシュさとは裏腹に内容は比較的玄人好みの音だと思う。なお日本ではとても人気の高い盤であるが、アメリカ本国ではさして評価が高いわけではない。
ミッドなゆったりとしたテンポで滋味溢れる味わい深い演奏でぐっと来るものはあるだが、音の質感は非常にカラッとしてあっさりとしたテイスト。ジャズの演奏としては濃淡の淡さを押し出したものなので、熱気というよりはクールな印象が強く、洒脱さとアーバンな趣が感じられる。
淡麗な味口といえばいいだろうか。絵にしてみれば、山水画のような侘びた味わい。非常にクセがない、というよりこのクセのなさが特徴なのでジャズの色合いを楽しみたい場合は他の盤を推したい。聞き慣れるとこのスムースな演奏も非常に楽しい。旨味を感じるには時間を要する一枚だろう。
聴いた日:01月04日 アーティスト:Sonny Clark
Introducing Johnny GriffinIntroducing Johnny Griffin
・56年録音盤。シカゴ出身のサックス奏者。本作がBNデビュー盤。冒頭の曲から、パワフルで野太いサックスの音が炸裂する強力な一枚。とにかく力いっぱいにブロウされるサックスの迫力に圧倒され、一気に引き込まれてしまう。その豪快なまでの存在感は強烈な印象を与えてくれる。
豪快といっても、ミディアムな曲でも情感たっぷりに吹いていて、とにかくそのサックスから響いてくる豊かな音が非常に心地良い。もちろん脇を固めるマックス・ローチウィントン・ケリーも好演。テナーサックスの魅力を知りたいのであれば格好の一枚。なによりメンバーの楽しそうな雰囲気が伝ってくる
聴いた日:01月05日 アーティスト:Johnny Griffin
Into SomethinInto Somethin
・64年録音盤。オルガンコルトレーンと呼ばれたジャズオルガン奏者のアルバム。ジャズオルガンというとジミー・スミスに代表されるようなファンキーでホットなものが想像されるが、この盤は直感型というよりは思索型のクールなサウンドが鳴り響く。流麗でスモーキーなオルガンの音が気持ち良い。
アドリヴよりはアンサンブル重視がされており、グラント・グリーンやサム・リヴァース、エルヴィン・ジョーンズといった60年代ジャズ新世代の面々と共に新風を吹き込んでいる。オルガンの醸し出すマイルドさとクールな演奏が興味深い一枚。ジャズオルガンの暑苦しさが苦手な人にもオススメかと。
聴いた日:01月06日 アーティスト:Larry Young
Green StreetGreen Street
・61年録音盤。ギター、ベース、ドラムのトリオというジャズにしては少し珍しい編成で録音された一枚(ギタートリオだとベースでなくオルガンが入ることが多い)。ただこの編成によって、グラント・グリーンの弾くシングルトーンの響きが際立って聞こえてくるのがこの盤の最大の特徴だろう。
ギターの単音が豊かに響き、演奏が深く沈んでいくのがとても味わい深い。けしてスピーディな演奏ではないが悠然と流れてくる旋律の芳醇な雰囲気は替え難いものがある。ジャズギタリストならではのジャズの魅力がたっぷりと詰まった良盤。なにか一杯飲みながら、ゆっくりと落ち着きながら聞きたい。
聴いた日:01月07日 アーティスト:Grant Green
Never Too MuchNever Too Much
81年発表1st。スタジオミュージシャンと名を馳せたヴォーカリストのデビュー盤。全曲に渡り、フュージョン界の名ベーシストであるマーカス・ミラーが参加。この時代ならではのエレガントなアーバンソウルが聴ける。ブラックコンテンポラリー前夜のソウル/R&Bの瑞々しくもフレッシュな良作。
全体にフュージョンライクなポップな演奏なので黒っぽさはあまりなく、同時代のワム!やらマイケル・ジャクソン辺りのダンサブルな要素を兼ね備えたポップミュージックとして聞ける。メロウなバラードも丁寧に歌い上げる実力の高さも流石といった所。全7曲ながらも聴き応えのある一枚だ。
聴いた日:01月09日 アーティスト:Luther Vandross
Volume 2Volume 2
・69年発表2nd。B&Voのケヴィン・エアーズが脱退し、代わりにヒュー・ホッパーが加入。黄金期のコアになるメンバーが出揃った作品。全17曲ではあるが1分未満から2分強(最短は9秒)の曲が大半を占めており、収録時間は33分半弱。当時のレコードのA面B面で二つの組曲構成になっている
それぞれ、1〜10と11〜17が組曲形式になっている。バンドの代名詞となるファズオルガンの音が縦横無尽に鳴り響き、サイケデリックから一歩踏み出して、ミステリアスかつジャジーな前衛性を帯びた、カンタベリーとしか言いようのない複雑怪奇な演奏が疾走感とともに一気に駆け抜けていく。
以降の作品に見られるような長尺曲の姿がなく、組曲形式で構成されている為か、ロック的な勢いとポップな感覚があまり損なわれてなく、サイケとジャズがロックと完全に混ざり切る直前の半熟なサウンドが非常に心地いい。独特なカンタベリーサウンドの魅力が強烈に伝わる一作。3rdより明快なのも良い
聴いた日:01月10日 アーティスト:Soft Machine
FourthFourth
・71年発表4th。大作だった前作から一転してコンパクトな内容になった一枚。とはいえ、ロバート・ワイアットのヴォーカル曲がなくなり、全曲インストになった事でよりジャズ色が濃くなった。一方では前衛性が一歩後退し、サイケを抜け出して洗練の兆しが垣間見えるのも、変遷として興味深い
ヒッピーカルチャーから発展したサイケデリックな趣は本盤になるとかなり払拭されており、ギターレスのジャズコンボ的なメンバー構成でロックを奏でるという、バンドの特異さも相俟って、シーンのポジショニングを確固たるものにしたといっても過言ではない。ジャズでありロックでもある、不思議な音楽。
なお本作でロバート・ワイアットが脱退。バンドはより硬質なジャズ色を強めていくが、この盤はそういった分岐点の作品でもある。内容からすれば、すでに舵を切ってはいるのだが、それでもわずかに残る猥雑さに人懐っこさと温もりを感じてしまう。過渡期の作品にして新旧の音楽性が入り混じる一作だ。
聴いた日:01月11日 アーティスト:Soft Machine
55
・72年発表5th。メンバー構成的にやや流動的な作品ではあるが、サイケの享楽感が完全に払拭されて、ひたすらにクールなジャズロックが展開される。マイク・ラトリッジが得意としていたファズオルガンの比重が少なくなり、エレピを導入しだしたのも、そういったサウンドの変化に繋がっている。
エレピのクールな感触が(カンタベリー)バンド特有のミステリアスさにシリアスな趣を加えていて、非常に硬質な緊張感を伴った音になったのとドラム(本作では前半をフィル・ハワード、後半がのちに正式加入するジョン・マーシャル)が交代した事でリズムがよりロックに傾き、音はクロスオーバー化した
72年といえばフュージョン前夜、クロスオーバーの風が吹き荒れている時期であるのでこの変化は当然といえば当然だが、バンド初期の音は既に影形も無くなってしまっている。なおエルトン・ディーンも本作を最後に脱退。元よりメンバーの交代劇は激しいが以降もそれは続く事になる。存在感は薄いが佳作
聴いた日:01月11日 アーティスト:ソフト・マシーン
SixSix
・73年発表6th。後期サウンドの中心人物で元ニュークリアスのカール・ジェンキンスが加入した一枚。1〜11までが72年のライヴ音源(新曲)とスタジオ録音の新曲(12以降)という変則的な構成。良くも悪くもカール・ジェンキンス存在感を知らしめ、以降の作品のイニシアチヴを強めていく。
前作までは非常にクロスオーバー的な硬質な音だったのが、本作では一転して、ジェンキンズの短いリフを繰り返して、独特の浮遊感を音で敷き詰めていくミニマルな演奏が主体となっており、スピリチュアルかつコズミックな響きにバンド独特の翳りが差し込むといったサウンドに仕上がっている。
そういう点では本盤辺りが非常にプログレらしくあった時期ともいえるが、アプローチがスピリチュアルな陶酔感を押し出したものである為、エクスペリメンタル電子音楽の世界に卑近しており、この盤のアブストラクトな印象を決定付けている。特に後半のスタジオ録音でその様相は一層強まっている。
以上のような点から、バンドは一大転機を迎えた作品なのであるが一方で新たに取り入れた要素によって、方向性が定まらない内容になってしまった部分も否めない。らしさはあるのだが、決定打に欠ける。のちのテクノ的なアプローチは興味深いのだがジャズロックの作品としては疑問符がつく惜しい一作だ。
なお、この盤を最後にヒュー・ホッパーが脱退。オリジナルメンバーはマイク・ラトリッジのみに。そのラトリッジもジェンキンスの加入により存在感を急速に失っていく事になる。この盤もあの独特のファズオルガンの音があまり聞こえてこない事からもメンバー間の立ち位置が窺えてしまう作品でもある
聴いた日:01月12日 アーティスト:Soft Machine
SevenSeven
・73年発表7th。前作からのミニマルなフレーズを取り入れながら、より洗練されたフュージョンサウンドを標榜した作品。本作からシンセサイザーが導入され、音の質感はよりスペーシーな趣へ。元々、陰鬱さが特徴としてあるバンドなのでシンセによる空間の広がり方は宇宙的な印象を強く持つ。
とはいえ、本作はマイク・ラトリッジが最後と言わんばかりにファズオルガンを鳴り響かせ、気を吐いている。ジェンキンズの抽象的かつ浮遊感のあるプレイと好対照でいいアクセントになっていると思うが、バンドの主体がすでに逆転してしまってるのはやはり寂しくはある。
