森鴎外の小説。初出:大正4年1月「中央公論」
説教節正本「さんせう大夫」などによって山椒大夫伝説は今日まで伝えられている。この作品のあらすじは、その伝説によって構成される。鴎外は、ところどころを近代的に合理化して、すぐれた作品にまとめあげた。
鴎外は、古伝説の神仏の奇跡を控えめにして、人間の意志と行動力にウェイトをおいた。厨子王を逃して死ぬ安寿は、自己犠牲の美しさを示している。また、この作品には感動的な場面が多いが、とくに「ふたりはぴったり抱き合った。」という最後の一節の効果は、名文として知られている。