朝、目を覚まし、洗面所で顔を洗おうと、 洗面台の鏡の前に立ったところ、 自分の頭がそっくりそのまま 失くなっていることに気づいた。 よく観察してみると、額から上が すぱっと切り取られたように消失し、 ウツボカズラの口のような空洞が、 天に向かってパカッと開いている。 このままでは自分の想いが、 全部この空洞から放出されていってしまう、 と咄嗟に思った僕は、慌ててクロゼットから 山高帽を取り出して被った。 「これで良し」 と鏡を見ながら頷いた僕は、身支度を整え、 近くのカフェへ朝食を食べに出かけた。 通りを歩いていると、 道行く人がこちらを指さしながら 何やらひそひそと囁き合っているので、 もし…