経営者一家の不思議なところは、互いに会話がないということだった。特に婆さんは専務と話をすることすら避けているようだった。自分の倅なのにお偉いさんなどといっている。持ち上げているのではなくて馬鹿にしているのだ。婆さんも専務もいつも不機嫌。親父だけはちょっと違った雰囲気を持っていたが、それでも機嫌が良かったことがない。 赤木さんが材料を運んで来たら山ちゃんと幸平とで組み立てる。だいたいは山ちゃんが指示をしてくれるので困ることはない。なのに何故か婆さんが不機嫌な顔をしてあれこれと幸平に指示をしにやってくる。婆さんは要らない。だがそうも言えないからハイハイとおとなしく聞いてやっている。山ちゃんは知らぬ…