第一章:五歳の神隠し、横川の暗い闇 卯月の柔らかな日差しが、深川の掘割にきらきらと光の粒を零しておりやす。けれど、あたい、凛花の胸には、姐さんがふと見せる遠い眼差しの理由が、今なら少しだけ解るような気がいたしやす。これは、姐さんの実の兄上……今は「結城清十郎」と名乗るお方の、数奇な運命の始まりのお話でございます。清十郎様、もとの名を高倉隼人様と仰いました。五つの春、隼人様はすでに塩谷流の道場に通い、小さな手で木刀を振るう聡明な子であったそうでございます。ところがある昼下がり、隼人様は煙のように行方を眩まされました。お父上様もお母上様も、屋敷に出入りする鳶の親方や南町の同心、若党まで総出で八方に…