月および太陽の運行に基づいて定められた暦法。
まづ、朔(新月)の瞬間を含む日を「朔日[さくじつ・ついたち]」とし、次の朔日の前日までの期間を「1箇月」とします。
月の公轉周期(朔望月)は29.53日で、これを12囘繰返すと354.36日となり、地球の公轉周期(太陽年)365.2422日に10.88日ほど足りません。この儘にしておくと、暦と實際の季節とがだんだん掛け離れて行きます。イスラム暦はほぼ純粹な太陰暦なので、實際にずれてゐます。
このずれが3年で30日程になるので、太陰太陽暦では3年に1度(正確には19年に7度)餘分な1箇月「閏月」を入れて太陽の動きとの同期を取ることにしました。
閏月を入れる目安とするために、「二十四節氣」が考へ出されました。二十四節氣は太陽の動きのみを元にしてゐるので、二十四節氣と月の動きによる暦とが大きくずれれば、そこに閏月を入れて調節すれば良いことになります。
二十四節氣は「節氣」と「中氣」に分けられます。太陽黄經が30で割切れるものを「中氣」、それ以外のものを「節氣」と謂ひます。節氣と節氣の間を「節月」と謂ひ、立春からの1箇月を節月の1月、啓蟄からの1箇月を節月の2月とします。即ち、節月は太陽の動きだけを元にした純粹な太陽暦と言ヘます。
節月は朔望月よりも長いので、どこかで中氣の入らない朔望月が出てきます。そこで、この中氣の入らない月を「閏月」とします。
具體的には、以下のやうに月の名前を決めて、これに當て嵌らない(即ち中氣がない)月を閏月とし、前月の名前に「閏」を付けて、例へば「閏5月」のやうに呼ぶことにしました。天保暦より以前は。
雨水を含む月…1月 處暑を含む月…7月 春分 …2月 秋分 …8月 穀雨 …3月 霜降 …9月 小滿 …4月 小雪 …10月 夏至 …5月 冬至 …11月 大暑 …6月 大寒 …12月
これまでの説明での二十四節氣は、天球上を一定の速度で動く假想の太陽(平均太陽)を考へ、その動きを元にして計算してゐました。しかし、地球の軌道は圓ではなく楕圓であるため、天球上での實際の太陽(視太陽)の動きは、地球が太陽に近くなる冬には速く、遠くなる夏には遲くなります。
そこで天保暦では、視太陽の動きを元に二十四節氣を求めることにしました。
ここで問題が發生します。太陽の速度が季節によつて變ると云ふことは、節月の長さが季節により變動することになります。その爲、節月が短くなる冬には、1朔望月に2つの中氣が入る場合があり、逆に節月が長くなる夏には、本来は閏月を入れる必要がないのに中氣が含まれなくなる月が發生する場合があります。
そこで、それまでの中氣と月名の關係を少し緩和することにしました。
春分を含む月…2月 秋分を含む月…8月 夏至 …5月 冬至 …11月上記のやうに4つだけにして、その間の月で調節することにし、これでなんとかうまくいくやうになりました。