初期はあれほどにまでユーモラスでハッピーなサイケサウンドを出していたバンドが今作に至るとシャープでタイトなリズムとSFチックな浮遊感を際立たせながら、かなり硬質なフュージョンになっているのはメンバー変遷の激しさによる、音楽性の変遷も物語っているように思う。拘らずに聞けば良作かと。
聴いた日:01月12日 アーティスト:Soft Machine
BundlesBundles
・75年発表8th。レーベルを移籍し、流浪のギタリストアラン・ホールズワースを加えての一作。バンド初期以来のギターの加入によって、一気にロック色が高まったと同時に前作までのスペーシーな趣は一掃され、鬱蒼とした緑に覆われる英国の田園風景が広がるジャズロックになった。
とにもかくにも本作限りの参加となったホールズワースのギターの存在感が強く、彼のセッションワークスの代表作ともされるプレイがここでは聞ける反面、全盛期から今作に至るまで管楽器をメインにしていたバンドの面影はもはや失われてしまっている。そういう点では劇薬を投下してるとも言える。
バンド構成がロックバンド的になったことで、かっちりとした曲構成に表情が豊かになった向きはもちろんあるのだが、カンタベリーロック独特の質感もやはりこの盤では希薄となっており、テクニカルな英国ジャズロックという印象の方が強く感じられてしまう。もちろんそういう面での完成度は非常に高い。
これをソフト・マシーンのアルバムだと考えるとかなりイレギュラーな作品だと思う。出来が抜きん出ているために本作を最高傑作と見るむきもあるが、バンドの特徴を考えてしまうと、どうしても「らしくない」作品という結論に行き着いてしまう。そういう点ではなかなか評価の難しい作品だ。
そして、このアルバムを最後にオリジナルメンバー最後の一人、マイク・ラトリッジも脱退する。こうして見ていくと図らずも「終わりの始まり」を告げる作品のようにも受け取れる。そんなアルバムのタイトルが「収束」と付いているのはなんとも皮肉ではあると思う。バンド末期を告げる傑作。
聴いた日:01月12日 アーティスト:Soft Machine
SoftsSofts
・76年発表9th。ダリル・ウェイズ・ウルフなどで活躍したギタリスト、ジョン・エサリッジを迎えた一作。ホールズワースとは異なるタイプでどちらかといえばアル・ディ・メオラのような高速フルピッキングで掻き鳴らす早弾きを繰り出す。この為、さらにテクニカルなハードフュージョンに傾いた音に
音の質感も、前作の良くも悪くも田舎臭い雰囲気から、都会的な硬質な雰囲気に。音の情緒もへったくれもなく、ひたすらに技巧的な趣はかとなくアメリカンな感じも。とはいえ、メンバーにアメリカ人はいないので機能重視な合理主義な部分がそういった印象を与えているだけかも知れないが。
なお本作はジェンキンスとは別にホーン奏者のアラン・ウェイクマン(あのリック・ウェイクマンの従兄弟)が参加しており、彼のサックスがかとなく黒っぽいファンキーさを補助しているのも、そういった印象の要因かもしれない。どちらにせよ英国らしい雰囲気すらあまり感じられないのが特徴ではある。
無論、それが完全に失われているわけではないので、風味は残っているのだが、同時代のアメリカでのテクニカルフュージョンとの差異はあまりない。聞き応えはあるがインパクトがあるかといわれると正直、疑問な所。出来は悪くないが方向性を失ってしまって、特色が見出しづらい一枚か。
ソフト・マシーンと冠したバンドの作品からすれば、あまり芳しい評価ではないが、単純にアルバムの出来は良作だろう。単一のバンド名を掲げながら、内情はもはや別のバンドである、というのはこのバンドならではの特色ではあるが、それが弱みに出てしまったのが本作と言えるだろう。
聴いた日:01月13日 アーティスト:Soft Machine
Alive & Well Recorded in ParisAlive & Well Recorded in Paris
・78年発表ライヴ盤(10th?)。77年に行われたパリでのライヴ音源を元にスタジオでミックスと一部オーバーダヴ録音した作品。一応全曲新録曲なので、スタジオ録音盤と同格に扱ってもいいかもしれない。なお10年リマスター盤で同じライヴのマテリアルを増補した二枚組となっている。
さて内容としては前作のスタジオ盤にいたベースとサックスがそれぞれ脱退して、新たなベースとヴァイオリンが入った構成になったのは新基軸といえるが基本的に路線は前作を踏襲したテクニカルなフュージョン。ライヴらしい熱気を感じさせ、主要メンバーの呼吸が小慣れた滑り出しのいい演奏が聴ける。
とはいえ、ここで聞けるのはアメリカのシーンに接近したフュージョンサウンドで同時期のグループの影がちらつく。アルバムの構成などは従来の趣を意識したもののように思えるが、繰り広げられる音との親和性は正直、ちぐはぐな印象が拭えないか。要所要所で光るプレイはあるが細切れな印象。
この盤で一番インパクトが強いのが10。しかしこの曲はシンセサイザーシーケンスを利用したミュンヘンディスコの影響の強いテクノサウンドでもはやジャズロックフュージョンですらない。ジェンキンスの後年のキャリアを考えれば、ある程度納得の路線ではあるがバンドの路線からはイレギュラーだ。
裏を返せば、超絶技巧フュージョンをいくら鳴り響かせようとも、一発のテクノでそれが吹き飛んでしまう光景がこの盤には現れている。そういう見方をすれば、この盤には「時代の終焉」がまざまざと広がっているのだ。ジャズロックひいてはプログレ斜陽を捉えた稀有な作品とも言えるだろう。
増補された内容については手を加えられた本編よりライヴの生々しさが出ているように感じられ、興味深くはある。もちろん同時代のバンドとして、高水準の演奏で聴き応えはあるがバンドの記名性を考えてしまうと、限りなく寂しさとその希薄さを感じてしまう一枚。聞く分には十分楽しめる良作だと思う。
聴いた日:01月15日 アーティスト:Soft Machine
Land of CockayneLand of Cockayne
・81年発表10th。ジェンキンズとジョン・マーシャル以外、メンバーが総取っ替えとなり、バンドの死に水を取った作品。ブックレットにはホールズワースがリードギターと明記されているが、彼が参加しているのは9のみ。内容もほぼジェンキンズのソロプロジェクト的なものとなっている。
とはいえ、当時の流行に対応した音にはなっており、いわゆるライトメロウなフュージョンで、バンド特有の複雑怪奇さやミステリアスな印象はどこにもない。シンセサイザーの音がジョー・ザウィヌルっぽくもあるが、ストリングスシーケンサーを使ったアプローチなどは独特なものを感じる。
ジャケットのイメージも相俟ってかなり抜けのいい音ではあるのだが、陽気さや爽快感があるというよりは、透明感や荘厳さがかとなく押し出された音で、そこにジェンキンズの持つ浮遊感が重なっているように感じる。そういう点では空間的な広がりを持つサウンドでもあるだろう。
以上のような点からもわかるように、ソフト・マシーンというバンドそのものは形骸化し、死に水を取ったジェンキンズの音楽性が花開いた形になっており、「終わりと始まり」が記録されているのは興味深いところ。バンド末期のマンネリ感が強かったテクニカル路線より内容が充実した一枚だ。
なおカール・ジェンキンスはこの後、80年代は広告音楽で活躍し、この盤からおよそ15年余り後、ニューエイジミュージックユニット、アディエマスコンポーザーとして商業的成功を得ることになる。本作はそういった彼の音楽性の萌芽が見える作品でもある。多角的に再評価されるべき一枚だと思う。
聴いた日:01月16日 アーティスト:Soft Machine
Louder Than Bombs (Remastered)Louder Than Bombs (Remastered)
・87年発表編集盤。同日にリリースされた「The World Won't Listen」とは別にアメリカ市場向けに編集された作品。この盤ならではのバージョン違いなどの細かい違いはあるが、大まかな所は被っているので注意。こちらも当時を網羅したものではある。
が、「The World Won't Listen」と比べると、収録構成のツメがやや甘く、新旧の楽曲がごっちゃになっているために編集盤としては弱く、インパクトは薄い。単に曲を無配慮に配置しているだけなので編集盤ならではの魅力に欠ける。コレクターズアイテムという評価が妥当か。
聴いた日:01月17日 アーティスト:Smiths
Rank (Remastered)Rank (Remastered)
・88年発表ライヴ盤。最後の公式音源。86年ごろのライヴが収録されている。スタジオアルバムで聞けるセンシティヴな痛切さはあまり感じられず、反面、肉感的なマッシヴさや強靭さが出ており、その荒々しさには少々面を食らう。彼らもまたパンクの申し子であることを考えれば、この質感も納得はする
ただ荒々しさがある反面、バンドの状態もなんとなしに浮き彫りになっていて、ヤケクソ感が漂っているのも拭いきれないか。モリッシーコブシを上げていきり立った歌唱をしているのもどことなく失われていく「若さ」への焦燥感があったのかもしれない。「青春」が燃え尽きる最後の一瞬を捉えた作品。
聴いた日:01月18日 アーティスト:Smiths
Reggatta De Blanc (Dig)Reggatta De Blanc (Dig)
・79年発表2nd。デビューからさらに飛躍した一枚。この盤辺りから最終作まで続く、気だるくブルージーかつジャジーなニュアンスに前作からのレゲエやバンドの根底に流れるスノッブなインテリジェンスによるクールネスがシャープに響いてくる。随所にペダンチックな趣が感じられる。
そういう点ではパンクムーブメントに冷や水ぶっ掛けているようなシニカルさはやはり独特なものを感じるし、そこが良くも悪くも特色なのだろう。パンクの波に乗っかって似非パンクでアンチパンクをやる姿勢はポストパンクというよりNWのような気がするし、それはデビュー時から確信犯的に貫いてる。
