明の時代に書かれた中国の通俗歴史小説で、中国四大奇書のひとつ。「三国演義」あるいは「三国志通俗演義」とも呼ばれる。
歴史書としての陳寿「三国志」(いわゆる「正史三国志」)に対応する歴史文学。
「三国志」に関する講談を集大成して創作されたもので、その作者は羅貫中(あるいは施耐庵)と言われている。
そのテキストは現存するものだけで三十種以上あるが、現存諸本中もっとも古い刊本は嘉靖元年(1522)刊『三国志通俗演義』(嘉靖本)全240回である。清代初期には諸本を元に毛宗崗が改定を加え『三国演義』(毛本)全120回(すなわち、2回分を1回に直したもの)を刊行し、現在ではこれが一般的なテキストとなっている。
また、日本で最初に刊行された三国志演義の訳本「通俗三国志」は明末の『李卓吾先生批評三国志』(李卓吾評本)系統の書に拠っているとされている。
一般的に、日本ではただ三国志とだけ言う場合、陳寿の「三国志」ではなくこの「三国志演義」を指していることが多い。
「正史三国志」を単に「正史」と呼ぶのと同様に、「三国志演義」もしばしば「演義」という略称で呼ばれる。
なお、「演義」という言葉自体は「歴史小説」といった意味合いであり、「封神演義」など他の作品にも使われている。単に「演義」とだけ呼ぶ場合はそのことに注意すべきだろう。