葉山修平と聴いて、あァあの小説家と思い出せる人は、もはや少ないのかもしれない。噺作りに巧みな、達者な小説家だった。 私にとっては恩師のひとりだ。ただし文学の師ではない。高校時代の現代国語の安藤先生(ご本名)だった。生徒の前ではっきりとものを云ってくださる、ありがたい先生で、強く感化される生徒も少なくなかった。 高名な哲学者の評論文が教科書に載っていて、それを読解する授業で、原文に「象徴的だ」とあったのを、「やや不正確、ここは「暗示的だ」が正しいね」と言下に指摘なさった。なんと強気な先生かと思った。 高校生の読解力では、どっちでも意味は通る、くらいの感想でしかなかった。が、「象徴的」と「暗示的」…