「夏草や、兵どもが夢の跡…かぁ」 かの有名な歌人、いや俳人が残した言葉はその意味とは裏腹に後世にもしっかりと紡がれているというのに、俺の書いた小説はどこの書店にあるのやら。 「史上初の小学生での受賞となりましたが、どのようなお気持ちですか」 今でも覚えている。俺の輝かしい過去の記憶。向けられる羨望とカメラ、降り注ぐスポットライトその下には俺…ではなく遥か年下の小学生作家。俺の唯一の受賞作【袖擦り合うも一蓮托生】の報道は同時期に劇的な幕開けをした小学生に軒並み持っていかれたのだ。いや、過去を振り返るのは止そう。どうせ振り返ったところで何1つ得るものもないのだから。 「ってもなー、アイデアが浮かば…