アラブの春

独裁者を憐れむ言葉 アサド大統領就任の頃の記憶 イラク戦争以降の困難 強制収容所関係の報道とシリアのこれから 独裁者を憐れむ言葉 内田百閒の『東京焼盡』という戦時下日記のようなものに、次のような一説があります。 ヒトレルに誤まられて独逸国民は誠に気の毒だと思ふ。しかしヒトレルも悲壮なり。 内田百閒. 東京焼盡 (中公文庫) (p.134). 中央公論新社. Kindle 版. 1945年4月末頃の、ナチスドイツの敗北が近いことをを聞いての感慨ですが、今回のアサド政権崩壊を聞いて、この一説が頭をよぎりました。 当時同盟国であったドイツとその独裁者への憐憫（と、明日は我が身という不安）が、ドイツ語…

いやはや、日本の政界は相変わらず、「政治とカネ」の問題とやらで紛糾していますが、その間、国際情勢はドラスチックに動いています。大変化と言えば、中東シリア。50年以上政権を保持してきたアサド家が崩壊したことで、驚きました。父親のハーフィズ・アサドの後を継いで2000年に政権を掌握した息子のバッシャール・アサドが爾来ずっと独裁体制を敷いてきた。2010年から12年にかけて北アフリカ、中東に吹き荒れた民主化のうねり「アラブの春」でもアサド政権は倒れなかったのです。何故、今ごろになって倒れるのか。 アラブの春の時にアサド政権に歯向かったのは「イスラム国（IS）」でした。この組織は非常に狂暴ということで…

2011年に始まったシリア内戦は、 シリア政府軍は反政府軍団の 攻勢に遭い、アレッポを 失いました。 さらには。よりどころとしていた ダマスカスをも制圧されました。内戦が始まった時期からようやく 13年目にしてアサド大統領はその 地位を放棄。完全にシリアは崩壊しました。 そしてアサド大統領は国外に逃亡 するに至りました。この放棄については、すでに 各支援国、支援団体に知らされて いたということです。一体この内戦のきっかけは 何だったのでしょうか。中東では、チュニジアで 民主化が成功していました。 「アラブの春」運動が 広がっていました。 そのうねりはアラブ 全体に大きな影響を与えて いました。…

下書きの中に、似たような話題を扱った２記事があったので一緒にしてみた。 どちらもWeb2.0的な、ユーザーの活動によって情報が整理されていくプラットフォームについて懐疑的な話を書こうとしていたのだが、落とし所がなくて放置されていたものである。 東浩紀氏らが発行している「思想地図」のなかで紹介されているシンポジウムの記録を読み、ブレークスルーとなったので復活させてみた。 裏切られた革命 情報を整理することが正義なのか 2ちゃんねるの良さ 裏切られた革命 「シェア <共有>からビジネスを生み出す新戦略」という本を読んでいる。 日本語版が出版されたのは2010年で、スマートフォンの本格普及前夜、Ub…

こんにちは。 今日は、チュニジア人の26歳男性Benさんにお話を伺いました。 York：チュニジアについて教えてください。 Ben：私は今もチュニジアに住んでいます。イスラム教がおよそ90%ですが、しっかりと政教分離しています。 York：言葉はどうですか？ Ben：私はアラブ語とフランス語、チュニジア語を話します。公用語はアラビア語ですね。 York：2010年にアラブの春が起こったのがチュニジアからでしたが、今はどうですか？ Ben：ジャスミン革命ですね。あの時は失業者の怒りが爆発しました。あれで、大統領は亡命し、政治的には民主化されましたが。以降も失業者の数は減らず、まだ経済は改善してい…

ネットのつながりや力が世界を変えられるのか？ 私は仕事柄でもあるが、個人的にもとても興味がある。 ここでは私はネットという言葉をインターネットだけのことではなく、この通信インフラに乗っかって動くＳＮＳや様々なアプリケーションソフトのことを総称して使っている。 また、インターネットメディアやＳＮＳメディアのような言い方もあると思うが、新種のメディアも含んでネットと表現することにする。 このネットは進化し続けているし、世界中にどんどん浸透している。今時点で、どこの国の誰とつながる可能性があるかを正確に把握することは難しい。 例えば、私はアフリカのルワンダに現地法人があり、その社員と随時に仕事の打合…