盤全体の雰囲気も「夜」を感じさせ孤独感や寂寥感を滲ませたものとなっており、どことなくアダルティーなものを押し出しているようにも。そう思うと計算づくなのではないかと思う。そしてそれが成功しているのも見逃せない。勢いそのままに「らしさ」を加速させた作品だろう。クリアな音像も皮肉っぽい
聴いた日:01月19日 アーティスト:Police
SynchronicitySynchronicity
・83年発表5th。事実上のバンド最終作(解散は宣言されてない為)。同時にこれがバンドの最高到達点という印象もある。ロックにしてロックに非ず。というよりロックを徹底的に漂白した先にエスノポップと化し、なおかつ土着性を感じさせない無国籍感をより強調させてきた。
中東的なメロディや第三世界のリズムなどを取り入れながら、同時に西洋のメロディやジャズなどをも織り交ぜて、全世界の音楽を知的でクールなサウンドで総括する趣は、さながらサイバーパンク的なテクスチャーを伴っている。反面、ポップな響きは一つまみ程度。音は爬虫類の様に低温だ。
各音楽要素の取り上げ方は極めてデジタルで機械的なものを感じてしまうが、人が演奏する体温がある事がこの盤の雰囲気を独特にしている。面白いのは大ヒット曲7だろう。極限にまで音を削ぎ落としたゴスペルっぽい旋律で歌われる偏執狂の曲という諧謔に捩れたポップ感覚を味わう。80sを代表する名盤
聴いた日:01月19日 アーティスト:Police
Help (Dig)Help (Dig)
・65年発表5th。二度目の(同名)主演映画のサウンドトラックとしてリリースされた作品。と、同時にアイドルビートルズ」として最後の姿が記録されたアルバムでもある。恐らくこの盤までをバンド初期と目する見方が大勢なはずだ。事実、アイドルである事の疲弊感と音楽性の高まりが入り混じる。
というより、ヒットソングとアルバム収録曲にバンドの抱える問題が見え隠れしているように思う。この当時もはや押しも押されぬ世界的アイドルであり、曲を出せば売れることが必然というような重圧がある一方で、音楽性を追及したいバンド、ひいてはレノン=マッカートニーの意識が対立しあっている。
それがあからさまに出たのが、1でもあるが、それ以上にアルバム収録曲に目を向けると、ジョンもポールもそれぞれの個性が粒立っていき、ここにジョージまで加わって、音楽性の幅が広がり各人の個性が際立っていっているのだ。本作はそういう「成長」がアイドルでい続ける事への足枷と化している。
この盤が代表曲を3曲も収録しているにもかかわらず一枚のアルバムとして印象が薄いのも、抱えていた問題点が原因で全体の統一感が出せなかった為だろうと思う。代表曲が浮いてしまって、収録されてない方がまとまりが出てたのかもしれないと感じるほど悩ましい出来であるのは確かだ。
もちろんサントラという側面では、別段アルバムとしてまとまっていなくても問題はないし、本作の収録曲は粒揃いなので聞き応えのある作品に仕上がっている。既存のイメージと音楽的成長が拮抗しあった過渡期の作品だろう。内容は充実してるが聞き返す頻度は低いという、不思議な作品でもある。
聴いた日:01月21日 アーティスト:Beatles
Black Gives Way to BlueBlack Gives Way to Blue
09年発表4th。カリスマ的だったVo、レイン・ステイリーの死を乗り越えての14年ぶりの新作。一時期は解散も危ぶまれてたバンドには新メンバーが加入し、新たなる一歩を踏み出した。彼ら特有の陰鬱なグルーヴを纏ったダークなメロディは健在で、復活の狼煙にはこの上ない作品となった。
元々、バンドの中心人物ジェリー・カントレルもVoを取れるので、レイン不在の違和感があまりないのもその点が大きな要因だ。レインが背負っていたであろう閉塞感や息の詰まる切迫感、沈痛さがない為か、ダークながら一筋の光明とサウンドの開放感が感じられるのが最大の違いだと思う。
荒涼とした大地に響く地鳴り、のような趣でサウンドが開けた印象を受ける一方で、ダークでへヴィなグルーヴも強靭さを増し、14年分の分厚さを感じる。そこに混じる一摘みのポップさがいい塩梅だ。派手さはないがスワンプな趣もある無骨なへヴィロック。死を乗り越えて眩いばかりの生を感じる復活作だ
聴いた日:01月23日 アーティスト:Alice in Chains
What is ConstantWhat is Constant
15年発表2nd。新進気鋭のジャパニーズプログレの新作。40分余(4つのパートに分かれている)の組曲を含む全6曲。前作より表現の幅が広がり、シンフォニックな面やトラッドやカントリー的なヴァイオリンの響きに強靭になったアンサンブルが絡み合う点に成長を感じる。
平均年齢が若いせいもあるが、楽曲構成の妙より若さによる演奏の勢いも強く感じられ、それが盤全体の鮮烈さにも繋がっている。サウンドの雄大さを推し進めながらも、エネルギッシュなプレイによって、熱気を感じられる意欲作に仕上がった。今後も勢いを衰えさせることなく邁進してほしいと思える傑作。
聴いた日:01月24日 アーティスト:ptf
Magic HotelMagic Hotel
02年発表2nd。前作以上にアーシーな雰囲気が濃くなり、タイトルの通り、サイケでマジカルな音がソウルフルに鳴り響く作品。英国らしい湿り気があったバンドだが今作は比較的カラッとした陽気さを目指しているようなのと、よりロック色を強めており、音としては骨太になった印象を受ける。
反面、前作のポップで軽妙な感じは薄らいだ感があり、メロディーの肌触りは分厚く重くなったか。どちらが好きかは好みの分かれる所ではあるが、グッドメロディーな部分は健在で朗らかな陽射しの中で紅茶でも飲みながら浸りたい気分になる。キレのいい前作からどっしりと構えた安定感のある良作。
聴いた日:01月25日 アーティスト:Toploader
onon
99年発表1st。宇多田ヒカルの登場によるR&Bブームの渦中にリリースされた初作。当時売り出し中のプロデューサーである大沢伸一朝本浩文を起用して、R&Bを始めヒップホップやアシッドジャズなども取り込んだクラブ仕様の音。当時らしいオフビートな躍動感もクラブサウンドに拍車をかける
汗臭くないファンキーさ、あるいはサイバーなグルーヴというか、オーガニックではないサイボーグソウルミュージックと言う趣が強く、これはこれで快楽的で悪くないし、即効性のあるキラーチューンはないが中身はギュッと詰まった内容で、風化した印象もなく現代にも耐えうる良盤だろう。
聴いた日:01月25日 アーティスト:Sugar Soul,Sasaki Kumi,U-SKE ASADA,RYO the SKYWALKER
Afro-Cuban (Reis)Afro-Cuban (Reis)
・55年録音盤。3or4ホーン編成+パーカッション&コンガで吹き込まれたラテンフレーバー濃厚な、味わい深い一枚。サヴタージなメロディに導かれて、ラテンのリズムに自然と踊り出したくなる。元々1〜4が収録された10インチ盤に5〜7の3曲を増補したものが本作の構成となっている。
この為、前半と後半で趣がかなり違うのがよく分かる。前半4曲がラテン色の強いファンキーなサウンドに対し後半3曲はいわゆるジャズらしいブルージーな演奏。どちらも3ホーン、ないし4ホーンの編成なので重厚なホーンのアンサンブルが聞き応え十分。が、より魅力的なのは前半4曲だろうか。
ケニー・ドーハムトランペットのフレーズは穏やかで端正な向きもあるので、そういった柔らかな音色にはラテンのキレのいいリズムが上手く映えているのかもしれない。それを抜きにしても、トランペットサックスの絡みが楽しい作品だ。脇もホレス・シルヴァーアート・ブレイキーもいて安定感抜群。
聴いた日:01月28日 アーティスト:Kenny Dorham
ジャミロクワイジャミロクワイ
・93年発表1st。ジャズファンク/アシッドジャズの代表格の処女作。70sニューソウルの多大な影響とコズミックフュージョンサウンドが混ざり合ったサウンドで、当時のUKクラブシーンを席巻した。そのオーガニックな音はアシッドハウスなどテクノ勢とは一線を画していた。
今聞くとフロントマンのジェイ・ケイの歌より、スチュワート・ゼンダーのベースとリズムに特化した音でそれらがメインに鳴り響く印象を受ける。この時点ではジェイ・ケイもグループの一員であり、後年ほど存在感は強くない為だろうか。グルーヴ重視のインスト色はクラブ仕様という向きも感じる。
グループの音を打ち出す勢いのまま、一塊の音として「らしさ」を提示した一枚だろうと思う。それだけにアルバムのまとまりも非常に良く、代名詞となったディジュリドゥのインパクトも相俟って、きわめて鮮烈なデビューとなった。楽曲のキャッチーさはまだ発展途上だが、丁寧に練られた良盤に違いない。
聴いた日:01月31日 アーティスト:ジャミロクワイ
Return of the Space CowboyReturn of the Space Cowboy
・94年発表2nd。よりバンドサウンドが深化しファンクソウル色が濃くなった作品。同時にスペーシーな趣も強くなり、ブラックミュージックの精神性と相俟って、非常にスピリチュアルかつ深遠な雰囲気が濃密である。あっさりしつつも粘っこいビートとリズムの拘りと供にメロディもかなり黒くなった
スティーヴィー・ワンダーの奏でるサウンドにジャジーなフレーヴァーとファンクの躍動感がスタイリッシュに絡まると言った方がわかり易いかもしれない。完全に黒くならず、適度にノド越しが良いのは、クラブというよりはディスコミュージックに通じるか。黒人音楽をポップスに突き詰めた結果ゆえの良作
聴いた日:01月31日 アーティスト:Jamiroquai

