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萌え理論ブログ

2015-04-15 不動産 購入 災害 津波 リスク

家を買うときに津波と風呂場のどちらが高リスクか?

概要

 東日本大震災の津波による被害は、読者の方にとっても記憶に新しいと思います。三陸海岸にある石碑には、「ここより下に家を建てるな」と刻まれていました。

 ですから、今の時代に家を買おうと考えている人は、海岸に近い場所で津波が来るリスクを、もちろん考えておられると思います。

 しかし、その一方で風呂場のリスクが軽視されているのではないかと思い、このような記事を書きました。風呂場は津波に匹敵する、あるいはそれ以上の殺人力を持っています。どういうことなのか、以下見ていきましょう。


津波と風呂場のどちらが高リスクか?

交通事故や災害で亡くなる人はどれくらいいる?|公益財団法人 生命保険文化センター

(津波による死者・行方不明者数)

平成21年 0

平成22年 0

平成23年 19,201

平成24年 0

平成25年 0

※筆者注:数字は引用元と同じだが、読者の便宜を考えて、表の書式などは再構成した

風呂場で死ぬ人の数は交通事故死の4倍!寒い家が引き起こす高齢者の病

厚生労働省の人口動態統計によると、2012年に溺死事故で(中略)1万9000人が亡くなっている。

ヒートショックとは(企画:日本医師会)

入浴中に亡くなる(中略)原因の多くはヒートショックである可能性があります。

 上の最初の引用を見てみますと、津波の死者は平成23年(=西暦2011年)に約1万9千人です。甚大な被害ですが、その前後の年はゼロなので、たとえば5年で平均すると約4千人になります。

 いっぽう、次の引用を見ると、風呂場で死ぬ人は年間約1万9千人*1なので、1年だけで津波とだいたい同数死亡しています。5年で考えると、津波の5倍になります。また、年間の交通事故死者よりも4倍多いです。

 しかしここで読者の方は、こう考えられるかもしれません。それは心臓病の人がたまたま風呂場で死んだだけであって、風呂場で死ななくてもほかで死ぬかもしれない。つまり、風呂場と死亡に因果関係がないのではないかと。

 そこで、3つめの引用を見ると、「ヒートショック」という現象が、多くの場合に原因になっている可能性があり、外部と温度差がある風呂場に特有の事情があるだろうことが分かります。

 ただし、風呂場で亡くなるのは高齢者が多いだろうけれど、津波に巻き込まれたら年齢があまり関係ありません。だから、単純な死者数だけでなく、「寿命短縮効果」のような異なるモノサシを使って測ると、また違った結果になってくるかもしれません。

 しかし、ここでは細かい数字には興味ありません。目的は見えないリスクの「気付き」にあります。リスク論の文脈では風呂場の危険性はわりと言及されますが、津波と風呂場のリスクを比較して考える人が、日本人全体で多数派とはとても思えません。よって、問題提起の意味でこの記事を書きました。


津波と風呂場のどちらを恐れるべきか?

めざせ!お風呂の温度バリアフリー(ヒートショックのお話):お風呂を楽しむ『湯の国』

『温度差』が日本の入浴事故の大きな要因であることは、年間の入浴中急死者数のグラフからもよくわかる。平均気温と死者数を比較すると見事なまでに反比例している。

 今見てきたように、死者数だけで比較すると、津波より風呂場のほうが高リスクだと言えます。

 だから、資金が限られている前提でこのふたつだけから選べば、津波がこない場所に家を建てるよりも、みんなが津波を避けるから安くなっている海岸近くの土地に建てて、そのかわり脱衣所に暖房を設置するなど費用をかけたほうが得、というケースも想定できなくはないでしょう。

 どのくらい対策するとどのくらいヒートショックの死亡が減るか、という直接の数字は少し探しただけでは見つけられませんでしたが、上記記事のようにそれに近いものはありました。すなわち、平均気温と死者数が反比例しているということは、温度差を解消すればヒートショック死を減らせるだろう、ということを示唆しています。

