多くの要素からなり,部分が全体に,全体が部分に影響しあって複雑に振る舞う系。従来の要素還元による分析では捉えることが困難な生命・気象・経済などの現象に見られる。高精度の測定技術,カオス・フラクタルなどの新概念の導入,コンピューターの活用などによって新しい研究対象となりつつある。
三省堂提供「デイリー新語辞典」より
世界は変わりました。これまでは自身の才能よりも、周りに合わせて能率の良い仕事が出来るかどうかが大切でした。しかしこれからは違います。現在は勝者総取りの世界です。全てを手に入れるか取られるかのどちらかなのです。このような世界で何の取り柄もない者はどう生きていけば良いのでしょうか。 今まで人々は、与えられた仕事を存分に頑張れば良かったのです。しかし努力してもそれに見合う報酬が得られない世界となりました。それどころか大きな変動に見舞われて食べていけなくなる事さえあります。これからの世界は、誰も予想がつかないのです。 大規模なプロジェクトが多くなりプロジェクト管理手法も重要となっています。けれどもひと…
今しがた松下真先生の『統計分布を知れば世界が分かる』(2019)を読了し、読後感をまとめようとキーボード入力を開始したところであります。本書は碩学の啓蒙書だけあって面白く要を得て勘どころも教えてくれる。 統計分布の基本と自然界と社会への実際の適用がわかりやすい。しかしながら、主題は複雑系とべき乗測の出現の普遍性の提唱であって2010年を過ぎてもなお、格段のなかったことが本書からうかがい知れる。 タイトルは出版社がつけたにせよ統計分布だけでは次の一手にはならないのだと思う。 本書の後段に筆者がまとめているように「複雑系の構造とダイナミクス」に踏み込む必要性がある。しかし、それらはほとんどコンピュ…
ゲノムが語る生命 ―新しい知の創出 – 集英社新書 の参考文献にあがっていたもののうち、特に注目したいものを紹介します。 『〈身〉の構造 身体論を超えて』(市川 浩):講談社学術文庫|講談社BOOK倶楽部 『知の構築とその呪縛』大森 荘蔵 | 筑摩書房 『心はどこにあるのか』ダニエル・C・デネット | 筑摩書房 生命とは何か « 大学出版部協会 おまけ 中村前掲書p80 「科学が進歩するとは、説明できることが多くなることだという思い込みがありますが、研究が進むほどに、わからないことが増えると考えた方がよいかもしれないのです。」 以上です。 12/27追記 『言葉と無意識』(丸山 圭三郎):講談…
2019年度東大入試国語では、中屋敷均『科学と非科学』が出ました。 https://www.greatvoyage.jp/database/tokyo/2019_kokugo_daiichi_kaitou/ 東大現代文2019第1問解説|普通の東大生 ねこ 中屋敷 均 Hitoshi Nakayashiki | 現代新書 カオスの縁という言葉が特徴的です。 カオスの縁 - Wikipedia ここに引かれるカウフマンは 1076夜 『自己組織化と進化の論理』 スチュアート・カウフマン − 松岡正剛の千夜千冊 でも有名。 また、カオスの縁は Category:複雑系 - Wikipedia の中…
「手綱次第で、見事な走りも暴れも停止もする」、そのような「生きているかのような振る舞いをする音源」を特定する一般名称がなかったので、「複雑系」の名を借りて「複雑系サウンド」と命名した。どんなサウンドなのかは、プロフィールやこちらのサイトを参照。 音源を分類すると、複雑系サウンドは、全体論のカテゴリーに属し、物理モデル音源の中の自励式(管楽器や擦弦楽器など)を含む。物理モデル以外の複雑系サウンドとは、例えば、レスラー方程式の挙動を音に変換したもののように、生楽器の発音メカニズムを同定したものではない複雑系数理モデルが該当する。 最後に(趣旨から逸脱するが)、複雑系に関して、興味深いサイトを見つけ…
生態系という秩序は生物や環境条件が複雑に組み合わさることで、結果的に全体として辻褄が合うようになっています。みんな勝手に振る舞い、好き勝手にやっているけれど、どこかで帳尻があって安定しているということです。サステイナブルとかいって、持続可能な社会をめざす努力などしなくても、もともと世の中は持続可能にできているということ。 このことを説明する言葉で私が初めて接したのが「スケールフリー・ネットワーク」です。酒井敏『カオスなSDGs』(集英社新書、2023年)で説明されていました。私がこのスケール(基準)がフリー(ない)という構造から、ストレス・フリーな人生も送れると思えたのが一つの収穫です。 なぜ…
【中古】 三本の矢(上)/榊東行(著者) 【中古】afb価格: 110 円楽天で詳細を見る 【あらすじ】 経営難が噂される日本不動産金融銀行について、経営悪化を認める大蔵大臣の失言により金融パニックが日本全土に波及する。同銀行は倒産し、「昭和金融恐慌」が再現された。大蔵省は対応策を策定すべく、緊急チームを編成し、事態収拾にあたる。その一方で、大蔵大臣の答弁書が何者かによって差し替えられており、大蔵大臣の問題発言は作為的な陰謀であることが判明する。 大蔵省銀行局の紀村隆之は突然官房長に呼び出され、「蔵相失言事件」を仕組んだ犯人を調査するよう命じられる。しかも一両日中発表される、金融パニックへの対…
あけましておめでとうございます。2023年1月6日の産経新聞の1面に、「SNSが政治を動かす」という書き出しで分散型インターネットWeb3が紹介されていた。インターネットはより民主的な仕組みに移行してきており、旧来の中央集権型から非中央集権型に変貌しているそうだ。これを見て、第一感「複雑系」を連想した。 さて、複雑系に係る書籍「複雑で単純な世界」には、複雑系の十分条件(八つの条件)が記載されている。その条件とは、①相互作用をしている多数の要素を含む、②構成要素がフィードバックの影響を受ける、③構成要素が過去の結果に基づいて戦略を変更できる、④開いた系である、⑤生きているように見える系である、⑥…
サウンドには直接関係ないが、周期波形を扱う点で共通している複雑系モデルとして、FitzHugh-Nagumo方程式(以降FHNとする)があり、この単純な式に秘められたすごい能力を紹介する。 さてFHNは、1963年にノーベル医学・生理学賞を受賞したHodgkin-Huxley方程式(以降HHとする)をより簡素化した2連立非線形微分方程式である。HHと同様、神経細胞の数理モデルであり、ヤリイカの巨大神経軸索が実験対象になったらしい。 外部から刺激が与えられると、一定レベルの活動電位(パルス)が発生し、その発生タイミングが情報となって、神経線維を通って脳に伝えられる。この活動電位が発生した直後の2…
写真の中央に鎮座する「複雑で単純な世界: 不確実なできごとを複雑系で予測する」という書籍を紹介する。なぜこの一冊を紹介したかというと、複雑系に関する情報を投稿するにあたり、基本的なことを思い出すために、この本に再度目を通し、改めて良書であると思ったからだ。 「科学者の間ですら複雑系の定義があいまいである」という趣旨の書き出しが小気味よく、下記①②の点で基本に立ち返ることができる。 ①複雑系と見なせるための十分条件(八つの条件)が、第1章の4に記載。 ②非線形力学/複雑系/カオスの関係が、第3章の1に記載。 写真は定価1900円だったが、単行本(500円程度)もあるので、これから複雑系を勉強する…