『遠慮深いうたた寝』(小川洋子、河出書房新社)に「ブンちゃん」という話がある。 飼っていた文鳥のブンちゃんが命をまっとうしたときのことを描いている。 毎朝、水を取り換える時、指先についた水滴を上手についばんだ。でも私が絆創膏を巻いていると、怖がって逃げ回った。玄関先で宅配便の人と会話しただけで、自分も仲間に入れてくれて大騒ぎした。餌箱に頭を突っ込んで、たくさん食べた。時折、窓の向こうのミモザの木を見つめていた。 事実のみが並び、気持ちを表す表現はないが、作者のブンちゃんへの思いは痛いほど伝わる。 指先についた水滴をついばむブンちゃんを作者は間近で見ていたことだろう。仲間に入れてほしくて大騒ぎす…