太后へお話しになると、 「雨などが降って、天気の荒れている夜などというものは、 平生神経を悩ましていることが 悪夢にもなって見えるものですから、 それに動かされたと 外へ見えるようなことはなさらないほうがよい。 軽々しく思われます」 と母君は申されるのであった。 おにらみになる父帝の目と視線をお合わせになったためでか、 帝は眼病におかかりになって 重くお煩《わずら》いになることになった。 御謹慎的な精進を宮中でもあそばすし、 太后の宮でもしておいでになった。 また太政大臣が突然 亡《な》くなった。 もう高齢であったから不思議でもないのであるが、 そのことから 不穏な空気が世上に醸されていくこと…