週のはじめに考える 日中「愛郷主義」の勧め - 東京新聞(2018年6月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018061002000197.html
https://megalodon.jp/2018-0610-1014-29/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018061002000197.html

長く凍(い)てついていた日中関係がようやく改善軌道に乗りました。さらに歩を前へ進めるため、民間知中派の「愛郷主義」の勧めに耳を傾けてみましょう。
五月に日本を訪問した中国の李克強首相は、安倍晋三首相との首脳会談で「今まさに波風が過ぎ去って晴天が現れ始めた」と述べました。関係改善へ真の晴天を取り戻す正念場です。何よりも、不信感の根にある歴史認識や領土の問題が両国関係を再び揺さぶることのないよう、日中の政治家には知恵を絞ってほしいと期待します。

◆「民をもって官を促す」
今年は一九七二年に国交正常化を成し遂げた両国が、「不戦の誓い」ともいえる平和友好条約を結んで四十周年の節目の年です。
隣国との関係を振り返ると、国交正常化に道をつけたのも、近年のような政治的にぎくしゃくした時代を下支えしたのも、地道な民間交流だったのです。
五〇〜六〇年代に、中国は米国などの封じ込め政策に苦しみました。当時の周恩来首相は「民をもって官を促す」という民間外交を提唱し活路を探りました。
日中間では六〇年代半ば、準政府間協定に基づく長期バーター貿易が始まりました。
中日友好協会長も務めた廖承志(りょうしょうし)氏と共産圏外交に尽力した経済人の高碕達之助氏が調印し、両氏の頭文字を取って「LT貿易」と呼ばれます。
これは、政財界人の連絡や新聞記者の相互派遣などの窓口の役目も果たし、国交正常化を実現する力強い底流となりました。
パンダブームに沸いた国交正常化の直後、日中相互往来は約一万人でした。今やその千倍近い人たちが互いの国を訪問しています。
政治の機能不全を支えてきた民間交流の役割は大変重要でした。交流を通じて個人的な絆を深めた人たちが日中双方にいます。
ただ、過去の民間交流は代表団の相互訪問や会談など、公的パイプに準じる形式重視の側面もありました。今後は多くの人たちが胸襟をひらいて相手を見つめ、真の相互理解につながるような民間交流に発展させることが肝要です。

◆解ける「反日」の先入観
民間交流の将来について、「愛国主義より愛郷主義で」と提唱するのが元上海三井物産社長の星屋秀幸・森ビル特別顧問です。
名古屋市で五月に開かれた東海日中関係学会の講演で、星屋さんは「偏狭な愛国主義は対立を生みます。それよりも日中双方の人たちが故郷の観光資源や郷土の味をアピールし、人と人が触れ合う交流を活性化させてはどうでしょうか。故郷自慢は日本人も中国人も大好きですよ」と提言しました。
確かに、「爆買いブーム」はヤマを越えた感があります。最近では、中国人観光客は日本を訪れると、健康に良い温泉、サービスの行き届いたゴルフなど、体験型観光を楽しむ傾向にあります。
日本各地の郷土グルメや名酒を楽しむ旅や、中国でも大人気の日本アニメの聖地巡りをする若者など、個人の嗜好(しこう)を最優先させる人が増えています。
こうした訪問は、日本と日本人の本当の姿を知ってもらう好機です。人口減による元気のなさに悩む日本の地方にとっては、「愛郷主義」で中国人観光客を呼び込むチャンスであるともいえます。
中国政府は九〇年代、「愛国=反日」とする愛国教育を進めました。残念ながら、日本をその目で見たことのない中国の若者には歪(ゆが)んだ日本観も残っています。
名古屋では毎年、「中国春節旧正月)祭」が開かれます。今年で十二年目を迎えた日本最大の春節祭です。日中十四万人余が交流を続ける光景を目にすれば、「反日」の先入観も解けていくに違いありません。
「愛郷主義」の勧めは、要は「国と国」の前に「人と人」であると説くものではないでしょうか。
星屋さんは、日本の若者にも提言しました。「中国=発展途上」という先入観を排し、等身大の中国を見つめようというのです。