 もちろん、津波か風呂場かどちらか一方しか、対策が取れないわけではありません。津波が来ないし風呂場も対策されているのが一番です。断っておくと、これはあくまでリスクを見える化するための思考実験であって、津波が来る場所に家を建てることを推奨しているわけではありません。

 さらに言えば、リスク要因はほかにもあるので、このふたつにこだわる必要もありません。ただたとえば、原発事故による放射能リスクの場合、そもそも死者数が何人なのか、内部被曝は外部被曝と健康被害が異なるのかどうかなど、不透明な前提がたくさんあるので、取り上げませんでした。


老後購入派はリスクバランスが変化している

「ヒートショック」 6割がリスク高い生活!対策を | NHK生活情報ブログ

入浴中に心肺停止状態になる人は、70歳以上の高齢者が85%を占めています。


 持ち家を老後に購入する(予定の)「老後購入派」の場合、若いうちに家を買う人とリスクバランスが異なります。

 若者も老人も災害で死ぬ確率はそう変わらないでしょうが、老人は病死で死ぬ確率が明らかに高くなります。つまり、ヒートショックによる病死リスク*2が相対的に上がっていきます。

 だから老後購入派は、風呂場のヒートショック対策も含めて、バリアフリー住宅を建てる動機がより強くなります。逆に、残り人生の期間自体が短いので、災害に遭う確率が若い人より少ないので、災害に対してはノーガード戦法もありえるかもしれません。ただし推奨はしませんが。

 ようするに、高齢者は人生をすでに消費してしまって減価償却済みで、残り人生が短くなるリスクが少なくなっています。さらに分かりやすくすると、極端なケースを想定して、たとえば何かの病気で余命1年とあらかじめ分かっていたら、津波だろうと放射能だろうと、災害リスクなど気にせず、好きなように生きるでしょう。だから、老いた人が若い人より積極的にリスクを取れる場合もあるのです。


高齢だからこそ取れるリスク

 これは「死ぬリスク」ではなく「損するリスク」なので、今までの話とは微妙に別方向のことですが、気付きにくいことなので、最後に少し触れておきます。

 よく、家を買う議論の文脈で、「リスクが取れる若いうちに、住宅ローンを組んで家を買うべき」という話を耳にしますね。しかし、前述のように、年寄りだからこそ取れるリスクというのもあると思います。

 たとえば、バブルの頃は高額だったが、不良債権化して今は投げ売りのリゾートマンション、というのがあります。そして、そのリゾートマンションに住む老人が現れている、という話も聞きます。

 なぜ投げ売りになるかといえば、まず単純に不便だからというのが挙げられます。バブルの頃は別荘を持つ余裕があったのでしょうが、今ふだんの生活用に買おうとしても通勤に不便です。

 また、いろいろなリスクがあります。たとえば、管理費が滞納していて負債が溜まっているとか。建物が老朽化して建て替え時期が迫っているのに、修繕積立金が不足しているとか。だから買い手がつかないわけです。ババ抜きのババです。

 しかし、高齢者の場合は通勤がいらないし、死ぬまでの逃げ切りで、ババ抜きのババを墓場まで持っていけます。やはりそれを推奨しているわけではありませんが。

 それからまた別の話で、持ち家対借り家の話になりますが、住宅購入派は長生きするほど得で、逆に早死にすると損です。購入派は長生きすることで、購入額(ローン返済額)は変わらないのに対して、家賃を払わなくて済む期間が長くなるから、賃貸派より相対的な得が積み上がっていきます。賃貸派はこの逆で、長生きするほど損です。

 とすると、年を取ってから家を買う老後購入派は、普通の購入派よりもさらに、長生きの得を追求する動機があります。たとえば、タバコを吸わないだとか。

 データマイニングの文脈でよく言われる「紙おむつを買った人はビールも買う傾向がある」という意外な関連性の話があります。そのように、老後に家を買おうとすることと、タバコを吸うことの相性の悪さは、パッと分かる自明のことではないので、触れておきました。


