唯識とは、すべては心によって現しだされた表象にすぎないという、大乗仏教の唯心論的哲学をさす。4〜6世紀のインド・グプタ王朝時代に、無著(アサンガ)、世親(ヴァスバンドゥ)の兄弟によって大成され、その後、中国に伝播してから法相宗が成立し、日本にも伝わった。その伝統は主に奈良の興福寺・法隆寺・薬師寺、京都の清水寺に受けつがれ、仏教の基礎学問として、宗派を問わず学ばれた。
教義内容は、深層意識であり根本的な心であるアーラヤ識を想定し、そこから同じく深層意識であるマナ識と、さらに前六識(眼・耳・鼻・舌・身・意識)という顕在的な心が生じるとされる。これら種々の心によって、外界に実在するものは無いにもかかわらず、あるかのように判断されることになる。