かつて氷は権力者のものだった かつて、氷は特権階級の象徴だった。江戸時代には将軍しか口にできなかった氷菓が、今や我が家の小学五年生にまで降臨しているのだから、これは一種の民主化である。 だが、その氷をめぐって家庭内に戦火が上がる日が来ようとは、徳川家の誰が予想しただろうか。 昨晩、私は居酒屋で生ビールをおかわりしながら、LINEに届いた妻からの一文を眺めていた。 「かき氷でケンカした」 なにごとかと思えば、くだらなくも、味わい深い戦争が家庭内で勃発していたのである。 かき氷、それは信仰である 長男はかき氷が好きだ。好きすぎると言ってもいい。 冷凍庫から氷を取り出し、電動かき氷機にセットし、シャ…