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津波からの生還   東日本大震災・石巻地方100人の証言

津波からの生還 東日本大震災・石巻地方100人の証言

*1:次の引用とかなり食い違っているし、推計の部分がかなり多いようです。ただ数字が何割か違っても、この記事の大意は変わらないので、細かい数字にはこだわらないことにします

*2:ヒートショックによって溺死した場合、病死ではなく事故死に分類されたりするので、もし正確に言うのなら「ヒートショック死」とでも表現したほうが良いのかもしれません

2015-04-14 老後 資金 必要額 試算

老後資金は最低限でも2千万円は必要!?

概要

生活費は月3万―5万円 自作の小屋で暮らす若者たち:朝日新聞デジタル

 老後資金はいくら必要でしょうか? 先に結論を言ってしまうと、最低限でも約2千万円は必要です。一般人がイメージできる、ふつうの生活をしようとする場合の話です。

 逆に、2千万円を下回るとどうなるか? 上記記事のようになります。なぜそうなるのか、くわしく見ていきましょう。


若ければ若いほど老後のことを考える必要がある

 その前に軽く前置きがあります。

 今の時代、若ければ若いほど、老後のことを考えて、資金を貯める必要があります。逆に、今の中高年は考えなくても、蓄えがなくてもどうにかなってきました。

 だから、「若いうちは老後なんか考えなくていい」というのは、昔はそれでよかったのでしょうが、今ではウソになってきています。しかも、それは何歳以上とかではなく、若ければ若いほどいいです。二十代とか十代とかでもいい。

 たとえば、成人式の講演などでおためごかしを言うのではなく、「みなさんは年金がもらえるかどうか怪しいので、準備しておかないと、老後は悲惨なことになります」とか、社会の真実を言うべきではないかと思っています。

 もしかしたら、違和感を覚えるかもしれませんが、これが世代格差が生んだ帰結です。いろいろなところで言われているように、1億円以上の社会保障の世代格差があるからです。

 だから、若年世代は老後資金を1億円貯めて、やっと昔の水準に追いつけるという話です。これはもう「アリとキリギリス」みたいな話ではなく、たんに政治家や官僚の失策で搾取されている、というほうが実態に合っていると思います。

 しかし、本題は世代格差という社会問題ではなく、あくまで老後資金の試算なので、話を進めていきましょう。


老後資金はいくら必要か?


 老後資金の試算は上記のようにいろいろあります。細かい数字には興味がないのでかいつまんで言うと、「ゆとりある老後」は1億円必要という説があります。これをおもいっきり大ざっぱに解説すると、前述のように世代間で1億円の差があるから、1億円だろうと。これはある意味分かりやすいです。

 しかし、1億円貯めるのは普通の人にとってかんたんではないので、そこまでの水準は求めないとしてみましょう。必要最小限だといくらか、という方向の試算では、3千万円が主流のようです。

 それをさらにギリギリ必要最低限まで落としたのが、この記事で私が取る立場の2千万円説です。


老後資金は最低限でも約2千万円は必要

 本題に入りますが、老後資金は最低限でも約2千万円は必要です。なぜ2千万円なのか?

 これから試算を出していきますが、計算の前提として、まず退職金も年金もまったく期待できません。持ち家もなく(そのかわりに借金もないとします)、老後も現役で働けない場合、つまり純粋に貯金だけで生活する場合を想定します。

 これはなぜそうするかというと、逆に「退職金が2千万円」「持ち家(評価額)が2千万円」などと資産を想定してよいのでは、「最低限必要」という意味にならないだろうからです。

 だから、「年金が破たんするか、しないか」といった議論もここではしません。年金がなかろうと、退職金がなかろうと、持ち家がなかろうと、「最低限これだけあれば」の数字です。