わたしの音楽メーター
音楽メーター

2017-01-01

音楽鑑賞履歴(2016年12月)

| 14:45

月一恒例の音楽鑑賞履歴。音楽メーターの感想を記事にしてまとめてます。

18枚。

新年明けましておめでとうございます。今年も当ブログをよろしくお願いいたします。

久々に20枚割れしてしまいましたが、まあその日の気分なので。

昨年は本当にいろいろありましたが、今年はどうなっていくのかどうか。

そういった期待と不安もありつつ、音楽感想はいつも通りの進行でいきたいと思います。

当面の目標は一昨年の分を出来るだけ早く切り崩して、去年購入分にたどり着きたいですね。

もう残ってる枚数はあんまり考えずに、どんどん聞いていくつもりです。

では、以下から感想です。

12月の音楽メーター
聴いた音楽の枚数:18枚
聴いた時間:643分

EclecticEclectic
02年発表4th。6年ぶりの新作にして16年時点で最後のボーカル収録のスタジオ作。モータウンと契約し、NYで録音された作品で当時のR&Bサウンドやスティーリー・ダンのようなクールなAORを髣髴とさせる音作りが非常に顕著。すでに老成してる感もあるがストイックに削ぎ落とされた趣。
サウンドの質感が変わりはしているが、行っていることはソロデビューからの延長線上にあると思う。前段階で99年にマーヴィン・ゲイトリビュートに参加していることからも明らかで、ニューソウル的な問題意識を初めてシリアスに押し出した盤と考えることはできそうだ。愛の普遍性についてがメインだ
それまでの音に比べても、隙間が多く、重低音の響き渡る作り。その引用先は透けて見えてくるが、そのこと自体はあまり重要ではなく、やりたい事を突き詰めた結果、選び取った音のようにも感じられるし、時代に圧されて成立した音のようにも思う。そして、彼のルーツに厳然と日本が存在しているという事
どんなに遠く離れた、異国の地で音楽を作ろうとも流れる血は変えられず、その抗い難さをこの盤を聞いて感じる。どこまでもソウルになろうとする一方で日本人であるということを強烈に見せ付けられる、セクシュアルな作品だろう。派手さも華やかさも必要ない。黒の濃淡だけを感じる事を提示する一作だ。
聴いた日:12月01日 アーティスト:小沢健二
「Let Me Hear」 (初回生産限定)「Let Me Hear」 (初回生産限定)
15年発表3rdSG。アニメ寄生獣〜セイの格率〜」の主題歌を含む全3曲入り。ラウドに振った曲とエレクトロに振った曲、その混合型という組み合わせ。特に表題曲のキラーチューン度は非常に高く、バンドの成長と高圧縮なサウンドが一体になって切れ味がかなり鋭い、強力な1曲となっている。
ひたすらにカオシックなサウンドが渦巻く中で冷静な感情でラウドに取り纏めていく一方で、1曲の中に詰め込まれたメロディのカロリーも非常に高い。1曲の中で暴走して、静謐になり、また爆発する。秒単位でめまぐるしく変化を遂げ、叩き付けられる。が、それだけに止まらない足取りの軽さが頼もしい。
どこまで成長するのか、どこまでたどり着くのかが分からない感覚がこのバンドの非常に面白いところだと思う。このシングルで一つ頂点を踏破した感はあるがこれからもまだまだ楽しませてくれそうな期待を持たせてくれる痛快なシングルだ。
聴いた日:12月02日 アーティスト:and Loathing in Las Vegas Fear
BABYMETAL(通常盤)BABYMETAL(通常盤)
14年発表1st。女性アイドル×メタルという有りそうでなかったコンセプトを打ち出して、瞬く間に世界に飛び立っていったアイドルユニットの初作。恐らくこれが出た時点でまさかウェンブリーでライヴを行うことなんて、関係者も夢にも思わなかったんじゃなかろうか。音もメタル幕の内といった趣。
一概にメタルといっても、カテゴリは様々あって独立したジャンルになっているがこの盤では出来得る限りの主なメタルジャンルを横断した作りになっている上、そのどれもがメタルと言える、本気の演奏で高水準を保っている事からもこの盤の強力さは窺い知れる。一方でアイドルらしさも堅持している。
この盤の見事なところのアイドルサイドとメタルサイドのバランスが良い曲がものすごくキャッチーなものとなっていて、メタルでありながらアイドルソングというナンセンスな感覚を成立させてしまっている点に尽きる。2や3はそれの証明として、十二分すぎるほどの魅力を放っている代表曲だ。
反面、まだアイドルサイドに引き摺られている部分も目立ち、ユニットの余白、可能性はまだ潜んでいるようにも見える。ただこの盤自体はそういった化学反応による爆発力が尋常ではないほど炸裂した盤であり、存在を叩きつけるという点では最上級の一発であり衝撃度はとても高い。
そう見ていくとキーワードは「無意味さ」のように思う。アイドルメタルをくっつけるという「無意味さ」を成立させてしまうのは非常に「日本らしい」感覚でその辺りはYMOにも感じられるもののように思う。無邪気に両極端の要素を掛け合わせられるのはそこに「意味がない」からではないかと。
意味がないことに価値を見出して、面白がれる感覚が海外の人々にとっては新鮮に見られたのかもしれないがその辺りにこそ「ポップミュージック」の本質があるのかもしれないなどと、考えさせられしまう一枚だろうか。粗もあるが勢いが凄いので名盤たりうる雰囲気をびしばし感じる。
聴いた日:12月05日 アーティスト:BABYMETAL
CC
勢いとキレで突き進む性急な感じとポストパンク的な硬質な音には不思議と「光」をイメージさせるのはメンバーの迷いのなさと爽やかさゆえだろうか。それとも青春のまぶしい方しか見えていないような、無自覚な無敵さが滲み出ているせいだろうか。ともかくそういった鮮烈さが目立つ、痛快な一作だ。
06年1st。メジャーデビュー盤。同時にインディーズ時代からのサウンドの完成形だと思う。疾走感に満ちながらも、独特のコード感覚で織り成されるギターサウンドによって切り開かれていく青臭さと若さがなによりの肝だろうか。まだ何色にも染まらない雰囲気が非常にまぶしく感じられる。
聴いた日:12月07日 アーティスト:Base Ball Bear
Rhythm of LifeRhythm of Life
77年発表唯一作。ロイ・エアーズ・ユビキティKeyが送り出したソロ作。脇はユビキティでの盟友で固められ、7と9以外はナラダ・マイケル・ウォルデンが叩いている。ロイ・エアーズ直系のコズミックジャズ・ファンクが鳴り響く作りでエレピやアープシンセの音がその印象を深めている。
サウンド的には高揚感が希薄で、クールネスが全体を支配する。ダンサブルではあるがアーバンな雰囲気やスピリチュアルな向きが強く、宇宙の深い闇に漂うような感覚の淡いグルーヴに心地よくなる。あっさりとしたメロウさが特徴的な一枚だ。スタイリッシュかつスペーシーな音を味わいたければお勧め。
聴いた日:12月08日 アーティスト:James Mason
LIVE AT BUDOKAN~RED NIGHT~(初回生産盤)LIVE AT BUDOKAN~RED NIGHT~(初回生産盤)
15年発表ライヴ盤。14年3月の武道館ライヴの模様を収録した作品。収録内容は1stと同一だが、既にスタジオ録音のものとはアレンジとニュアンスが異なっており、ライヴの臨場感と熱気共々楽しめるものになっている。と、同時にアイドルユニットらしい、コール&レスポンスがあるのがやはり特異か
面白いのはこのユニットは楽曲を「熟成」していくタイプであるという事だ。まずライヴありきのアイドルユニットであり、また神バンドと呼ばれるバックの演奏陣がアイドルの成長と共にサウンドをより鋭利にしていく様がこの盤からも感じ取れるのが興味深い。1st収録曲が生き物のように変わっていく。
実際、ライヴでありショーでもあるので、メタル×アイドルというコンセプトの旨みが凝縮されていて、パッケージより「演出」を利かせやすいのが功を奏している気がする。そういう点では1stよりもより研ぎ澄まされたパフォーマンスが聞けるし、彼女達のライヴを体感するという点でも良盤ではないかと
聴いた日:12月08日 アーティスト:BABYMETAL
ケンソー(ファースト)ケンソー(ファースト)
80年発表1st。当時400枚しかプレスされなかった原盤に76〜83年頃までの未発表曲とライヴ音源を増補した作品。高校から大学時代の音源ということも合って、今となっては若気の至りに他ならないトラックもあり微笑ましさも感じられるが、後の片鱗を感じさせる曲もあってなかなか侮れない出来
中心メンバーの清水義央作曲からは欧米のプログレ殻は感じられない、オリジナリティが見え隠れしており、水のように透き通る雰囲気のある音は日本固有のメロディらしさを感じ取れるなど興味深い一方で、清水作曲ではない曲の垢抜けなさもまた憎めない出来となっているのが面白くも感じられる。
もちろんそれらは、既存のプログレの影響を隠し切れないものだが、日本でプログレをやろうとする「若さ」ゆえの勢いに満ちている。さすがに5や6など、傍から見ても気恥ずかしくなるものもあるが、新たな挑戦をする若者の姿が窺い知れて、そういった所もここが「始まり」だったと感じさせる一枚か。
聴いた日:12月09日 アーティスト:ケンソー
ケンソーケンソー