◆「中国=発展途上」ですか
中国が一人当たり国内総生産(GDP)などの指標で発展途上国なのは事実です。しかし、星屋さんは「中国が後発国の優位性を活用し、一気に世界の最先端に“かえる跳び”した分野にも目を向けるべきです」と指摘します。
中国のネット人口は七・五億人、スマホ決済は六百六十兆円と日本のGDPを超えます。上海の女子大生は「上海は東京より進んだキャッシュレス社会です」と、故郷自慢します。日本の若者も見てきたらどうでしょうか。
首脳会談では「人的、文化的交流を深め、より多くの国民感情の距離を縮めよう」との認識で一致しました。「愛郷主義」は距離を縮めるアイデアの一つでしょう。

(書評)五日市憲法 新井勝紘 著 - 東京新聞(2018年6月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018061002000195.html
https://megalodon.jp/2018-0610-1016-25/www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018061002000195.html

◆無名の起草者の民権思想
[評者]古関彰一(獨協大名誉教授)
「五日市憲法」とは、明治維新百年にあたる一九六八年に、東京の西に位置する五日市町(現あきる野市)の旧家の土蔵の中から発掘された自由民権期の憲法草案である。発掘に携わったのは著者はじめ、大学ゼミの教授であった歴史家の色川大吉と二十代前半の若者たちであった。
五日市憲法の起草者は、当時まったく無名の千葉卓三郎、二十八歳。そこには自由民権運動を担った若々しい近代憲法観があった。
五日市憲法地方自治の項には「府県の自治は干渉妨害すべからず」とか、教育の項には「子弟の教育においては、学科および教授は自由、然れども小学の教育は、父兄たる者の免るべからざる責任」と書いてあったという。
著者は、この憲法の作者・千葉卓三郎を求めて出生地の宮城県志波姫(しわひめ)を訪ね、それから石巻、仙台そして遂(つい)には神戸まで追って生存する孫にも会っている。
卓三郎は、放浪の旅のなかで広い学問と宗教を経験している。仙台藩士として参加した戊辰(ぼしん)戦争に敗れた卓三郎は軍医となり、ラテン語や数学を学ぶ。さらに浄土真宗キリスト教、ハリストス正教会にも出会い、小学校の教師にもなる。投獄の憂き目にすら遭っている。
こうした広い視野と様々な経験が五日市憲法に生かされていると見ることができよう。著者は卓三郎の多様な経歴を追体験しながら、憲法が生まれた背景を丹念に追っている。本書のこの部分は実に感動的で、歴史を掘りあてる醍醐味(だいごみ)を読者に伝えてくれる。
自由民権運動の核になった民権結社は、著者の調査によると現時点で二千百八十九社にのぼるという。当時の運動の大きさに気付く。五日市憲法もこうした地域の、いわば「勉強会」である「学芸講談会」に集まった若者とともに生まれたのである。
米国憲法百五十周年に際して、ローズベルト大統領は、「米国憲法は素人の文書だ」と言い切ったが、この五日市憲法も素人の、そして若者の起草であったのである。

五日市憲法 (岩波新書)

五日市憲法 (岩波新書)

岩波新書・886円)

専修大教授を経て高麗博物館館長。編著『自由民権と近代社会』など。

◆もう1冊 
松沢裕作著『自由民権運動』(岩波新書)。その理想と挫折を描く。

(書評)教科書にみる世界の性教育 橋本紀子・池谷壽夫・田代美江子 編著 - 東京新聞(2018年6月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018061002000193.html
https://megalodon.jp/2018-0610-1021-57/www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018061002000193.html