 ではまず、生活するには住むところが必要なので、1ヶ月の家賃3万円のアパートを借りるとしましょう。これだけでも、1年で36万円、10年で360万円、25年で900万円、30年で1,080万円。だから「住」だけで、老後資金の半分を使ってしまいます。

 そして、電気・ガス・水道などの公共インフラ代、食費や衣料、日用生活品などの出費も3万円だとします。これはたとえば、食事は生存に必要なカロリーと栄養を取るだけといった、かなり質素な倹約生活になるでしょう。

 すると、同じ20〜30年でもう1千万くらいかかるから、合計2千万円。「最低限で2千万円」というイメージです。

 もちろん、これは概算なので、実際には100万円くらいかんたんに誤差が出るでしょう。いくら必要かの目安を分かりやすくするための数字です。

 それから、この2千万円は娯楽などの費用を考慮していない必要最低限のものです。また、インフレによる試算の目減り、病気や災害などによる出費も考慮していません。ようするに、まったく余裕がない綱渡りの老後です。2千万円さえあれば大丈夫、という保証ではないのです。

 そうではなく、「健康で文化的な生活」をしたい場合、あるいは不意の出費にも余裕を持って備えたい場合、そのぶんをもう1千万円積んだ、3千万円は欲しいでしょう。

 たとえていうと、パソコンなどの動作スペックに「最低動作環境」と「推奨動作環境」がありますが、2千万円は「最低動作環境」のほうです。推奨のほうの基準は、一般的に言われている3千万円だと、私も同様に考えています。

 さて、ここでの「最低限」というのは、普通の人がイメージする最低限の生活です。あるいは、メーカが公式に動作を保証する「最低動作環境」のようなものです。だから、それを下回っても予想外に動く場合があります。ではもし、下回るとどうなるか? 最後に見てみましょう。


老後資金が2千万円を下回るとどうなるのか

生活費は月3万―5万円 自作の小屋で暮らす若者たち:朝日新聞デジタル

締めて月3万〜5万円ほどの出費だ。

 2千万円が最低限というのを逆に考えると、老後資金が2千万円を下回るとどうなるのか? 冒頭でも挙げましたが、上記記事のような生活になります。

 ここで重要なことは、この生活でも1千万円台の資金は必要ということです。たとえば食費が必要ですからね。

 生活費が1ヶ月3万円だと1年で36万円、10年で360万円、30年で1,080万円。これが4万円だと1,440万円、5万円だと1,800万円。

 だから、2千万を下回るとこういう生活になるというのは、よろしいですね?

 老後資金2千万を下回ると、このような生活を送るんだというイメージを持たれると、貯金する動機になるのではないかと思われます。以上、あくまで前向きにポジティブに生きるための紹介でした。


付録:老後資金2千万円以下の可能性は追求できないのか?

朝日新聞(千葉版)に小屋暮らしが掲載されました。


 朝日新聞の記事は格差社会の象徴のように思われるかもしれませんが、記事に取り上げられた方(かつや氏は上記ブログを書かれています)は、意図的に生活費を抑えて暮らそうとしています。

 最近では「ミニマリスト」「ミニマルライフ」「スモールハウス」「タイニーハウス」とか、そういうクラスタに分類されるでしょうか?

 そういう人が試みているように、じつは、老後の生活資金2千万円以下の可能性を追求する道もありえると思います。ただ、普通の日本人が想定する「最低限」を突破する必要はあると思いますが……。

 私はすでにそれを知っていますが、いきなりそれを前提に考察を始めると、前衛的すぎて普通の人がついてこれないのではないかと考えました。またひとつの記事に詰め込み過ぎると読みにくいので、ミニマリズムの可能性については、また別の新たな記事で考察したいと思います。

 ここではさしあたり、「Bライフ」を提唱している高村友也氏の書籍を紹介しておくにとどめます。

Bライフ10万円で家を建てて生活する

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