怪談 ~右手~ 「じゃあ次は誰の番だ。」カウンター席しかないバーで常連客の3人が順番に怖い話や不思議な話を披露していたが、皆が持ちネタが無くなったのか、次に話そうとする人はいなかった。「じゃあ次はマスターで。」そう名指しで指名された女性マスターは困り顔になった。「私、そういう話は苦手なのよね。」「そう言わずに、何でもいいからお願いします。」常連の中で1番若い男がおねだりをするように甘えた声で言った。「そう言われてもね、、、。そうだ、市さんならなんかそういう話があるんじゃない。」話を振られた市さんとは、カウンター席の一番端っこで1人静かに水割りを飲んでいる初老の男性だ。常連の3人以外で今店にいる…