『家族の物語』 松田 哲夫編 「中学生までに読んでおきたい日本文学」シリーズの⑤である。それにしてもこのシリーズはとても良くできたアンソロジーで、深く感動させられる話が多い。 今回は金子光晴の「おばあちゃん」という詩から始まって、吉野せい「洟をたらした神」、海音寺潮五郎「唐薯武士」、有島武郎「小さき者へ」、幸田文「終焉」と続くラインアップだ。いずれも既読だが、何度読んでもそこに書かれた親子の情愛に胸がいっぱいになる。 ことに吉野せいと幸田文。「洟をたらした神」については何年か前のブログで書いているので触れないが、幸田文の「終焉」については少しだけ。父露伴の最期の幾日かに材を得たもので、凡庸な余…