前回までの記事で、小説と道徳、小説は感情を描くという前提について話しました。 その2つは、すでに明治時代の近代小説論のはしり『小説神髄』に議論がありました。 〇小説と道徳の関係 『小説神髄』上巻、小説の主眼 現代語版『小説神髄』(三) | 学術機関リポジトリデータベース 勧善懲悪を書きたいと思って、心理と風俗(人情と世態)を曲げて人物を作るな。 =勧善懲悪という主題を表現するために、小説の人物描写がゆがめるな。 小説神髄 - 岩波書店(2010年版) から引くと、 (原文の文庫版では、()内のよみがなは文字の横にある。以下同じ。) p56「作者が岡目(おかめ)の手細工もて人の感情を折衷(せっち…