◆「寝た子を起こすな」を否定
[評者]秋山千佳(ジャーナリスト)
東京・足立区立中学校の性教育の授業で「性交」「避妊」という語を使ったのは学習指導要領の範囲を超えているとして、都教委が区教委を指導したことが記憶に新しい。が、これは中学生には早すぎる知識だろうか。私が取材した公立中学校には、五年間で中絶した生徒も出産した生徒もいた。特に後者は成績・品行とも問題なしとされ、教師どころか保護者にも出産まで妊娠に気づかれず、望まぬ事態に至ったのだった。
学校での性教育がタブー視される日本とは対照的に、この分野の国際的な進展ぶりがわかるのが本書だ。ヨーロッパとオーストラリア、中国、韓国の八カ国の教科書を軸に現地調査の結果を紹介していき、最後に日本の状況や提言を示す。
教科書の写真は各国の個性が一目瞭然で楽しい。避妊法にはどの国もページを割く。誰もが被害者になりうる性暴力について、例えばオランダの教科書は「性暴力:一クラスに三人」という見出しでセクハラやリベンジポルノ、デートDVを取り上げるなど具体的だ。
日本以外の国々が性教育のベースにしているものの一つが、ユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』だ。現代の子どもや若者をめぐっては、望まない妊娠や性感染症のみならず、インターネットに氾濫する性情報や、性的なメッセージや写真を携帯電話に送る新種の性暴力など、各国共通の問題がある。ガイダンスはそんな現状を踏まえ、子どもたちに性と生殖の健康、さらには尊重しあう人間関係づくりといった「よき生活」を保障することを性教育の到達点とする。
翻って日本の教科書はというと、性感染症予防にコンドームが有効と伝えながら、使用法には触れない。性教育をすると性行動が早まりかねないとする「寝た子を起こすな」論がこの国では根強いが、ユネスコの研究で否定されていると本書は示す。性教育のこれからを議論するために必携の一冊だ。

教科書にみる世界の性教育

教科書にみる世界の性教育

かもがわ出版・2160円)

橋本・女子栄養大名誉教授

池谷・了徳寺大教授

田代・埼玉大教授

◆もう1冊 
秋山千佳著『ルポ保健室 子どもの貧困・虐待・性のリアル』(朝日新書

参院合区救済の自民案 裏口入学枠は認められぬ - 毎日新聞(2018年6月10日) 

https://mainichi.jp/articles/20180610/ddm/005/070/008000c
http://archive.today/2018.06.10-011842/https://mainichi.jp/articles/20180610/ddm/005/070/008000c

これほど露骨な党利党略の選挙制度改革案を平然と出してくる自民党の無神経さにあきれる。
おととい開かれた参院改革協議会で、参院定数を6増(埼玉選挙区2増、比例代表4増)とする自民党案に野党から批判が噴出した。
参院選の「合区」導入に伴い、選挙区から立候補できなくなる現職を比例代表名簿に設ける特定枠で救済するのが自民案の狙いだ。
参院選挙区の「1票の格差」を是正する暫定措置として導入された合区だが、投票率低下などの弊害が出ているのも事実だ。都道府県単位の選挙区を基本とするのには、それなりの理由がある。
投票価値の平等というのは憲法の要請だ。合区を避けて答えを見つけようとするなら、参院議員を都道府県代表と位置づける憲法改正か、都道府県の枠組みを取り払うブロック制のどちらかしかないだろう。
いずれにしても、衆院とは異なる参院のあり方を根本から問い直す議論が必要になる。自民党改憲による合区解消を主張してきたが、参院のあり方に踏み込まない条文案に他党の理解は広がっていない。
そもそも全国区で争う比例代表と、選挙区の1票の格差とは直接関係しない。改憲が難しいからといって、一転して合区を固定化し、選挙区候補者の調整弁に比例代表を使う発想は著しく合理性を欠いている。
自民党は「国政上有為な人材」を当選させるためという強引な理屈で特定枠を正当化しようとしている。国政の役に立つかどうかと合区の問題は別次元の話だ。候補者調整で漏れた現職を有権者の審判とは別の党内事情で救済するのは、選挙の「裏口入学」にほかならない。
気になるのは、投票価値の平等を重視する立場の公明党が自民案に一定の理解を示していることだ。議員1人当たりの人口が最も多い埼玉の定数増に格差是正の効果があるのは確かだが、現有議席を確保しやすくなるという打算が感じられる。
国民の代表を選ぶ選挙制度は民主主義の根幹をなすルールだ。与党が数の力を振りかざして一方的にゆがめることは許されない。
自民案のどこが抜本改革か。来夏の参院選までに必ず結論を得ると定めた公職選挙法の付則がむなしい。

