作家。小説家。
1966年、長崎県生まれ。 筑波大学第二学群人間学類卒業。 卒業後商社勤務等を経て、旅行代理店に勤務。 2000年『午前三時のルースター』で、第17回サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞しデビュー。 『ワイルド・ソウル』で大藪春彦賞・吉川英治文学新人賞・日本推理作家協会賞の三冠に輝く。 2005年『君たちに明日はない』で第18回山本周五郎賞を受賞。
十数年ぶりに読んだ垣根涼介作品。歴史ものを読むのはたぶん初。どこかのブログで紹介されていたのが良い印象だったので手に取ったのだけど、正直な感想としては、とにかく長くて疲れた…。 蜻蛉の夏 作者:垣根涼介 小学館 Amazon 誰もが知る歴史のかげに、決して表には出てこない異能の道士たちが関わっていたという設定は面白くてスリリング。将軍家のいざこざとか本能寺の変とか、歴史上の結末はわかってるんだけど、そこに至るまでに実は人知を超えた能力を持つ者たちのこんな思惑や暗躍があったんだと想像するとわくわくする。戦闘における、水や炎や風がうずまく描写のリアリティもすごい。同時に、戦闘の(というか主に信長の…
★★★★☆ あらすじ 城を失って没落し、商家に居候していた宇喜多家の長男は、やがて成長して浦上家に仕え、家の再興を目指す。 戦国大名、宇喜多直家を描く歴史小説。 感想 城を失って鞆の浦でひっそり暮らしていた宇喜多家を、備前福岡の商人が訪れるところから物語は始まる。一家は商人に面倒を見てもらうことになり、長男である主人公、宇喜多直家は、商人の町で幼少期を過ごす。 肩身の狭い思いをしながらも、商人たちの様子をつぶさに見て育った直家が、身につけた商人的感覚で備前を手中に収めていく様子が描かれていく。当時は商人は低く見られていたというが、資本主義の世の中で生きる今となっては、逆にその感覚がうまく理解で…
★★☆☆☆ あらすじ 室町時代中期。洛中警護役とも親しくする浪人の男は、疫病や飢饉で荒廃した世の中を憂い、庶民のために立ち上がる機会を窺っていた。 www.youtube.com 大泉洋主演、長尾謙杜、堤真一ら出演の史実を題材にした時代劇。入江悠監督、垣根涼介原作。135分。 寛正の土一揆 - Wikipedia 感想 室町時代に実在した浪人、蓮田兵衛(はすだひょうえ)が主人公だ。前半は苦しむ庶民とそれを省みない幕府の姿を、後半はそれを憂えた主人公がリーダーとなって一揆を起こす様子が描かれる。 蓮田兵衛 - Wikipedia 苦しみを耐えに耐え、ついに機が熟したと大衆が蜂起する中盤のシーンは…
『極楽征夷大将軍』垣根涼介 文藝春秋 極楽征夷大将軍 (文春e-book) 作者:垣根 涼介 文藝春秋 Amazon 第169回(2023年上期)直木賞受賞作品。 足利尊氏…自分の世代は教科書に載っていた肖像画をすぐに思い浮かべるが、いまはあれは別人ということがわかったらしい。 尊氏、直義兄弟の物語。尊氏ってこんな人物だったのかあ。尊氏というひとがいいだけの男を神輿に担いで兄の代わりに必死に采配する弟直義。高師直などの友のような部下たち。尊氏をめぐって奮闘する周囲の人々の様がとても軽妙で面白く読める。 後半は歴史にたがわず暗い影を感じる展開ではあるのだが、これがまた歴史の現実であ り受け止める…
