1955年生まれ。 成城大学大学院文学研究科国文学専攻博士課程中退。 東横学園女子短期大学助教授、成城大学文藝学部教授を経て、現在早稲田大学教育学部教授。 専攻は日本近代文学。 現代思想を武器に文学テクストを分析、時代状況ともリンクさせた斬新な読みを提出する。 また、一人息子の中学受験を機に、国語教育、とくに入試の「国語」についても問題提起を開始する。
漱石関連文献 林原耕三『漱石山房の人々』(講談社文芸文庫,2022.02)の復刊 漱石山房の人々 (講談社文芸文庫) 作者:林原 耕三 講談社 Amazon 森まゆみが永井荷風『鴎外先生』(中公文庫,2019)の「解説 鴎外と荷風」のなかで記している。 残念なことだが、亡くなってのちも読みつがれる作家はきわめて少ない。有名な賞の作家でも次の受賞者が出てくると古い方から消えていく。そういうことを繰り返し見ているうちに、あることに気づいた。それは亡くなった時に後輩が騒がなければいけないということだ。大正11年七月九日森鴎外が亡くなった時に、永井荷風は見事にその役を務めた。(308頁『鴎外先生』) …
こういう例を知ると、私たちは言葉を通してしか世界を理解できないと考えたのではまだ不十分で、「言葉が世界だ」と考えざるを得なくなってくる。「世界は言語だ」とすると、言葉を使う人間がいなくなることは、「世界」がなくなることと同じだということになる。これが言語論的転回以降の言語観である。 『第二の性』で一番有名なフレーズは「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」だろう。「女に生まれる」と考えるのが本質主義の立場で、「女になる」と考えるのが構築主義の立場だ。したがって、女性は「女らしく」なければならないという価値観は、文化がそれを変えることを望むなら変わるということだ。だから言語的転回がなければ、…
その結果、何らかのヒューマニズムとか人格であるとか、社会に対するある種の批評性を持つような「作者の意図」が想定されていた。つまり、社会的に価値のある「作者の意図」が想定されていたわけだ。これは、文学部がまだ女子学生の受け皿だった時代の、いわば無意識の要請でもあったのかもしれない。文学を学ぶことが良妻賢母的に人格を陶冶すると信じられていた、そして実際にそのように機能していたという意味である。 今日から読み始めたのは石原千秋『読者はどこにいるのか』 読者はどこにいるのか; 読者論入門 (河出文庫) 作者:石原千秋 河出書房新社 Amazon 文章が読まれているとき、そこでは何が起こっているのか。「…
教育への支出は比較的リスクが少なく、割のいい投資だ。 こういう文脈の中で中学受験をとらえる必要があるそうだぜ。 あと気になったのは、教員志望の優秀な学生が公立中学校を 避ける傾向が、特に首都圏では顕著にあるっつう話だな。 教師は魅力ある職業じゃなくなっちまったのかもな。 さて、この本は受験を扱う著作が多い大学教授が 中学入試攻略のヒントをちりばめてくれてる作品だ。 目からウロコな入試問題のルールってのも結構あったぜ。 読解問題の特別なルールを知らずに、感性を頼りに自由に読むと、 小説の読み方としては正しいのに、マルが貰えない、とかな。 入試国語の目的は、ルールに従って答えを一つに決めること。そ…
知の教室教養は最強の武器である 佐藤優文春文庫2015年8月10日 第一刷 図書館で見かけたので借りてみた。479ページの分厚い文庫本。 装丁が面白い。佐藤さんの目力!! サブタイトルにあるように、”教養は最強の武器である”ということで 、佐藤さん曰く、「本書はがっついたビジネスパーソンや学生を念頭においた実践書」だとのこと。2015年の本であり、かつ、それ以前のレポートを引用しているところもあるので、政治関係の話は最新、というわけにはいかないけれど、歴史的に振り替えることが出来る。 様々な専門家たちとの対談、鼎談なども掲載されていて、佐藤さんの視点だけでなく、色々な話題が語られている。なかな…
ブラジル・カスアスドスルで開催中の第24回夏期デフリンピックの卓球競技の団体で,男子が銅メダル(21年ぶりのメダル),女子が銀メダル(2大会連続のメダル)を獲得した(第24回夏期デフリンピック競技大会ブラジル2021日本選手団→https://www.jfd.or.jp/sc/brazil2021/arc/category/tabletennis)。 男女ともウクライナが圧倒的に強いようだ。 卓球王国WEBでは,男子主将の井藤弘和,女子主将の亀澤理穂についてそれぞれ詳しく紹介していた。 -36歳でつかんだ初のデフリンピック。あきらめの悪い男の卓球観→https://world-tt.com/b…
ことばだけの人間を信じないと言ったが、実存(自分の人生)をかけて発する人間のことばは好きだ。 そういう実存を感じる私の尊敬する言論人 ・宮台真司 ・東浩紀 ・上野千鶴子 ・中島義道 ・石原千秋 ・小谷野敦 ・神保哲生 ・輿那覇潤 (女性が少ないのは私の不勉強さを表していると思う) 嫌いな言論人 ・テレビコメンテーター一般 ・アナウンサー一般 ・大手新聞社一般 (優等生的な、空気を読んだ、良識的な発言は気づきをもたらさないので)
