「何がどう違うのか、わからなかった」 「しんどい」と言い続けていた母。でも、数値に異常はない。血糖値は高め。はい、糖尿病ですね—— でも何かが違った。声のトーン、目の奥、手の震え方……素人でも違和感を覚えるのに、プロが見逃していた。 「検査しても何も出ない」「年齢的にそんなもんです」“診察室の壁”の向こうで、母のしんどさは曖昧にされていった。 ⸻ 「誰も悪くない。でも、何かが欠けていた」 家族も医者も、みんな“それなり”にやっていた。でもそれでは届かなかった。 母の“症状”は、数値じゃなくて、“表情”に出ていた。 診断じゃなく、観察。問診じゃなく、雑談。 それがあれば、もう少し違っただろうか。…