日産の会長だったゴーンさんが逮捕されて2週間。 2016年秋、友人の息子さんの結婚式に参加するためフランスに行った。フランス訪問がこれが最後ならもう一度行ってみたい、と思っていたドルドーニュ地方を回ることにした。鉄道の便が悪い地方だ。 そこで借りた車が日産インフィニティ。事前予約の際、「アウディまたは同等の車」となっていた。恥ずかしながらインフィニティがどこのメーカーの車か知らなかった。が、運転してみてその快適さに感動した。帰国後、5000キロも走っていないホンダのNoneを売り、インフィニティではないが、同等の車に買い替えた。軽自動車でいいじゃないか、そんなに運転が好きでもないし、ホンダが本…

8日の日経新聞のコラム「中外時評」「『新しい階級闘争』が中国を襲う」に戻ります。 ーーー 政治と経済を動かすエスタブリッシュメント（支配層）と、グローバル化の恩恵から取り残された庶民の対立を「新しい階級闘争」と呼んだのは米国の政治学者、マイケル・リンド氏である。 それは、資本家VS労働者というマルクスが描いた階級闘争とは異なる。主要国の選挙で与党の敗北が相次ぐのは、豊かになれなかった人たちが経済の不振に無策の現政権にノーを突きつけたからだ。 中国でも、時間を置いて「新しい階級闘争」が始まったのかもしれない。 ーーー マイケル・リンド氏がいう「新しい階級闘争」というのは、コラムの説明を解釈すると…

1月7日日経新聞「中外時評」に次のような見出しの一文が掲載されました。 "「新しい階級闘争」が中国を襲う" という見出しです。 上級論説委員・高橋哲史さんがコラム記事で次のように書いています。 ーーー 「北京市公安局」を名乗る男から突然、携帯に電話がかかってきたのは2011年の春だった。 「あなたに警告する。無許可での取材はすべて違法だ」。男はぶっきらぼうな口調でそれだけ告げると、一方的に電話を切った。 北京の繁華街、王府井のショッピングモールを家族といっしょに歩いていたときだ。何ごとか、と初めは緊張したが、すぐにピンときた。 「中国ジャスミン革命」。アラブの春の端緒となったチュニジアの民主化…

イスラエルはハマスとヒズボラの軍事力を弱体化させることに一時的に成功したものの、これらのグループを完全に壊滅させることはできなかったし、パレスチナ人が自分たちの国家を求める気持ちを鎮めることもできなかった。ネタニヤフ首相を含むイスラエルの指導者たちは、 これを一時的な後退と認識している。 Viktor Mikhin New Eastern Outlook January 07, 2025 イスラエルが15カ月前にガザのパレスチナ人に対する戦争を開始して以来、緊張は高まったままだ。2023年10月7日にハマスがイスラエルで作戦を成功させた後、紛争が勃発し、流血の対立に発展した。ハマスとヒズボラを…

ポピュリズムとプレインミュージックに関する考察は、両者がどのように相互作用し、影響を及ぼしあうかを理解するために重要です。以下では、この複雑な関係を多角的に分析します。 定義と背景ポピュリズム: ポピュリズム（Populism）は、一般市民の声を代表し、政治エリートや既存の権力構造に反対する政治的なスタンスを指します。ポピュリストたちは、しばしば「民衆」と「エリート」の間に線を引き、民衆の側に立つことを強調します。プレインミュージック: プレインミュージック（Plain Music）は、音楽制作の敷居を下げ、誰でも簡単に音楽を創造できるようにする概念です。技術的な複雑さを排除し、シンプルで直感…

2025年謹賀新年 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。旧年中は格別のご厚情をいただき心より御礼申し上げます。本年もご指導ご助言のほどよろしくお願い申し上げます。おかげさまで公私ともに順調に過ごしておりますと申し上げたいところですが暮れにご報告の通り歩行困難に陥り如何に健康が大切か身をもって感じている次第であります。本年は良き報告をお伝えできるよう努力していく所存ですが老化ボケは確実に進行中で、こういった文章を書たり、株式投資で金勘定することで少しでも進行を遅らせるべくその努力は半端ではありません。日課であった運動＝落ち葉掃きも掃く落ち葉もほとんど落ち切って、足を引きずることも無くなりました。日…

