獣道の石狸 これは知人の池田さんがお爺様から聞いた話です。あれは昭和御代が始まってまだ間もない頃。池田さんのお爺さんが若かったころの頃の話でございます。お爺さんは村でも評判の腕利き猟師でしてな、若さも手伝って、日がな一日、山を駆け回っておりました。その日も、お爺さんは獲物を追って、いつもは踏み入らぬ山の奥深く、古びた獣道へと迷い込んでおりました。鬱蒼と茂る木々が陽の光を遮り、昼なお暗いその道は、湿った土と苔の匂いが立ち込め、気味の悪い静けさに満ちていたと申します。しばらく進んだ道の傍ら、ふと、古びた石像が目に入りました。高さは膝丈ほど。風雨に晒され、輪郭も曖昧になっておりましたが、丸い腹を突き…