創業九十年を超える海辺の小さな老舗旅館『凧屋旅館』。そこは、様々な古書 を揃えた文庫が名物で、別名『文庫旅館』と呼ばれていた。 本は好きだが、アレルギーがあるため読むことが出来ないという特殊な体質を 持つ若女将は、宿泊客に、その人と同じにおいを持つ本をお薦めする代わりに、 本を読んで内容や感想を聞かせて欲しいと言うのだが――。 『金曜日の本屋さん』シリーズの名取さんらしい、本にまつわる物語集。今回は 取り上げられているのはすべて古書ですが。 小さいけれども落ち着いた凧屋旅館の雰囲気がとても素敵でしたね。そこを 切り盛りする若女将の円さんの凛とした佇まいも素敵でした。若女将として 客の前に立った…