坐禅を始めたばかりの頃、わたしは「悟り」とは何かを、まだ明確には理解していませんでした。当時思い描いていたのは、「悟り人」とは、人間を超越した、神のような存在…いわゆる普通の人間とはかけ離れた、特別で超人的な何か、という漠然としたイメージでした。 けれども、自らの内なる体験を重ねる中で、次第にそのイメージは静かに崩れていきました。 今でははっきりと感じています。 悟りとは、心や頭の中に知らず知らず積み上げてきた信念体系ー観念や概念、理想、エゴ、想像……そうしたものを少しずつ手放していくこと。そして、心に残されていた過去の痛みや未解決の問題から自由になることだと。 わたしたちの心には、表面意識や…