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魔女

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一般

魔女

まじょ

魔女を意味するwitchは古英語wiccaの女性形でOEDでは起源不明としている。W.ジャン・ボダン*1は「魔術師の悪魔憑き妄想」(魔女論)で「悪魔と結託する者」と定義し、ウェスト*2は同義語としてmagician、sorceress、juggler、enchanterを挙げる。またイギリスにおける魔女狩りの元凶ジェームズ1世は間接的に悪魔と契約した者をsorcerer、魂を悪魔に売り渡した者をnecromancerと呼んだ。ほかにmaga,striga,venefica,malefica,indivina,lamiaなどの単語が魔女裁判の記録に残されている。

英語以外の言語での魔女は、フランス語のsorcierは「運不運を告げる者」discour de Sortsから、ドイツ語のhexeは「垣根の上(を飛ぶ)女」hagazussaから来ている。イタリア語stregaは女放浪者、スペイン語brujaは女占い師の意味がある。

創作上の魔女

キリスト教以前

ヨーロッパにおける魔女の原型は古代オリエント地中海世界の豊穣神信仰、亡霊信仰にある。キリスト教に駆逐されたそれら地母神、太母神がゲルマンケルトスラブ神話と混ざり合ったものと考えられる。飛行、変身、子供殺し、人食いといったイメージを共有する。

ホメロスオデュッセイア」のキルケーは人を杖で叩いて豚に変えてしまう。

ホラティウスは「サティラエ」(風刺詩)の中で毒草を煎じる魔女たちを描いている。

2世紀ローマのアプレウス「黄金の驢馬」に描かれる魔術で愛人を殺し、膏油を塗ってミミズクに化けて空を飛ぶ魔女は中世ヨーロッパの魔女像と通底している。

キリスト教以降・魔女狩り以後

異教の亡霊は家畜や財産に損害を与える悪行をなすものとされた。悪魔と契約し神を冒涜するサバトに集う魔女は中世の悪魔学が作り上げたイメージである。

シェークスピアマクベス」不吉な予言をする三人の魔女

ゲーテファウスト」(ヴァルプルギスの夜)ドイツ中部ハルツ山地の最高峰ブロッケン山で五月祭前日に行われるサバトゲーテの一節に描かれたことで有名となった。

エドモントンの魔女」17世紀イギリス戯曲。実際の魔女狩りを取り上げて批判した最初の劇。

ジュール・ミシェレ「魔女」魔女を民衆の基盤にある土俗的豊穣神信仰と結びつけたロマン主義歴史書。上巻は魔女とされた女性を主人公としたフィクション虫プロアニメ哀しみのベラドンナ」の原作となった。下巻は実際の魔女裁判の記録。

童話としての魔女

魔法使いの女性版。邪悪で、ひねくれものというパターンが多く、人に呪いをかけるとされている。西洋では老婆の姿で描かれる事がしばしば。が、若い女性として描かれる魔女も同じくらいに多い。

使い魔としての黒猫をはべらせ、黒ずくめの衣装に三角帽を被って、箒(ほうき)に乗って月夜の空を飛ぶ、というイメージが定型化されている。→ハロウィーン

グリム童話

ドイツのメルヘンにおける悪役。まがった鼻をもち、杖をつく腰の曲がった老婆でたいがい森の中に棲む。

シンデレラ」(仏ペロー版)名付け親の妖精、善い魔女

幻想怪奇小説、ファンタジー

豊穣信仰、異教への回帰。

S.T.コールリッジ「クリスタベル姫」両性具有の誘惑者である蛇身の魔女ジェラルダイン

バルザック「風流滑稽譚」男を取り殺す美少女

ゴーゴリ「ヴィー」(「ミルゴーロド」第3話)復讐する妖女

W.マインホルト「琥珀の魔女」魔女として処刑されかけた娘

A.マッケン「パンの大神」男を破滅させる美少女「白い人々」呪詛を行いサバトで踊る白い妖精

M.R.ジェイムズ「魔女の樹」(泰皮の樹)死後尚残る魔女の呪い

H.P.ラブクラフト「魔女の家の悪夢」悪夢に棲みサバトで生け贄の心臓を喰らう

A.メリット「魔女を焼き殺せ」呪いの人形を操る魔女マンディリップ

アイラ・レヴィンローズマリーの赤ちゃん」悪魔の子供を産む母親

スティーヴン・キング「痩せゆく男」(リチャード・バックマン名義)呪いのパイで復讐するジプシー

C.S.ルイスナルニア国ものがたり」自らの欲望で世界を破滅に導く女王ジェイディスとその化身

現代ファンタジー、キャラ属性としての魔女

米テレビシリーズ「奥さまは魔女」(Bewitched)世界中で人気を博したラブコメディ。

米テレビシリーズ「可愛い魔女ジニー」(I dream of Jeannie)シドニー・シェルダン脚本による「奥さまは魔女」の二番煎じ。

キム・ハリスン<ホローズ・シリーズ>魔女が主人公の探偵もの

日本の魔法少女についてはwikipediaに詳しいリストあり。

アニメ少女革命ウテナ」で榎戸洋司は魔女を自分を守るために男性の力を間接的に行使する女性として描いている。

宗教としての魔女

  • 自然崇拝者としての魔女

キリスト教よりも以前から存在する(と自称する)自然崇拝宗教の実践者(pagan)は、現代でも「魔女」を名乗る事がある。この場合、男性も魔女と呼称する。

黒魔術、黒ミサなどを実践し、キリスト教の悪魔を信仰するアンチキリスト教の信者女性も、自らを魔女と名乗る事がある。

歴史としての魔女

中世キリスト教が、他の宗教を邪悪で野蛮なものとして駆逐した時に、他の宗教の実践者を魔女と考え、定義を作ったとされている。→中世ヨーロッパの魔女狩り

教皇権が世俗の王権に勝り、教会法がローマ法に優先するようになると異端審問は厳しさを増した。とくに最大の反教会勢力カタリ派との戦いの中で強硬化していった。そうした中、異端と呪術者の区別は否定され、農村の迷信はキリスト教会によって悪魔学として体系化される。ドイツ人の異端審問官シュプレンガーとインスティトーリスによる「魔女への鉄槌」(1486年)が魔女狩りのバイブルとされた。その指針に従い、薬草や産婆術に詳しく、人や家畜の病を癒したり相談事にのったりする女占い師など「賢い女性」がまず魔女に仕立て上げられていった。涜神の魔女集会サバトのイメージを広めたのはピエール・ド・ランクル「悪天使および悪魔の無節操に関する展望」(1612年)である。

ヨーロッパ随一の魔女狩りの国であったドイツでは、16世紀から18世紀半ばまでで3万人以上が焼き殺されたと言われる。またフランスのロレーヌ地方の裁判官ニコラ・レミは1576年-1606年に二千〜三千人の魔女を処刑した。*3

それ以前から神話の中にも、悪の魔法使いとしての魔女は存在した。

ウーマンリブ・フェミニズムとしての魔女

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*1:フランス、16世紀

*2イギリス、18世紀

*3池上俊一「魔女と聖女」(1992)講談社現代新書p22

目次

映画

魔女

まじょ

Haxan

1921年スウェーデン映画。

 監督・出演はデンマーク無声映画の巨匠ベンヤミン・クリステンセン

 中世の魔女の実態を学術文献に基づき再現した異色ホラー映画。

 理不尽な魔女裁判の苛酷な描写は、カール・ドライヤーの『裁かるるジャンヌ』(1927)などにも影響を与えた。

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