元禄8年9月13日。快晴。文左衛門は大屋へ移り、強飯(おこわ)・酒で祝う。夜、御書院番小山市兵衛跡目山本彦助は用事があって山口あたりまでやって来る。僕に32になる由介という者がおり、8年前に夫婦の契りを結んださきという名の50ばかりの女がいた。近年、この女に飽き、姉ということにして外へ嫁がせた。しかし、夫は故あって罪をかぶり、さきはまた由介のところへ戻ってきた。由介にもほかに女房がおり、この夜、女房はやって来て由介が供から帰るのを部屋で待っていた。そこへさきが突然やって来て女房を見ると、急に怒り出して掴みかかり殴りつけた。女房はほうほうの体で逃げ出した。さきは由介が帰るのを待ちかねて、騒いで道…