『世界の中心で、愛をさけぶ』片山恭一著 (小学館, 2001.4) 14歳の僕にとって、防波堤の突端にある小さな灯台が世界の中心だった。 右手には静かな波を受ける大きなクレーンが並ぶ、左手にはフェリーの波止場。後ろには、遠洋漁業の船がずらりと並んでいた。学生服の僕は防波堤に座り、足をぶらぶらさせながら、外海へ向かう船を見ていた。 その灯台は、地図的には観光地の長崎市の真ん中に位置し、長崎港へ入ってくる船のランドマークになっている。そこから世界遺産であるグラバー邸やジャイアント・カンチレバー・クレーンや稲佐山が見渡せる。すり鉢状の長崎の街の底にある絶景ポイントなのだが、ほとんどの人は知らない。理…