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本山勝寛: 学びのすすめ このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

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2016-11-28

障がい者の多様性とリアル

先日、乙武洋匡氏が久しぶりにテレビ出演していたことがトップニュースとして話題となっていた。乙武氏が日本で最も発信力のある「障がい者」であることは確かだが、「障がい者の多様性とリアル」を伝え、理解するという観点から、日本はもっとできることがあるのではないかと感じた。

五体不満足 完全版 (講談社文庫)

五体不満足 完全版 (講談社文庫)



大ベストセラーとなった乙武氏の『五体不満足』が出版されたのが1998年。長野パラリンピックが開催された年だ。その著書と乙武氏が発信してきたメッセージにより、障がい者、特に肢体不自由者に対するポジティブなイメージが社会に伝わったことは確かだろう。それだけに、今回の不倫騒動に関しては残念でもあった。

五体不満足、そして長野パラリンピックから18年の年月が経ち、いま日本は東京パラリンピックを迎えようとしている。私は職業柄、様々な障がいのある方と一緒に働いたり、接したりする機会が多いが、それぞれの方が持つ個性に魅力を感じ、学ぶことが多い。また、車いすユーザーだけでなく、視覚や聴覚、知的などの障がいの種類によってニーズはまったく異なるし、同じ障がいでもそれぞれの状態や好みによって異なる。

車いすユーザーだからこそ、ベビーカーユーザーや足腰の不自由なお年寄りの視点にも立ってアドバイスをすることができるし、目が見えないからこそ、言葉や音声によるコミュニケーションをとることの大切さを気づかせてくれる。乙武氏だけでなく、様々な障がいのある方が発信できる環境をつくることで、社会に多くの気づきが提供されるのではないだろうか。

「障がい者」と一括りにはできない多様性があり、それぞれの方が持つリアルな声に耳を傾けてこそ、ほんとうの意味で多様性を理解しあう共生社会、インクルーシブな社会が実現できるのではないだろかか。

そんな問題意識もあり、日本財団パラリンピックサポートセンターでは、様々な障がいのある講師と障がい者とのコミュニケーション方法を学ぶ「あすチャレ!Academy」というセミナーを開始した。個性あふれる様々な講師が、楽しく分かりやすくセミナーを行っているので、ぜひ参加してみていただきたい。
https://www.parasapo.tokyo/asuchalle/academy/

2020年のパラリンピックが一過性のお祭りで終わらないよう、ひとりひとりが取り組むことがあるように思う。

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2016-11-11

子どもは4万回質問する



『子どもは40000回質問する あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力』という本がいろいろと興味深かった。私は以前より、IQやEQと同じように、「CQ=好奇心指数」が注目されはじめ、より重要な時代になっているということを書いてきた。英国のノンフィクション作家によるこの著作も、CQという言葉を使ってないまでも、子どもから大人まで、人生をかたちつくるうえでの「好奇心」の重要性とその伸ばし方に焦点をあてた話題作だ。

本のタイトルにもなっている4万回という数字だが、心理学者のミシェル・シュイナードが、合計200時間以上、四人の子どもたちを観察し分析したところ、一時間につき平均100回以上の問いかけをしたという。ハーバード大学教育学教授のポール・ハリスが、このシュイナードのデータに基づいて計算した結果、子どもは二歳から五歳のあいだに説明を求める質問を計4万回行うと推定している。

驚くべき数字だが、この年齢の子どもを持つ親としては納得がいく。親が嫌になるくい、幼児はとにかく質問をする。他の動物に比べて、大人になって独り立ちする年齢が極めて遅い人間の特徴でもある。

乳幼児期の好奇心が、成長した後の学力とも相関がある研究がなされている。また、小さい子どものなかでも好奇心の度合いに違いがあることが知られている。両親をはじめとする世話役が、子どもの質問や赤ちゃんの指差しなどにどう応えるかによって、好奇心の育まれ方が変わってくるという。子どもは誰もが好奇心を持っているものだが、それが伸ばされるかどうかは周囲の大人次第でもあるのだ。

著作では、好奇心格差が社会格差、経済格差をうむとも述べられている。ITの発展により、好奇心をもって意欲的に知的冒険に踏み出す人々は、過去に例をみないほど多くの機会を得るが、知的好奇心を持たない人は、自ら問いを発する習慣を失ってしまう。