・85年発表3rd。メジャーデビュー盤。前作から音はさらに洗練されて、ジャケットの絵のようにソフィスケイテッドされ、よりテクニカルフュージョンっぽくなった印象が強いが和のテイストを強く感じる神秘的なニュアンスが一線を画している。同時にそれまでの特色であるフルートを失った盤でもある
フルートが無くなった分、シンセサイザーを多用しているのもこの盤の都市的な響きを強くしているものと思われるが反面、サウンドは無機質な趣で郷愁を呼び起こすような情緒さはあまりない。出来の良さには何の疑いはないが、サウンドの強烈さは薄らいでしまった、悩ましい一枚。入門としては良作だろう
聴いた日:12月10日 アーティスト:KENSO
夢の丘夢の丘
・91年発表5th。バンドの過渡期だった前作を通過して、新体制でのフルアルバム第一作は地中海の穏やかな雰囲気と神秘的でミステリアスな印象の濃厚なサウンドとなった。全体にヨーロピアンな民俗音楽の趣で、楽器の響きもナチュラルなものへとシフトしており、より美的なニュアンスを強めている。
サウンドはかなり練り込まれている印象で、地中海のたおやかさとは裏腹にテクニカルなバンドの成熟が感じられ完成度は高い。しかし一方で、それまであった日本らしい、和風な叙情が見えなくしまっているのは、寂しいところではあるか。この盤の楽曲からは日本人らしい民族性は皆無だ。
日本人らしさは何かという議論は置くにしても、トラッドなどや欧州の民俗音楽らしさを志向した、という点では非常に完成度も高くプログレらしい一枚ではある。が、日本人バンドとしての独自性は希薄でどこか借り物という印象が付きまとう。もちろん演奏やアンサンブルにはらしさはあるのだが……。
聴いた日:12月11日 アーティスト:KENSO
エソプトロンエソプトロン
・99年発表6th。8年の潜伏期間を経て、送り出された作品は端的に「ロック回帰」。再生すると初手に聞こえてくるのは、ツェッペリンライクな重戦車サウンド。ロック的なダイナミズムを取り入れつつ、バンドの代名詞ある変拍子の嵐が織り交ぜてくるのは新機軸を感じさせる。
80年代から90年代初頭まで蔓延していた音の洗練からは真っ向から背を向けて、オルタナミュージックシーンと符合するかのように、積極的に粗野な質感を押し出すのは当時らしい時代性。実際、本作が以降の作品のベースになっているようでアジアンテイストも少し顔を出している。再出発の趣が強い一枚
聴いた日:12月12日 アーティスト:KENSO
球体の奏でる音楽球体の奏でる音楽
96年発表3rd。盟友であるスカパラのメンバーと編曲服部隆之を迎えて、製作された25分強のアルバム。ロックやR&Bといったポップミュージックを敬遠するかのように、ジャズボーカルやエキゾチカ的なメロディを中心に据えたものとなっており、華やかというよりは柔らかく優雅な雰囲気が漂う。
前作までの印象を考えると、激変とは言わないまでも細波漂う穏やかな雰囲気と草臥れた印象を感じるのは間違いがなく、いくつかの楽曲からも何かの終わりを告げているかのようにも受け取れる。短いながらも示唆に富んだ作品だろう。これ以後、5枚のシングルを発売し、長い沈黙に突入する事になる。
聴いた日:12月15日 アーティスト:小沢健二
Ecology Of Everyday Life 毎日の環境学Ecology Of Everyday Life 毎日の環境学
06年発表5th。16年現在スタジオ最新作。全曲インストかつ当時執筆していた小説「うさぎ!」とリンクした内容の作品。なおディスコグラフィーの中でも最長の収録時間となった。非常にコンテンポラリーかつモダンなサウンドでジャズをベースにトライバルな響きを鳴らせている。
環境的というか生態学的というか。自然と寄り添う形で人間の作り上げた醜悪なシステムを批判してる点は書いていた小説の余波もあって顕著だと思うが、そこを踏まえずただ楽曲として捉えるのであれば、出来は十二分するほどではなかろうか。穏やかでオーガニックな雰囲気に包まれたメロディは割と複雑だ
インスト曲としての聞き応えもかなりあるのはアンサンブルの妙と小沢健二というセンスの成せる業だろうか。ともあれ、全然ポップではないが、ジャズ現代音楽なのを聞き好んでいるのであれば、良さはばっちり伝わるはずだ。良くも悪くもガラリと印象の変わった一枚。初手にはあまりお勧めできません
聴いた日:12月16日 アーティスト:小沢健二
singlessingles
01年発表編集盤。解散後に発表されたコロムビア時代のシングルを収録した内容。アルバム群では時代のトレンドを切り取ってきた彼らだが、こうやってフックの強いキラーチューンを並ばせると、ポップカルチャーとしての彼らの本質がより浮き彫りになっていると感じられる編集が興味深い。
ひたすらにファッショナブルだが東京の趣や歌謡曲らしさが隠し味になっているDisc1、対して、ハウステクノの熟しきったグルーヴがサイケな酩酊感を放ちながら、最終的に日本らしい紅白めいたお目出度さに回帰していくDisc2。シングルにこそ、その真髄が詰まっていると感じる良編集盤だろう。
聴いた日:12月17日 アーティスト:ピチカート・ファイヴ
PIZZICATO FIVE JPNPIZZICATO FIVE JPN
97年発売ベスト盤。タイトル通り、94〜97年にかけての楽曲を収録したグループ中期のベストアルバム。サウンド的には洒脱なハウステクノからロックやR&B歌謡曲など雑多でハッピーな音にシフトしていく様子を捉えた内容となっている。東京という大都会の喧騒と響きがみっちり詰まっている。
聞いていて思うのは、編集盤だけあって、おそらく選曲したであろう中心人物小西康陽の意図がかなり色濃く出ている曲順だということ。コンセプトありきで組まれているだけあって、他の編集盤と曲が重複していても、別個の流れを楽しむことができるのが彼の掌の内という印象を強く受ける。
その辺りはDJ的な感覚なのだろうけど、自前の曲でミックステープを作っていると思えば、納得は行く。翻っていえば、曲のキャッチーさにおいては絶対の自信があるからこそ出来る所業だと思う。その点では、その日の雰囲気や気分で選ぶ楽しさがあるし、そういう楽しみ方こそ彼らの音楽の真価なのだろう
聴いた日:12月18日 アーティスト:ピチカート・ファイヴ,小西康陽
Cape Verdean BluesCape Verdean Blues
・65年録音盤。ホレス・シルヴァークインテットトロンボーン奏者のJ.J.ジョンソンが4〜6に参加している構成の作品。カリビアンフレーバーが小気味いいラテンジャズ。ドラムが刻む細やかなビートの熱を帯びた疾走感が鬱蒼とした熱帯林を吹き抜けていく風のようで痛快だ。
タイトル曲の色鮮やかなトロピカルさも味わい深いがテナージョー・ヘンダーソンとJ.J.ジョンソントロンボーンのハイトーンが絡みあう4のエネルギッシュさも堪らない。ホレスのパーカッシヴなピアノもこういった南米的なサウンドがやはり水に合うようで聞く側も楽しくなる演奏が詰まった良盤だ
聴いた日:12月22日 アーティスト:Horace Silver
ザ・サイドワインダーザ・サイドワインダー
・63年録音盤。3年ぶりのBN復帰盤にして、最大のヒット作。8ビートを取り入れた1がジャズロックと呼ばれ、人気が高いが後年のロックが下地になったものとはやはり趣は異なる。タイトでシャープな演奏が非常にスタイリッシュに鳴り響く。きっかりと構成が決まっているのも折り目正しさを感じる
ミッドなテンポで、派手さはないが各メンバー、ハキハキとした演奏で存在感を示していて、味わい深い演奏といえる。全力疾走より、ランニングといった雰囲気でじっくりと聞かせてくれるのは、大人の魅力だろうか。余裕を感じるジャズらしい一枚。キャリア中期の代表作だろう。
聴いた日:12月23日 アーティスト:リー・モーガン
Sigh no moreSigh no more
91年発表2nd。1stに比べるとテンポを落としてハードロック寄りになった印象を受ける作品。アメリカンっぽいカラッとしたサウンドにジャーマンらしいメタリックなノリが重なるのが結構面白い。さすがに突き抜けるような疾走感は前作と比べると少なくなっているが、その分試行錯誤が見え隠れする
メタリックでへヴィな音がじっくり伝わってくるのと、アメリカンHM/HRの乾いた質感がわりかしポップに響いているというのもあるが、そういった彼らの音をより高みに練り上げるために必要な一枚だったように思う。しかしテンポが落ちた曲でもパワフルさは変わらず。佳作だが十分楽しめる一枚だ。
聴いた日:12月25日 アーティスト:Gamma Ray
ニセ予言者どもニセ予言者ども
87年発表4th。インディーズ最終作。前作のアフロファンクからさらにファンク色を強めて深化したサウンドになった。華やかさは薄れたものの、猥雑さと切れ味の鋭さはさらに増した。江戸アケミの歌詞も叙情性と力強さがはちきれんばかり。勢いはそぎ落としたものの、渦巻くグルーヴは最高潮である。
江戸アケミの詩は30年経った今なお、その精彩を一向に欠いておらず、心を響かせるし、真に迫った内容だ。バンドのテンションと江戸アケミの創造性が一体となったという点ではこのアルバムが最高傑作であるという評になんら疑いを持たないし今だからこそ広く聞かれるべき作品だと思う。間違いなく名盤
聴いた日:12月29日 アーティスト:JAGATARA

