ふぢごろも はつるるいとは きみこふる なみだのたまの をとぞなりける 藤衣 はつるる糸は 君恋ふる 涙の玉の 緒とぞなりける 喪服のほぐれた糸は、あなたを恋しく思う私の涙の玉を貫く、玉の緒となるのです。 第二句「はつる」は「ほつれる」「ほぐれる」意。 第三句が「わびびとの」とされた歌が、古今和歌集(巻第十六「哀傷歌」 第841番)に入集していますが、そちらでは壬生忠岑作とされています。貫之集には貫之以外の歌人の歌も採録されていますが、その場合は 749 のように作者が明記されています。しかしながらこの 764 には作者の明記がありません。 どちらが正しいのか、確かなことはわかりませんが、古今…