口臭

私たちは本来「鼻」で呼吸するようにできています。しかし、近年は子どもから大人まで「口呼吸」の人が増えています。口呼吸は単に癖や姿勢の問題ではなく、健康全般に影響を与える重大なサインでもあります。 まず、口呼吸になると口の中が乾燥します。唾液は、口の中の洗浄・殺菌・再石灰化といった機能を担う大切な体液ですが、口を開けて呼吸することで唾液が蒸発し、細菌の繁殖を抑えられなくなります。結果として、口臭が強くなるだけでなく、虫歯や歯周病が進行しやすくなります。 さらに、乾いた粘膜は炎症を起こしやすく、喉の違和感や慢性的な咳、口角炎、のどの痛みなどの症状が出ることもあります。鼻呼吸では吸気が加湿・加温・除…

朝起きたときに感じる口のにおい。実はこれは、誰にでも起こる生理的な口臭です。 睡眠中は体の多くの機能が休んでおり、唾液の分泌もぐっと減ります。唾液が少なくなると、口の中の洗浄作用が弱まり、細菌が増えやすくなります。口の中にはもともと多くの常在菌がいますが、その中には嫌気性菌と呼ばれる「酸素が苦手な菌」も含まれており、夜の間に活動してにおいのもとを作り出します。 就寝前のケアで朝のにおいが変わる 寝る前に歯磨きをしなかったり、磨き残しがあると、口の中にタンパク質（食べかすや剥がれた粘膜細胞など）が多く残ります。それをエサに細菌が繁殖し、翌朝強い口臭を発します。 また、舌磨きを頻繁にしている人も要…

口臭は、口の中の臭いと「息（呼気）」の臭いが混ざったものです。なかでも「ハー」と息を吐いたとき、後半に出てくる呼気の臭い（呼気性臭気）は、血液中のガスが肺でガス交換された結果あらわれる臭気です。血液には全身の臓器からの代謝産物が含まれており、特に腸内ガスの影響を強く受けます。 たとえば、にんにくを食べたりアルコールを飲んだあとに息が臭うのは、その成分が代謝を経て血液を通じて肺に運ばれるためです。同じように、腸内ガス（おなら）の約15％は腸から吸収され、肺でガス交換されて息として出ることが報告されています。つまり、腸内で異常な発酵が起こると、口臭─特に呼気性臭気─に反映されるのです。 民族によっ…

体臭についても口臭を考える上で無視できない要素があります。 体臭は体から発散される臭気で、いわゆる腋臭（わきが）に代表されます。 動物では種や個体の識別、縄張りや発情のサインなどに欠かせない原始的能力です。 人間も例外ではなく、個人差があります。 体臭には、食生活や性的ホルモンの影響、ストレスなどによって変化する特徴があります。たとえば、緊張すると体臭は強くなることがあります。また、性的成熟とともに体臭が現れることもあります。 体臭の感じ方は人それぞれです。赤ちゃんのうんちの臭いが母親にとって愛おしい香りであっても、他人には迷惑な臭いになるのと同じです。 文化と体臭の関係 体臭は否定するだけで…

口臭の悩みは、内科でも歯科でも耳鼻科でも相談されることがあります。日本では、内科の先生が最初に「口臭外来」を設けたのがきっかけで、口臭治療が広がってきました。しかし、各科での対応は「器質的な問題があるかどうか」を確認する範囲にとどまることが多く、自科で解決できない場合は他科へ回されることも少なくありません。 近年では、歯科でも口臭専門治療が行われるようになり、多くの大学病院で「口臭外来」が開設されています。口臭は最終的に口の機能が関わるため、口腔生理に精通した歯科医が担当するのは自然な流れです。ただし、歯科での口臭治療はどうしても「歯周病や歯磨きなどの口腔内問題」に重きが置かれがちです。 実際…

口臭で長年悩む人の多くは、中高生のころからの経験がきっかけです。だから、今これを読んでいる中高生の皆さんには、口臭に関する正しい知識を身につけ、悩みを早めに克服しておくことが大切です。 中高生くらいになると、普段は口臭がない健康な人でも、時々人に不快感を与える口臭が出ることがあります。これがいわゆる生理的口臭です。 一方で、口の中に膿や出血を伴う深刻な病気がある場合や、内科的な病気が原因の口臭は、常に相手に不快感を与える病的口臭です。軽い虫歯や歯肉炎程度では、口臭が強くなることはほとんどありません。 自分の口臭がどちらか不安なときは 家族や友人に聞いたり、歯科で相談すれば確実に確認できます。病…

口臭が出ない条件を作る まず自分の口腔生理機能を理解することが重要です。口の中は自律神経によって影響を受けるため、精神的に緊張したときに唾液の分泌が減ったり、口腔内の細菌バランスが変化したりします。この変化が、いわゆる「緊張時口臭」を引き起こす原因です。だからこそ、口臭が出ない条件を整えるには、口腔内の環境を常に整えつつ、精神的な過剰不安を減らすことが必要です。 まず口の中を清潔に保つ基本的な習慣が前提 歯磨きや舌のケア、口腔内の保湿を意識することで、口臭が出やすい環境を防ぐことができます。そして、緊張や不安が起こる前に、口腔内の状態をベストに保つことを習慣化するのです。例えば、授業や発表の前…