わたしの音楽メーター
音楽メーター

2016-12-28

話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選

| 21:27

さて、今年もやってまいりました。話数単位で選ぶ、TVアニメ10選です。

「話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選」参加サイト一覧: 新米小僧の見習日記

毎年、放映されたTVアニメの中から話数単位で面白かった回を選ぼうという企画。

新米小僧の見習日記さんが集計されている、年末の恒例企画です。大まかなルールは以下の通り。


ルール

2016年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。


ブログは6回目の参加です。もう6年目かあ。企画自体は今年で7年目なので、最初の年以外は欠かさず参加してる自分はもうすっかり古参の部類になりますね(笑) いやまあ、なんだかんだでのらりくらりと続けてこられました。出来る限り続けていければと思いますが、この先どうなっていくかは自分もちょっとわかりません。これから放映されていくアニメ作品次第、といったところでしょうか。なお過去の10選は以下のリンクから。

話数単位で選ぶ2011年TVアニメ10選 - In Jazz

話数単位で選ぶ2012年TVアニメ10選+α - In Jazz

話数単位で選ぶ2013年TVアニメ10選+α - In Jazz

話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選+α - In Jazz

話数単位で選ぶ、2015年TVアニメ10選 - In Jazz

筆者としては「記録を残す」という点で、企画に参加してます。この年にはこんなの見てたんだなあと思い返したりも出来ますしね。また一年の総決算として、参加しやすい企画というのもあります。……とはいえ、今年は肌に合う作品が多くなかったので話数が10本集まるかどうかが怪しかったのですが、どうにかこうにか弾は揃えることができました。おそらくは他の方より視聴本数が少ない中での選考となってますのであらかじめご了承をいただきたいかと。

言い訳めいた前置きはここまでにして。筆者の10選をコメントを添えつつ、紹介していこうと思います。

なお地上波放映日も明記しています。それではどうぞ。なおスタッフ名等々は敬称略です。

《話数単位で選ぶ、2016年TVアニメ10選》

1.ふらいんぐうぃっち 弟5話「使い魔の活用法」(5/8放送)

ふらいんぐうぃっち Vol.3 [Blu-ray]

ふらいんぐうぃっち Vol.3 [Blu-ray]

脚本:赤尾でこ

絵コンテ演出佐山聖子

作画監督矢向宏志、浅川翔、上田みねこ、佐野はるか

総作画監督:安野将人

《コメント》

真琴の使い魔、猫のチトさんのお散歩回。

東北地方青森)の雄弁な自然を背景にスローライフで不思議な日常を丹念に描いていた本作だが、一番印象的だったのがこの話数。ホットケーキ回とか喫茶店回とか空飛ぶ鯨の回とかも好きだったけど、これは構成の使い方が巧みだった。いわゆる「視点」とか「目線」のエピソードだと思う。チトさんの散歩道を辿る人間が違うだけで、見方が違って見えるというのをAパートとBパートを使って提示していたのが面白かったし、出来事を台詞からニュアンスで掴み取る会話のやりとりにしても、何があったかの一部始終を把握している視聴者だからこそ楽しめるものとなっていて、その辺りの話運びと舞台作りが実に巧みだなと。チトさんの猫らしい挙動も可愛らしかった。この話数の魅力については↓のリンクにも詳しいので明記しておきます。

小さな魔女と縁側の時間――アニメ「ふらいんぐうぃっち」 - subculic

2.ユーリ!!! on ICE 第4滑走「自分を好きになって・・・完成!!フリープログラム」(10/27放送)

ネーム:久保ミツロウ

絵コンテ:大塩万次郎

演出:新井宣圭

作画監督:梅津茜、芳賀亮、鎌田均

総作画監督平松禎史

《コメント》

世界選手権へ向けてのユーリとユリオの特訓風景とそれぞれのフリースタイルの完成が描かれたエピソード

シリーズ全体を眺めると個人的には非常にアンバランスな構成と描写不足が気になってしまう作品になってしまったが、序盤のドラマ描写の密度と題材となっているスケート描写のバランスの良さが際立った話数をチョイスした。ヴィクトルとユーリが海辺で対話するシーンもそうだが、取り巻く状況を打破するために自分をどう変革していくのかの糸口を掴む描写の積み重ねが丹念に描かれ、自分らしくあるために利用できるものは何でも利用する二人の姿が画面のリズミカルな畳み掛けと相俟って、作画とドラマがうまく絡み合っていた。そしてそれらが最後にフリープログラムに使用する楽曲のタイトル、つまり作品タイトルへと結実していく。特に終盤、ユーリのFS曲に二人の演技が交互に絡み合うシーンは絵的な満足度が高かったし、これから始まる勝負の舞台へ向けて完成していく美しさがあったように思う。この位のさじ加減で物語が進んでくれれば言うことはなかったのだが……つくづく惜しい。

3.月曜日のたわわ その3「TAWAWA SPORTS」(10/24放送)

絵コンテ演出:村山公輔

作画監督:瀬川真矢

《コメント》

スポーツジム回。

ショートアニメながらちょっと意表を突いた展開だったのが印象的。仕掛け自体は視聴者の錯誤を用いた映画やドラマなどにもよくありそうなものなのだが、短い尺ながらも物語の起承転結を組み上げ、仕掛けを気付かせないように構成しようする姿勢を買いたい。おかげで一本のフィルムとして、内容のあるものに感じられたし、自分は上手く騙された痛快さがあった。監督や演出陣がシャフト出身だけあって画面の作り方がそれらしくもあったので、シャフトという製作会社の作るアニメーションの汎用性と「年輪」も感じられ、興味深い一本だった。

4.とんかつDJアゲ太郎 #5「豚々(トントン)拍子で初DJ…!?」(5/8放送)

絵コンテ大地丙太郎

演出:中田誠

作画監督:KIM EUM HA

総作画監督:河南正昭

《コメント》

アゲ太郎のクラブDJデビュー回。

徹底した「引き算」の演出が見事に嵌った話数だった。音楽題材の作品だとどうしても「演奏」や「ダンス」などの作画に注力しなければいけない側面がある。が、ショートアニメという形式だというのもあるが、この作品についてはまったく逆の手法をとったのが面白い。というよりクラブDJが機材を使って、レコードを回す行為はDJプレイで、極端なことを言えば「演奏」ではない。つまりその場で流れる楽曲とDJプレイをしていると分かる画が用意できれば、場面が成立してしまうのだ。それ故にこの話数では「音」の存在感を出すため、画面をほぼ動かさずにクラブの盛り上がりを演出して見せたのが見事だった。「とんかつを揚げる油裂音」と「Rainy Lenny」の雨音のイントロが絡み、グルーヴが生まれる瞬間の音を際立たせる為の「逆算」の妙を感じた。

5.ジョジョの奇妙な冒険ダイアモンドは砕けない 第31話「7月15日その1」(10/28放送)

脚本:小林靖子

絵コンテ長田絵里、ソエジマヤスフミ、吉田泰三

演出長田絵里、ソエジマヤスフミ津田尚克

作画監督:仲敷沙織、飯飼一幸、Shin Hyung Woo、千葉山夏恵、横山謙次、芦谷耕平

アクション作画監督:三室健太、才木康寛

総作画監督西位輝実

《コメント》

アニメジョジョ4部最大の「大仕掛け」回。

杜王町のとある夏の一日として雑誌掲載時のエピソード×4を同時進行させた構成の妙に拍手したい。群像劇の趣も強いシリーズだからこそ成立した構成でもあり、同時多発的に敵の脅威が襲い掛かるという切迫感を原作から上手く抽出していたと思う。それ以上にここで「時間」の概念を加えたことによって、クライマックスで対峙する事となる「運命」と合わせて、後の5部、6部との相関性を高めた点でも一石二鳥いや、一石三鳥の技ありの話数かと。