垣根涼介さん最新刊 「蜻蛉の夏」が9月19日に発売! 本ブログでは、大好きな作家さんのひとりである「垣根涼介さん」の作品を度々取り上げてきました。 ハードボイルと路線で定評を得ていた垣根さんですが、最近は時代物に取り憑かれているようです。 大泉洋さん主演で映画化もされた「室町無頼」は傑作。織田信長の孤独を描いた「信長の原理」も、心理描写の妙たるや見事でした。 ただ…。 最近の「極楽征夷大将軍」「武田の金、毛利の銀」についてはマナス評価です。奥深さ、重厚さが以前の作品からすると不足しているのが非常に気になりました。 登場人物の行き方・考え方をベースにし、その人生観を基盤としながらエンタメ的に歴史…
「室町無頼」面白そうだと思っていたら原作小説があるらしいじゃないですか。映画の前に読んでみたところ、「これ、どうやって映像化するんだろ……?」 原作厨の自覚がありますのでね、私。正直、不安もありましたが、映画「室町無頼」も面白かった。 この記事では原作先読み勢として、映画版と原作版の違いやそれぞれの面白さ、観どころなどを語ります。ネタバレあり。どうぞよろしくお願いします。
こんにちは。 昨日は映画のサービスデーでしたので、『室町無頼』を観てきました! 室町時代の幕府のやり方に疑問を持つ、浪人や農民たちの管理を幕府から依頼されている悪党などの様子が丁寧に描かれている作品でした。 百姓一揆で一万人もの灯が、京の街に集う光景は圧巻でした。 映画館ならではの迫力ですね。 家ではサブスクでも映画をよく観ていますが、家のTVだとこの迫力は味わえなかったことでしょう。 原作は、直木賞作家の垣根涼介氏の『室町無頼』。 ミステリー作家としてデビューされた方ですが、時代劇など、幅広いジャンルを描ける作家さんで、素晴らしい♪ 原作の複雑な人間模様や葛藤が、映画にもそのまま描写されてい…
一条真也です。東京に来ています。22日の夜、業界の新年賀詞交歓会の二次会に参加した後、TOHOシネマズ日本橋で日本映画「室町無頼」のレイトショーを観ました。劇場が「コレド室町」という施設に入っているのも縁がありました。終演時はすでに深夜でしたが、もう最高に面白かったですね。ブログ「君の忘れ方」で紹介したわが原案映画と同日公開ですが、これは今年初の一条賞候補作品です! ヤフーの「解説」には、こう書かれています。「『ヒート アイランド』の原作などで知られる直木賞作家・垣根涼介の歴史小説を実写映画化。大飢饉と疫病により荒廃した室町時代の京都を舞台に、混迷の世を顧みようとしない権力に立ち向かう無頼たち…
入江悠監督作品。最近の作品では「あんのこと」を観た。 2016年発行の垣根涼介の同名小説の映画化。 小説は読んだものの記憶が曖昧。 室町時代の荒廃ぶりを映像にすると地獄さながらだ。 これをグロテスクになり過ぎずに表現するのが監督の腕だろう。 権力に立ち向かう主人公の蓮田兵衛を大泉洋が演じる。 飄々としており当たり役だ。 兵衛の幼馴染みでありライバルある京都の警護役骨川道賢を堤真一が演じる。 兵衛に付き従う少年才蔵を長尾謙杜が演じる。 才蔵の棒術の修行シーンが見せ場だった。 柄本明が棒術の師匠役で登場。最初は誰かわからなかった。 幕府の権力者と庶民の格差をまざまざと描く。 社会の行き詰まりが頂点…
戦国時代が始まるずっと前。室町幕府が治める京都はとても悲惨な状況だったようです。学校で習う歴史は一部のエリートの動向だけで、本当の庶民たちがどのような暮らしをしていたか教わることはありません。強いものは弱いものしいたげ、弱いものはまたさらに弱いものから奪い取る。百姓たちは高い税金を取られて、道を歩くのにも通行税をむしり取られる。生活のために借金をして返せなければ土地も娘も全部奪われてしまう。 弱い立場に生まれてきた人たちは何のために生まれてきたのか、何のために生きているのかわからないほど搾取される人生。そういう時代が本当に長くつづいていたのだろうと想像できます。 そんな虐げられた層から武術ひと…