世帯収入より母親の学歴が影響? 大学進学断念の背景 高3生らに沖縄県が初の大規模調査 - 沖縄タイムズ(2018年6月5日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/262584
https://megalodon.jp/2018-0610-1026-07/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/262584


沖縄県は4日までに、高校3年生や保護者らを対象に実施した高等教育を受ける機会の創出や環境整備に関する調査結果をまとめた。大学進学希望者は68・7%だが、実際の大学進学予定は54・4%と差が生じた。理由では、生徒は学力と家庭の経済状況が「ある程度」を含めてそれぞれ約7割が関係すると回答。世帯収入が低いほど経済状況を理由に挙げる割合が高かった。
県企画調整課は「大学新設などハード面の整備を検討する前に、県内の現状を踏まえたきめ細かな対応が重要だ」と指摘。各種奨学金などによる経済支援のほか、県内高等教育機関の受け皿拡大などの検討も必要だとしている。
全国に比べて低い沖縄の大学進学率などを受けた調査で、2017年11月下旬から約1カ月間、離島を含めた公私立28校で2660件を配布。高3生徒1954件、保護者1899件から回答を得た。同様な大規模調査は初めてという。
進学希望するも実際にできなかった関係性を世帯収入別にみると、200万円未満で家庭の経済状況が84・4%と最も高い一方、400万円以上では自身の学力とする回答が最も多く7割以上。800万円以上の生徒の57・1%が第1希望で県外(国内)に進学予定だが、200万円未満は27・5%だった。
同課によると、データの統計分析では「世帯収入よりも高校生活の充実度や自己肯定感、母親の学歴などの方がより大学進学に影響を与えている」という。
一方、18〜39歳の県出身者への調査(965件回答)では、希望進路を選択するための必要な支援策として、返済義務のない給付型奨学金(61・6%)、希望の職業に就くために必要な勉強や資格の情報提供(61・1%)などだった。
進学断念者への支援策の試算では、給付型奨学金(学生290人)は月額7万円で11・2億円が必要とした。また県内の既存私立大学へ学部を新設した場合、文系は1学年250人で初期費用約78・5億円、理工系で約138・5億円とした。

(大弦小弦)子どもたちの輝きと、陰で支える大人たちの軌跡を… - 沖縄タイムズ(2018年6月9日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/264758
http://archive.today/2018.06.10-012933/http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/264758

子どもたちの輝きと、陰で支える大人たちの軌跡をまとめた記念誌「きむたかの翼」が手元にある。あでやかな衣装に満面の笑みで達成感を表す100人近い少年少女の表紙写真。その中央に遠慮がちに納まる大人がいる

うるま市初代教育長の上江洲安吉さん。与勝地区の中高生による現代版組踊「肝高の阿麻和利」の生みの親である。生涯を地道に誠実に人材育成にささげ1日に90歳で亡くなった

▼旧勝連町教育長時代、組踊「二童敵討」で逆臣と描かれた勝連按司・阿麻和利のイメージ払拭(ふっしょく)に奔走した。民に慕われた歴史をひもとき、地域が誇る英雄として蘇(よみがえ)らせた

▼現代版組踊を発案し、子どもたちが足元の文化に触れ、感動体験する機会をつくった。勝連城跡をライトアップした2000年の初演が終わると若者は肩を抱き合って涙を見せた。上江洲さん自身、長い教育経験で忘れられない場面となった

▼活躍の場は県内外に広がり08年にはハワイに渡った。重ねた公演は304回、延べ17万5千人を動員。巣立った若者は約400人になる

座右の銘は継続は力なり。国際化する社会で与勝の子が20年後にリーダーとして活躍することが願いだと家族に語っていた。その20周年を来年迎える。子どもたちを支えた「陰の英雄」の功績は人材という形で花開きつつある。(溝井洋輔)

夜間中学支援再開 教育確保は行政の責務だ - 琉球新報(2018年6月10日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-735609.html
http://archive.today/2018.06.10-012844/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-735609.html