CQ、好奇心をいかに伸ばし続けるか、大人になっても知的好奇心を持ち続け、それを仕事や人生にどういかしていくかについて、まだ学術的研究は始まったばかりだ。複雑性が増し、情報過多になり、人工知能が発展していくこれからの時代、CQの重要性は増していくだろう。4万回質問する好奇心の天才である子どもから、大人が学び、ヒントを得る姿勢も必要なように思う。

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一生伸び続ける人の学び方

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2016-11-06

大黒摩季がパラリンピアンと共演するパラフェスが熱い件

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(画像:日本財団パラリンピックサポートセンター公式サイトより)

11月6日夜のTBS「情熱大陸」で、大黒摩季の密着ドキュメンタリーが放送された。大黒摩季と聞くと、筆者を含む30代・40代は、「なつかしいにおいがした」なんて自然と口ずさんでしまうくらい、まさになつかしいアーティストだ。アニメ「スラムダンク」のエンディング曲にもなった「あなただけ見つめてる」や、SMAP中居正広が主演したドラマ「味いちもんめ」の主題歌「ら・ら・ら」はミリオンヒットし、アルバムも300万枚の売上を記録している。

その大黒摩季が、自身の闘病生活や不妊治療など6年間の活動休止期間を経て最近復活し、精力的な活動を開始している。テレビでは、情熱大陸に続いて、11月18日にはテレビ朝日の「ミュージックステーション」にも生出演する。一時「休職」した40代女性が再び復帰して挑戦するという「女性の活躍」的な文脈からも、中年の再チャレンジという観点からも、思わず胸が熱くなるドラマが感じられる。

そんな大黒が、さらに熱くなるイベントに出演する。11月22日、代々木第一体育館で開催される、リオパラリンピックのメダリストや他のアーティストらが出演するライブイベント「パラフェス2016」だ。リオパラリンピックの感動とパラスポーツの魅力を共有しようと企画され、サラ・オレインやマーティ・フリードマン、全盲のシンガーや義足・松葉杖の世界的ブレイクダンサーらも出演する。

大黒摩季といえば、「熱くなれ」がアトランタ五輪のNHKテーマソングにも起用され、北京パラリンピックの応援ライブにも出演するなど、スポーツの応援に切っても切れない関係。今回、6年ぶりの復帰とリオパラリンピック後に初開催される「パラフェス」が重なったのは一つの運命なのかもしれない。

パラフェス2016は日本財団パラリンピックサポートセンターの主催で、入場料は無料。入場チケットの申し込みなど詳細は、以下のパラフェス公式サイトから。
http://www.parasapo.tokyo/parafes/

歌やダンスのみならず、リオでメダルを獲得した日本代表選手たちの迫力あるパフォーマンスも間近に観れる機会だ。ぜひ足を運んでみてはいかがだろう。

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リオデジャネイロパラリンピック2016報道写真集

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2016-10-31

これも学習マンガだ!+50作品を発表

昨年、日本財団の「これも学習マンガだ!〜世界発見プロジェクト」で、新しい世界の発見や学びにつながるエンタメマンガ100作品を発表し、話題を呼んだ。ネット上で多くのコメントが寄せられただけでなく、全国の学校図書館や市民図書館、書店からもポスターの依頼が多数寄せられ、各地でフェアが展開されている。選出された100作品の選者コメントなどがまとめられた本も文藝春秋から書籍化された。



先日、このプロジェクトの第二弾として、「これも学習マンガだ!」の追加50作品が新たに発表された。 「聖☆おにいさん」、「ガラスの仮面」 、「コウノドリ」 、「バクマン。」、「鈴木先生」、「釣りキチ三平」など新旧のバラエテイに富んだ作品が選ばれた。私も選書委員として参加し、いくつか選書作品に推薦文を寄せさせていただいた。

