作家 1871-1943
徳田秋聲とも表記される。
『黴』『あらくれ』『縮図』など。
・およそ形を成した思想を持たず、逆にそれが人生に対して提出する「解決」に絶えず意識的に反発して独自の表現を築き上げた。
・硯友社時代に『雲のゆくへ』で作家として認められる。
・自然主義の時代が来ると『新世帯』を発表し自然主義作家として注視されるようになる。
・『足跡』では自分の妻の半生を、『黴』ではその妻の結婚の事情を書いている。特に『黴』は作者の分身である不遇作家笹村の光明のない生活に無感動に堪えていく姿が、無理想無解決の人生を象徴するように克明に描写されている点で、たんに秋声の代表作であるばかりでなく、自然主義的私小説の典型といえる。
・秋声は理論によるよりも天性がそのまま熟してなった自然主義者であり、自然主義の凋落期に『爛』『あらくれ』を発表し、巨匠の風格を示した。
・秋声の晩年の傑作としては自身の恋愛問題の総決算『仮想人物』と芸妓の半生を描いた『縮図』があげられる。ともに自然主義の頂点を示しただけでなく、わが国の近代小説の最高の達成とされた。
・監督の青山真治は徳田をモデルにした中篇映画『秋聲旅日記』を手がけている。