若い頃は新刊ばかり読んでいたが、経験を積んでからは時間の無駄と悟ったため、現在の読書傾向に落ち着いた。本は時の淘汰を待ったほうがいい。本当に必要な本なら読むべき時はいずれ来る。 フィルムノワ-ルの時代 作者:新井 達夫 鳥影社 Amazon 著者は映画評論家ではなく市井の映画マニアらしい。内容は専門家裸足といった感じで充実していた。 本書はルビッチとスタンバーグから説き起こし、1940年代から50年代にかけてのフィルム・ノワールを概観していく。フィルム・ノワールは戦争という暗い時代の産物であり、たとえば30年代のギャング映画はそこに含まれない。フィルム・ノワールの人間観は、普通の人と思われてい…

テヘランからダマスカスへのルートの多くは現在閉ざされているように見えるが、イランはシリアの資産を簡単に手放すことは絶対になく、復活させる努力をするだろう。現在の状況を考えると、この目標を達成するのは非常に難しいだろう、とアリレザ・ヌーリは書いている。 Alireza Noori Valdai Club 30.12.2024イランがシリアで全てを失ったかという問いに対する最初の答えは、おそらくイエスだろう。イランは、シリアにおける最近の展開で間違いなく敗者の1つである。ハマスとヒズボラの弱体化に加え、イランにとってこの地域で重要な同盟国であったシリアで政権交代が起こったことで、テヘランの外交政策…

ヤシャ・モンク『民主主義を救え！』を読んだ いまさら100周遅れの話してもうしわけないんですけど、11月の兵庫県知事選挙の結果に、僕は心底恐怖したんですよ。いや本当に。あれをみて僕は、トランプ1期目の当選の衝撃が、とうとう日本にもやってきたことを実感したわけです。 「これが民意だ」と言われれば、全くその通りでしょう。むしろ僕が恐怖を感じたのは、デマや誹謗中傷でこれほど圧倒的な民意が作ることができる、ということの方でした。トランプのときは、「アメリカって怖えー国だなぁ」って感想だったのですが、日本もいよいよ怖えー国になっちまったよ、どうしようって感じです。 そんなときに、ヤシャ・モンクの『民主主…

＜●●インターネット情報から●●＞ 【ムー世界の神秘】なぜ中国にこれほどのピラミッド群が? 建造は異星人? ただし当局は見て見ぬふり… 4000年以上の歴史を誇る中国には、謎めいた古代遺跡も数多く発掘されているが、そのほとんどは公開されない。そうした遺物のひとつに、ホワイト・ピラミッドと呼ばれる建造物がある。 その存在が知られるようになったのは1912年のこと。ふたりの旅行者が、白色の巨大四角錘を同国内で目撃したと証言した。さらに1945年には、アメリカ空軍パイロットが、西安南西部の山岳地帯で眼下にそびえる白亜の巨大ピラミッドを目撃。1947年３月28日付の「ニューヨーク・タイムズ」紙上で詳し…

相互の安全保障を強化したいという願望は、イランとイスラエルの対立が激化する状況では正当化される。ユダヤ国家がイラン・イスラム共和国を直接戦争に引き込むことに成功した場合、アラブの君主国は傍観者でいられる可能性は低いとドミトリー・ポリャコフは書いている。 Dmitry Polyakov RT 23.12.2024パレスチナとイスラエルの紛争が継続する中、この1年でその地理的境界をはるかに超え、イランとイスラエルの対峙という形を取るようになった。一方で、中東ではその対極にあるプロセスが起こっている。かつてのライバル国間の関係正常化である。この傾向は、地域によって程度の差はあるが、ペルシャ湾岸地域で…

不和、相互不信、裏切り、人口の相当部分を占める人々のナイーブさ、過去と現在の出来事を分析できないことなど－これらは今日の「アラブ世界」の特徴のほんの一部である。もちろん、これらの特徴は以前から存在していたが、アラブ世界は依然として過ちから学べないでいるようだ。 Mikhail Gamandiy-Egorov New Eastern Outlook December 23, 2024 中東、特にシリアで現在起きている出来事は、少なくとも、いわゆるアラブ世界の真の姿についての最新の見識を提供している。これは、ユーラシア、アフリカ、ラテンアメリカの大半が、多極的世界秩序への完全な統合に焦点を当ててい…