4部は日常に潜む狂気を積極的に描いているシリーズでもある。平穏な日々にも暴力や狂気はしっかりと存在し、その善悪の間の「揺らぎ」の中で、常に均衡を保たれるべきもの=日常なのだ。そして日常の中に許しがたい悪が潜む時、それを暴き、直さなくてはならない。4部は杜王町に暮らす人間の、脅威に立ち向かう精神の物語だと言える。ふとした出来事で日常はたやすく崩れていく。そういった困難に直面した時の「強さ」を描いた作品で、今の時代に描かれるべき物語でもあるなと実感した次第。

6.WWW.WORKING!! 第12話「あらしの前の何か」(12/17放送)

脚本:永井千晶

絵コンテ青柳隆平

演出:崎山早良

作画監督:西川絵奈・渡辺浩二・高橋道子・真田しづえ・神本兼利・石夏海・加藤やすひさ

総作画監督:中野繭子

《コメント》

足立×さゆりユータ×志保の告白&キスショット二連発。

WEB版WORKING!!ファンの内々では「猫組」と呼ばれる作品のアニメ化。原作の初出順は猫組(作者のサイト)→犬組(ヤングガンガン連載版)。筆者は猫組の方を先に目にしていたのでようやく、という感慨がある。5年前のエイプリルフール動画から待ってた甲斐があった……!

チョイスした話数は演出のキレが良かった。正直な事を言わせてもらうと、この作品にあまり画面的な充足感を期待していなかった。いやむしろ演出面で冴えを見せてくたのでちょっとびっくりした、という方が正しいだろう。絵コンテ青柳隆平は6話、9話(※放映時には鎌倉監督の絵コンテ演出表記だったが公式サイトでは絵コンテとしてクレジット)と本作の後半話数をコンスタントに担当されていて、どれの回にも攻めた画面をなにかしら一つは繰り出していたのが目を引くきっかけ。実は、12話が放映するまでは9話をチョイスしてたのだが、滑り込みでそれを軽く飛び越えてきた。

OP明けのカットからグランドホテル方式的にスポットの当たる人物を配置して、そこからひとつのエピソードにフォーカスしていく流れや画面の上手下手をつかった芝居だったり、空間の奥行きだったりの画面構成が光っているように感じられたし、それぞれのカップルのキスショットの対比など見所が合った。特に足立×さゆりの別れ際のキスはワンショットとしても大変にキレが良かった。(原画陣に和田高明がいたので担当パートなのだろうか?)

まだ演出を始めて2年ほど、絵コンテを担当するようになって1年半ほどの若手の方らしく、やりたい事を全て詰め込んだ若さと勢いに満ちているようにも見える。が、その迷いの無さがフレッシュな画面として鮮烈な印象を与えているのだろう。青田買いになるのかもしれないが、この作品を通じて一皮剥けた感もあり、これからの成長への期待を込めて、この話数を選びたいと思う。

7.終末のイゼッタ 第3話「天翔る剣 Das Schwert des Himmels」(10/16放送)

脚本:吉野弘幸

絵コンテ藤森雅也

演出:根岸宏樹

作画監督:関根昌之、重田智(銃器・メカ)

総作画監督:山下祐

《コメント》

白き魔女イゼッタ、戦地に立つ回。

自分の視聴観測範囲ではこの作品と次に取り上げる作品は監督のポテンシャルの高さを実感させられるものだった。「終末のイゼッタ」の制作が亜細亜堂だと分かった時は驚きがあったし、さらに蓋を開けてみれば各話絵コンテを藤森監督が約半分を手掛ける格好となっていて、なお驚異的に感じられた。元々実力の高さは折り紙付きだった方なのでこれ以上望むべくもないが、凄みを見せ付けられた結果となった。この話数は序盤のクライマックス。密度の濃い画面でファンを唸らせてきた藤森監督の魅力が詰まったものになった。対戦車ライフルに跨り、ランスや洋刀をフィン・ファンネルのように操り、戦場を縦横無尽に駆る姿は魔女というアンタッチャブルな存在を知らしめるに十分すぎる光景。強大な戦力を誇る敵国を前に、圧倒的な不利を被っていたエイルシュタットの戦況を一変させるイゼッタの戦いには極めて爽快感のあるカタルシスを感じた。

8.文豪ストレイドックス 第15話「いつか海の見える部屋で」(10/20放送)

脚本:榎戸洋司

絵コンテ五十嵐卓哉

演出:佐藤育郎

作画監督:菅野宏紀

総作画監督新井伸浩

《コメント》

或る男の悲劇、そして慟哭。

分割2クール目は小説版に描かれた過去編の映像化とともに怒涛の五十嵐監督4週連続コンテ回という気合の入った幕開けとなった。この作品も個人的には愛憎入り混じる視聴で如何ともし難い心持ちで見ていたがなんとか完走できたのは、アニメーションスタッフの目覚しい尽力に他ならないと感じている。そういった作品であった事を踏まえて、どれか一つ抜き出してみるとこの話数になった。本編の前日譚的色合いの強いエピソードである「黒の時代」の「転」に当たる部分。

「黒の時代」は全体に大人の欺瞞と苦味が押し出された物語なのだが、その中でも特に苦渋を味わう事になるエピソード。仔細は語らないにせよ、純粋や無垢、あるいはモラトリアムが続く事を願う人間が打ち砕かれる様を描いてるとも言えるし、永遠に続くかに思えた友情のあっけない終焉が描かれているとも言える。確実に何かが終わりを迎え、新たな光(始まり)が見えてくる矢先の谷底へ叩き落とされた者のタガが外れる。それらが全て終盤の男の慟哭へと込められるのは圧巻といっていいだろう。そこで物語は次回へと引くのだが、「結」の部分で谷底に落ちた男は苦み走った決意の表情を浮かべる。その先に待つのは破滅か福音か、それとも。

榎戸洋司の作品遍歴から眺めれば、「黒の時代」で描かれた事はスタドラやキャプテン・アースの「先」であり、特にキャプテン・アースの「大きなやり残し」の一角(だと筆者は感じている)である、成人直前直後のモラトリアムを描いた点に「新しさ」を見出すわけだが。そうでなくとも、分割2クール目の初手に本編の流れを断ち切ってまで挿入してきた意義はおそらく大きかったように思える。また絵コンテを切った五十嵐監督がここに来てさらに一皮剥けたのではないかと思えるほど、演出的にも「振り切った」印象を受けたのは非常に興味深い所。各スタッフがここで得たものを次作にどう生かすのか、早くも待ち遠しくなっている。

9.魔法つかいプリキュア! 第31話「結晶する想い!虹色のアレキサンドライト!!」(9/4放送)

脚本:村山功

演出:佐々木憲世

作画監督:爲我井克美

《コメント》

今年のプリキュア枠。Vsラブー&新技初披露回。

おそらく29話に人気が集まるだろうから、自分はちょっと別角度で語るとする。

朝日奈みらいは魔法つかいの夢を見るか?〜『魔法つかいプリキュア!』第1話検証〜 - In Jazz

以前、↑こういう記事を書いた。これが正鵠を射ているかは定かではないが少なくとも筆者にとって、まほプリは「みらいの物語」として目に映っている。だからこそこの話数を選出したと言っても過言ではない。本作は全体的にファジーな要素が多く、掴み所を得ない作品である事は否定できない。が、見方を得る事ができれば非常に文学香りが漂う作品に思えてくるのだ。リンクでも語っているような「エヴリデイマジック」な日常からわずかな変化が起き、波紋を呼ぶのがこの話数。

リコが冷凍みかんを作る事に成功するのは他愛のない変化と成長だが、これがきわめて重要なのだ。成長には経験の積み重ねと時間が非不可欠だろうし、リコがこと魔法に関しては大なり小なり失敗続きだったのは見ている人ならば分かるだろう。それが成功という形で成長が描かれた。はーちゃんことことはもみらいとリコ以外の人間から思いやる心や努力する姿を見て、二人の知らない所で心身を成長させている。

では、みらいはどうだろうか?彼女はラブーという強敵に向かってもなお「(みんなと)いつまでも一緒にいたい」と言い放つ。それは「強さ」であるが「弱さ」でもある。みらいの純粋な気持ちがそう言わせるのだろう。しかし、リコもことはも「成長」している。みらいはどうするのか。その答えは最終クールに突入し、いよいよ終盤という12月末現在でもまだ提示されていない。おそらくはみらいの「成長」が鍵を握っているからだろう。

取り上げた話数はターニングポイントなのだ。それ以前より「ずっと一緒にいたい」というフレーズは何度か聞こえていたのだが、他の二人の成長が描かれた為にみらいの無自覚な純粋さが顕在化するのはえげつなさすら感じてしまう。彼女の「危うさ」を浮き彫りにしている一方で、その想いの純粋さが新たな技を生み出しているから、表裏の関係だと見ることは可能だ。それがどういう事なのかは最後まで見てみないとわからないが、みらいの「魔法」にまつわる問題を炙り出しながら児童アニメ体裁を保って、展開される演出はさりげないながらも奥深く感じ取れた。そういった観点では非常に面白いと思う。まあ、筆者の深読みに過ぎるきらいも否定はできないのだが。


