——ははあ。 かかる態の人物の生き方やら嗜好をさしていうものか。 又太郎はふと思いついた。 ちかごろ“婆娑羅《ばさら》”という流行語をしきりに聞く。 おそらくは、 田楽役者の軽口などから流行《はや》り出したものであろうが、 「ばさらな装い」とか。「ばさらなる致しかた」とか。 または 「——ばさらに遊ぼう」「ばさらに舞え」 「世の中ばさらに送らいでは」などと、 その語意、その場合も、さまざまにつかいわけられている。 むかし山門の法師間には “六方者《ろっぽうもの》”という語があったが、 婆娑羅の意味は、それに近くてもっと広い。 ——花奢《かしゃ》、狼藉《ろうぜき》、風流、 放縦、大言、大酒、すべ…