旧戸井線の汐首橋梁跡に立つと、そこには時間が止まったかのような風景が広がっていた。津軽海峡を背にしながら、かつてここを列車が走る日があったはずの幻の鉄路。旧戸井線は戦前、津軽海峡防備の目的で建設され、JR五稜郭駅から旧戸井町までの約29.2kmを結ぶはずだった。しかし、その計画は戦局の悪化によって中断され、わずか2.8kmを残して一度も列車が走ることのないまま、時代に飲み込まれていった。 目の前にそびえるアーチ橋、その頑丈な造りは時代の風雪に耐えながらも、過去の夢と現実の狭間に静かに佇んでいる。橋の向こうに広がる景色は変わらない。だが、この橋梁は、ただの構造物ではなく、時代の理不尽さに翻弄され…