名前のない夜に月明かりはなく、白熱灯の明かりが部屋の全体を暖色に染めていました。中也さんの詩集を読みながら思うことは、私はこんなにも強く、夭折の天才詩人中原中也に会いたいと願っているのに、私の想いはこの先もずっと届くことはなく、こうして残された血肉をなぞりながら馳せると、そのような夜でありました。 朗読は毎日しています。毎日するようになりました。元々はわたくし、黙読にはひどく自信がありますと、おかしな主張をする明後日人間でありましたが、小さな表現者として学んでいく過程の中で、聴いてくれる人がいるという温もりは何よりの原動力となっていたのです。顔も名前も知らない貴方に向けて、私は朗読家として精一…