休み。気持ちのよい二度寝、三度寝のちモゾモゾ起きる。昨夜はひさびさに知り合いと焼肉。寝ている間に毛穴から肉の脂が沁みだして顔が異様にトゥルトゥルしている。産経新聞の石原千秋の文芸時評が先月「15年間の最後だ。さようなら。」で終わり、今月から後釜は誰になるのだろうと楽しみにしていたら、海老沢類記者だ。石原千秋の時評は、李琴峰とバトルになり、その後新しい李作品を絶賛していたのが記憶に新しいが、一番印象に残っているのが、コムデギャルソンやマーガレット・ハウエルの服のこと。あとブレンドコーヒーとオムライスも。昨日の東京新聞「3冊の本棚」は平田俊子選で池内紀・川本三郎『すごいトシヨリ散歩』、南陀楼綾繁編…
それから 作者:夏目 漱石 Amazon 来週、文芸漫談があるのでその前に読んでおこうと。 実は今まで読んだことがなかった。漱石は『吾輩』と『坊っちゃん』くらい。こういうことがないと今更読んでみようとはなかなかならないよね。 最初事件らしきことは何も起こらないので、どういう小説なんだろうと思いながら読んでいたが、徐々に怪しい展開になってきて、最後の最後でこうなっちゃった。 僕は集英社文庫で読んだんだけど、石原千秋先生が書いた解説を読むとこの小説の内容がより深く理解できる。ただ読むだけだと主人公がなんでこんなに苦悩するのかわからないというか、大げさすぎると思うだけだろう。こういう内容の小説はいく…
「私」探しゲーム―欲望私民社会論 (ちくま学芸文庫) 作者:上野 千鶴子 筑摩書房 Amazon 上野千鶴子『増補〈私〉探しゲーム』(ちくま文庫)を本棚から引っ張り出して、ときたまパラパラめくります。原著は1987年1月刊。ちくま文庫版は1992年6月刊です。 大学の近代文学の講義で栗坪良樹先生が、上野氏『セクシィギャルの大研究』(カッパ・ノベルス、現在は岩波現代文庫)を読めとすすめてくれたのが、1987年くらいかな。最初はピンと来ませんでしたが、文庫版『増補〈私〉探しゲーム』を読んで偉い人だなと感心しました。 1980年代の文章です。世の中はバブル。ユーミンが広告代理店の仕掛けで「🎵 スキ、…
漱石の『硝子戸の中』を読んだ。ひとりで物思いに耽る、そういう意味の孤愁という単語は、石原千秋の解説文に教えられた。新潮文庫版である。 晩年の漱石が、広くはないが狭くもない部屋の中で、豊かではないが貧しくもない生活をしている。若い日の記憶のなかの友人知人たちの思わぬ訃報が増え、またみずからも身体を病んで、人生の不愉快さに辟易している。そう投げやりに思いつつも、生を決定的に否定するほどの論理も与えられずに、だらだら病と共存している。まさしく『こころ』の「先生」のような、あいまいなやるせなさを抱えて生きている。 やがて随想は幼い日の枯れた記憶におよび、とりとめのない身の上ばなしの様相をみせはじめる。…
思うところあって、本やら映画やらもろもろのオールタイムベストを10点ずつ選んでみた。 映画 十戒(セシル・B・デミル、1956) タワーリング・インフェルノ(ジョン・ギラーミン、1974) リトル・ロマンス(ジョージ・ロイ・ヒル、1979) 風の谷のナウシカ(宮崎駿、1984) 細雪(市川崑、1983) ライトスタッフ(フィリップ・カウフマン、1983) 子供たちをよろしく(マーティン・ベル、1984) 汚れた血(レオス・カラックス、1986) ブロードキャスト・ニュース(ジェームズ・L・ブルックス、1986) シン・ゴジラ(庵野秀明、2016) もともと4年前にはてなの washburn19…
2021年に読んだ本は107冊でした。なんとかノルマクリア。 シリーズものはまとめていたり、複数回読んだものも1冊としてカウントしているので、実際に読んだ数と記録上の数は一致しません。しばしば感想を添えています。 1.中里十『君が僕を 1、2』小学館 2.赤枝香奈子『近代日本における女同士の親密な関係』角川学芸出版 3.九鬼周造『日本詩の押韻』手元になく不明 4.隅田正三『「島村抱月」 : 幼年期と生いたち』波佐文化協会 5.川副國基『島村抱月―人及び文学者として―』早稲田選書 著作を読むにあたって、その著者の来歴や当時の背景を知っておくのって大事なんだなあという当然のことを改めて知った1冊。…
2年ぶりの対面とZoomのハイブリッドによるアメリカ文学会北海道支部の第31回支部大会が終わりました。支部長、事務局長、幹事(2名)がほぼ仕切っていますが、僕も幹事の一人。第1部の特別講演会の司会を仰せつかって「奴隷文学」の勉強をひと月位しました。 退屈な?日々の励みになって良かったです。ちょうアマゾン・プライム会員の見放題の映像に新しい奴隷文学の映像化があってずいぶんと参考になりました。でも講演の藤平先生によると、文学の力の方がすごいんだと。確かに『地下鉄道』を本当に地下鉄に近い映像にしてしますと、それで終わりになってしまいます。視覚的に見せられるとそこで終わって、想像力を働かせる余地がない…
おはようございます。怒涛の1週間が終わり、休日を迎えました。相変わらず毎週のように出張、それに伴う時間割変更で、なかなか仕事が前に進んでいません。今日を上手く使って終えたいなと思います。あ、部活か。 昨日研究大会の運営があり、石原千秋先生の講演を聞きました。石原先生といえば、漱石の研究で有名な方なので、とても興味深い話が多くありました。その中で、結婚に関して、女性は待っていれば良い、商品として買われるのを待つものだという価値観があって、かつての日本ではこんな差別的な考え方、表現があったのだと改めて感じました。今ではあり得ない価値観ですが、そういったところから名作が生まれたことにもきちんと向き合…
図書館へ行って借りてきた。