今回選ばれた作品のなかで、特に私のお薦めは『マウス』だ。これも学習マンガだ!のサイトに寄せた推薦コメントは以下の通り。

ナチスの弾圧・虐殺を生きのびたユダヤ人の父親の人生を回想する海外マンガ家による作品。ホロコーストは人類史上最も悲惨な出来事であり、人間が人間を考えていくうえで、直視しなければならない歴史だ。その重たいテーマを、息子が父から聞き出すという視点で、愛の物語や人間味溢れるストーリも織り交ぜられ、リアリティをもって描き出されている。ユダヤ人はネズミ、ドイツ人はネコ、ポーランド人はブタを擬人化させ、ネコのドイツ人から命懸けで逃げ隠れるネズミのユダヤ人たちの姿が印象的だ。マンガだからこそできる手法で、目を背けてしまいたい歴史に光を当ててくれる。ピューリッツァー特別賞も受賞し、世界的にも高い評価を受けた作品だ。



残念ながら、昔の海外作品ということもあって、現在絶版のようで、オンラインサイトからは中古しか購入できない。今回の「これも学習マンガだ!」選出を機に、ぜひ再販いただくか、電子書籍化を期待したい。アウシュビッツの現実をマンガだからこそ表現できた秀作で、世代を超えて読み継がれてほしい。

ほかにも様々な学びにつながるおもしろいマンガが選ばれているので、「これも学習マンガだ!」のサイトを参照いただきながら、ぜひ手にとって読んでみていただきたい。

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頭がよくなる! マンガ勉強法 (ソフトバンク文庫)

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本山→Jhonさん本山→Jhonさん 2016/11/06 21:47 コメントありがとうございます。
拙著がお役に立ったようで何よりです!

2016-10-24

「子どもの貧困」社会的損失40兆円の衝撃

日本における子どもの相対的貧困率は近年上昇し続けており、2016年現在16.3%と、およそ6人に1人が「子どもの貧困」状態にあると言われている。一方で、「相対的」な貧困率であることから、食べるものや着るものにも困るというほどではないケースが多いため、周囲からは見えにくい問題でもあった。

この問題を社会全体で自分ごととして捉えようと、子どもの貧困をこのまま放置した場合の社会的損失の推計を日本財団が少し前に発表し、話題になった。その推計結果は、0〜15歳の子ども全員を対象に行うと、なんと所得の減少額が42兆9000億円、財政収入の減少額が15兆9000億円にも達する。この推計方法や考え方などについては、先日出版された文春新書『子どもの貧困が日本を滅ぼす』に詳しく解説されている。



ひとり親世帯や生活保護世帯、児童養護施設の子どもたちは、大卒または短大・専門学校卒の割合が20%前後と、非貧困世帯約65%に対してきわめて低く、また高校中退や中卒の割合も高く、その分就業率の低さや生涯賃金の相対的低さにつながっている。これに対して、何らかの有効な対策を行った場合、大学進学率が22%改善するというシナリオで、上記の推計が行われている。22%というのは、米国で子どもの貧困対策が測定研究されたアベセダリアンプロジェクトの結果を踏まえた数字だ。

貧困環境にある子どもへの有効な対策が行われ、大学進学率などが上昇することで生まれる所得の差は当然、支払われる税金や社会保険料にもかかってくる。結果的に、個人の問題だけに留まらず、政府の財政収入にも大きく影響し、日本社会全体に影響することになる。

同書では、上記のアベセダリアンプロジェクトのほか、米国でランダム化比較試験の研究手法を導入して効果測定を行った子どもの貧困対策の研究が3つ事例紹介されている。日本ではまだそういった効果測定までされた政策研究がなく、参考になる。いずれの研究も、なるべく早い時期の幼児期に処置をとることで、その後も長い効果が得られること、そして、測定可能なIQなどの学力だけでなく、誠実性ややり抜く力、社会性などの「非認知能力」がその後の人生に大きく影響するという研究結果が示唆されている。

貧困対策というと、大人になってから、職を失ってから、職業訓練や生活保護費の支給などの対策が想像されがちだ。もちろん、そういった対策も必要だが、川の下流で対処療法的な対策だけをしていても、一向に問題の根は断てない。貧困の原因となっている上流や源流でなるべく早いうちに対策をとることで、よりコストパフォーマンスの高い対策をとることができるのではないだろうか。個人に対しても、その人の人生に「見えない」救いになるはずだ。

日本は子どもに対する公的支出や家族関係社会支出が他の先進諸国と比べて低い状況にある。子どもの貧困対策をしっかりとることで、子ども一人ひとりに少しでも明るい未来が開けるだけでなく、日本社会にとってもよい効果をもたらすだろう。

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