教育庁は2017年度で打ち切ったNPO法人珊瑚舎スコーレの自主夜間中学校に対する支援について、18年度内に再開する方針を決めた。多くの人々が支援継続を求めており、署名は2万305筆に上った。県がこうした声に耳を傾け、支援再開に踏み切ることを高く評価したい。
教育庁は戦中・戦後期の混乱で義務教育を修了できなかった人の学びを後押しするため、11年度から支援事業を開始した。講師の手当や光熱費、施設の賃借料の一部を補助していた。
支援対象者は1932年〜41年生まれの今年86歳から77歳になる人たちだ。17年度時点で珊瑚舎スコーレなど3事業所が支援を受けていた。2事業所は17年度までに対象者の受け入れを終えていたが、珊瑚舎スコーレは7人の対象者のうち、5人は18年度も在籍予定となっていた。珊瑚舎スコーレの17年度支援額は395万円だった。
ところが県教育庁は事業の当初終了予定が15年度だったことを理由に、この年度に入学した対象者が卒業する17年度で支援を打ち切った。理由について「事業の成果はある程度出た」と説明していたが、5人の在籍者がいる中での打ち切りは拙速な判断だったと言わざるを得ない。
珊瑚舎スコーレは現在、義務教育未修了の人は無料、学び直しの人には年額3万円で授業を提供している。その理由を星野人史代表は「貧困のために義務教育を諦めなければならなかった人たちに、お金で再び学問を諦めさせるわけにはいかない」と説明する。運営費は寄付などに頼らざるを得ず、行政の支援は不可欠だ。
教育基本法の4条は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とうたっている。国と地方公共団体には、経済的理由による修学困難者への支援を講じるよう定めてもいる。教育の機会を等しく確保することは行政の責務だ。
夜間中学は戦後の混乱や不登校などを理由に、義務教育を修了できず学齢期を過ぎた人たちが学び直しをしている。全国8都県に市町村立の夜間中学が31校ある。しかし県内には公立の夜間中学は1校もない。珊瑚舎スコーレなどの民間が受け皿となってきた。
県は現在、公立中学校夜間学級等設置検討委員会を設置して、課題を洗い出し、需要調査を進めている。15年度に発表した県子どもの貧困対策計画でも夜間中学の設置検討を挙げている。文部科学省も全都道府県での夜間中学の設置方針を掲げている。
県は公立設置までは、民間の夜間中学への支援事業を継続すべきだ。現在設けている支援対象の年齢枠も取り払い、支援を拡大してほしい。

<金口木舌>「なぜ、基地や政権に批判的なのか」・・・ - 琉球新報(2018年6月10日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-735610.html
http://archive.today/2018.06.10-013234/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-735610.html

「なぜ、基地や政権に批判的なのか」―。琉球新報の報道について知人からよく聞かれる。いろいろな説明が思い浮かぶが、一言で答えている。「日本が戦争をしないようにです」

▼大抵、「皆が平和を望んでいる。戦争をすると思うのか」と返ってくる。「平和のため」が名目の戦争もある。絶対起きてはいけないことに対し、警戒に、警戒を重ねてもしすぎるということはない
▼映画「万引き家族」でカンヌ国際映画祭の最高賞を受賞した是枝裕和監督は、林芳正文科相が示した祝意の意向に辞退を表明した。フランスの有力紙は、安倍政権が是枝監督に賛辞を送らないのは監督が日本の政治に批判的だからだ、と報じていた
▼是枝監督は7日、自身のブログで辞退の理由をこうつづった。「映画がかつて、『国益』や『国策』と一体化し、大きな不幸を招いた過去の反省に立つならば」「公権力(それが保守でもリベラルでも)とは潔く距離を保つのが正しい振る舞いなのではないか」。大いに賛同する
▼沖縄の新聞も戦前戦中にかけては、軍の意向に沿った「戦意高揚」の報道に終始した。那覇市若狭の「戦没新聞人の碑」では、毎年の慰霊の集いで記者が戦争のためにペンを取らない誓いを重ねる
▼「万引き家族」では登場人物の一人が、自分の生きる環境に疑問を見いだし、思い切った行動に出る。監督の姿勢にも重なる。