10.charlotte 特別篇(14話)「強い者たち」(3/30 ※TV未放映。ソフト最終巻に収録)

脚本:麻枝准

絵コンテ:浅井義之

演出:浅井義之、筑紫大介

作画監督関口可奈味、宮下雄次、松和歌子、鈴木理沙

《コメント》

他人の心を無作為テレパシーで伝えてしまう少女と由宇と奈緒の在りし日の光景。

最後のチョイスは「反則技」を承知の上で語りたい。なにせソフト収録の未放映回だからだ。それを話数10選に選んでしまうのはギリギリアウト、ほぼアウトだが、発表されたのが年内である事で目を瞑ってもらって欲しい。さて話の方はといえば、一口に麻枝准の痛切な魂の叫びだろう。いやこの回に限ってはどうしても作品外の状況を鑑みてしまう。ここではその事を一々つまびらかに語るつもりはない(気になる人はぜひ調べて確認していただきたい)が、悲痛な感情が特にクライマックスの台詞の端々に感じ取られてしまうのがなんとも。

P.A.WORKの堀川憲司社長はこの作品を「私小説的」だと評しているが、まさしくその部分がシリーズ中でも最も色濃く出てしまった話数だと筆者は感じる。しかもそれは2016年麻枝准と図らずも非常に強くリンクしてしまっていると感じざるを得ない。おそらく極めて珍しい案件だろう。むろん真意のほどは分からないし、自覚はないのかもしれない。が、この話数で描かれた強い感情に対して、見る者はきちんと受け止めて考えるべき事のように思ってしまう。少なくとも麻枝准は真摯に物語と向き合い、格闘しているのだと言う事が伝わってくるし、自らを削っているのだから。その事を考えるとその力強くも悲痛な叫びを透明感のある画面で演出して見せたのは氏の「純粋」さを損なわないためだろう。賛否の多い作品ではあったが、最後の最後で「これぞ」というエピソードが送り出された事に拍手したい。

なお堀川社長の「私小説的」という評のソースは以下のリンクより。

電撃 - 『Charlotte』最新PV公開! 鳥羽洋典氏と堀川憲司氏にスタッフィングの狙いを直撃


以下は次点作品。

今年は本当に視聴本数が少なかったので、10選と重複する作品からの話数ばかりとなってしまった事はお詫びしたい。

<次点作品>

赤髪の白雪姫 第13話「運命を紡ぐ赤」(1/12)

魔法つかいプリキュア!

第13話「たのしいBBQ!幸せたくさんみ〜つけた!」(5/1)

22話「芽生える新たな伝説!キュアフェリーチェ誕生!」(7/3)

ジョジョの奇妙な冒険ダイアモンドは砕けない

第6話「広瀬康一(エコーズ)」(5/7)

第17話「岸部露伴の冒険」(7/23)

文豪ストレイドックス 第20話「頭は間違うことがあっても」(11/23)

WWW.WORKING!!

第6話「運命サバイバル」(11/5)

第9話「僕らはみんな病んでいる」(11/26)

終末のイゼッタ

第8話「残酷なおとぎばなし Das grausame Marchen」(11/20)

第11話「フィーネ Fine」(12/11)

フリップフラッパーズ

第3話 ピュアXLR(10/20)

第6話 ピュアプレイ(11/10)


2016年の総括》

2016年を端的に言い表せば「激動の年」だ。

今年ほど「歴史の波が渦巻いていく」のを実感したことはなかったように思う。英国国民投票EU離脱賛成、米国大統領選でのトランプ旋風、天皇陛下の「お気持ち」表明、明るい話題、暗い話題、枚挙に暇がないくらい月単位、下手すれば週単位、はたまた一日単位で世界は揺れ動いていた。もはや今年の頭に起こった出来事が何年も前に思えてしまう位に密度の濃い一年だった。それはつまり我々の眼に見える形で、なおかつ急激に「日常の綻び」が露わになっていったように感じる。

日常の綻び。当面、均衡が破られることはないだろうとされていた物がたやすく崩れていくさまを今年一年、個人的な観測の範囲の中でも、様々な場所で目の当たりにしていたように思う。本記事のテーマに沿えば、「2016年クライシス」なんていうのはいい例だろうか。踏み越えてはいけない、あるいは踏み越えるべきではない一線を次々と越えていく。チキンレースもなんのそので地獄の蓋が開き、一直線でまっしぐらになりかねない暗澹たる状況が広がりつつある。もっと広い領域で見てゆけば、「平和」と言う状況がいよいよ揺らいできているのかもしれない。何かの均衡が危うくなったり、すでに破られたりしている。そういった「綻び」があちこちに現れた年といっても過言はないだろう。

一方で今年は音楽と映画の「当たり年」でもあった。本記事に従って、アニメ関係に絞ってみても「君の名は。」「この世界の片隅に」などは現在進行形でヒット街道を順調に進んでいるし、夏には「シン・ゴジラ」、秋口には「聲の形」などなど、ほんの少し拾ってみても、実写アニメ洋邦を問わず、様々な傑作がこの一年で驚くほど出てきた。特に「君の名は。」や「この世界の片隅に」、「シン・ゴジラ」辺りは我々の生きる「日常」とも密接にリンクしており、それぞれがそれぞれの形で「日常」という既存意識に対して問題を投げかけているようにも思う。あって当然、というものが急激に変わったり、崩壊したりする。そういう脅威が目の前に潜んでいる。そういう事実を、創作は「時代性」として帯びていくわけだが、筆者が図らずも選んだ話数10本もそんな「日常」に起こる/起こりうる「綻び」、あるいは作品、物語の「綻び」を許容した作品が多いように感じた。

「綻んでいる」と言うことは同時に、境界線が曖昧になって、ひとつのカオス、混沌になっていると見ることも可能だ。そういった時の流れに蠢く混沌から躍り出てくる「可能性」こそが将来の「希望」なのだろうが、それを僅かにでも摘み出す為には現時点の問題を少しずつ解決していく以外に他ならない。それも超長期的に取り組んでいくしかないのだ。腰を据えて取り組むべき問題はいくらでもあるし、そんなのは筆者に言われなくても、おそらく何かに従事している人ならば理解しているはずだろう。

とまあ、つらつらと語ってしまいましたが。自分が見てきたものを「時代を映す鏡」として見た感じではこんな感じでしょうかね。意味は様々ですがなにかしらの「終焉」、それに準じた「兆し」が目に付いた一年でもあるなと。と、同時に今年は著名人の死去が各分野目立った年でも。あんまりにも多いからここでいちいち挙げる事はしませんが、それらを含めて新陳代謝のように「新しい節目、局面」を迎えつつあるのだと感じます。そういった点では「分水嶺」的な年だったのかもしれません。来年以降どうなっていくかは誰にもわかりませんが、願わくば今後の将来が明るいものであるように祈りたいです。


《最後に》

今年一年を振り返ると、本当に色々あった年だったというのはありますが。

「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」という企画では今年の頭にこれがあったんですよね。

【イベント】「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」を語る会(2016.01.11): 新米小僧の見習日記

集計者である新米小僧さんを中心に企画・開催されたイベントで、大盛況で終わった様子がリンク先からも窺い知ることできます。これがあったのが正月明けの1月。そう、今年の1月だったんですよ。なんだかずいぶん前の事のようにも思いますがたった1年弱前の事です。遠い過去に思えるくらい、多くの出来事があった一年だったのが分かるのではないかと。自分も行く予定だったんですけどねえ。想定外の出来事が立て続けに発生したために行くのを断念せざるを得なかったのが今年一番の心残りです。次回がいつになるか(そもそもあるのかどうか)、分かりませんがもしあるならばその時は足を向けたいなと思います。

さて、今年の話数10選は自分が見たいと思える作品が一年を通じてあまりにも少なかったというのもあって、はたして10本集まるかどうかという心配があったわけですが、何とか形にできて一安心といったところ。今年の前半は夏コミ同人誌への寄稿文を書いていたのに費やしていたので、それで力尽きたというのもないわけではないですが、それはそれとして。一方、今年の映画や音楽が盛況だった分、自分の観測範囲ではTVアニメと漫画がわりと不調というか、新鮮味はあまりなかったという年でもありました。何かが飛びぬけていいというわけでも悪いというわけでもないんですが、なんとなく停滞してたというのが不躾な印象だったりします。その辺りは来年以降に期待でしょうかね。漫画のほうもこち亀やジャンプの長期連載が軒並み連載終了したりなどして、こちらでも急激な変化が起こっていました。紙媒体と電子書籍などの動きもあるでしょうし、音楽に目を向ければいよいよCDが御役御免となって、配信サービスとレコード二極化になっていくのかみたいな分水嶺も。どこもかしこも岐路に立っている感じなのは総括でも語った通り。歴史的にも重要な一年だったのではというのが2016年の雑感ですね。

来年、また話数10選ができるかは「自分にとって面白い作品」が出てくるかどうかにかかっています。筆者としては、出来うる限り続けたいというのは昨年も言ってますが、こればっかりは出てくるものに期待する以外ありませんので。まあなんにせよ、来年も気楽に見ていけたらと思います。最後になりましたが、毎年集計されている新米小僧さんに感謝を。いつもありがとうございます。当ブログも今年の更新がこれで最後になるかと思いますが、また来年も何かしら記事にしていくと思いますのでどうぞ宜しくお願いします。

それでは今年一年もありがとうございました。よいお年を。